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大学進学の夢を潰さないために

公明党の提言とその価値

公明党が 高校3年生と浪人生らに一律2万円の給付を政府に提言しています。

公明党によりますと、給付金の対象となるのは、およそ126万人で、およそ280億円の財源が必要になるということです。

それでは、この280億円は、将来にどれほどのリターンをもたらすのか、投資対効果を考えてみましょう。

最近ではほとんどメディアに流れなくなりましたが、3月の一斉休校で盛んに報じられた困窮子育て家庭の貧困は、いまだに続いています。私が運営するNPO法人キッズドアでは、5月以降日本全国の困窮子育て家庭を支援しながら、都度状況を聞いていますが、5月に「仕事が見つかりません。」というシングルマザーが、9月末でも「まだ、仕事が見つかりません。」という状況です。


大学受験をやめても就職できる保証はない

大学受験を目指す高校生の多くは、普通科高校で学んでいる生徒です。普通科高校の進路指導は、大学や専門学校への進学に比重が置かれ、就職指導に重点を置いている高校はそれほど多くありません。生徒にとってみれば、大学進学を諦めて高卒で就職しようとしても、「どうしたらいいのかわからない」という状況ですし、高校でも手厚い就職指導は無理でしょう。

大学進学を諦めたからといって、正社員になれるのかどうか、もわかりません。もし、非正規のアルバイトやフリーターで働き始めたとして、その先に彼ら彼女らが人生を立て直すことはできるのでしょうか?


高卒で就職しても約半数は非正規雇用

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図1は、高校卒業後に大学、短大、専門学校に進学した場合の平均月収や生涯賃金の差をあらわしたものです。大卒と高卒では正社員で比較しても生涯賃金(退職金含)で8千万円ほどの差があります。教育コストは最も高い私立文系でも737万円ですから、そのリターンは10倍以上です。

さらに重要なのは、正社員になれるかどうか、です。

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図2、図3は学歴別の正社員比率と正規・非正規の給与です。

高卒の正社員比率は56%、大学進学を諦めた高校生が進学しようとしても、正社員になれる確率は半分程度、残りの半分は非正規となるのです。

工業高校や商業高校なで就職のためのスキルを身につけ、就職の準備をしてきた高校生なら、学校の仲介のもとしっかりと正社員として就職することもできるでしょう。しかし、就職の準備を何もしてこなかった高校生が、急に就職に進路を切り替えても、ブラック企業に捕まったり、派遣社員などの非正規となる可能性はとても高いと思います。

そして、これは、彼ら彼女ら、大学受験を目指す高校生の人生という個人的な問題のみではなく、日本の将来に大きく関わるのです。

非正規の若年労働者の増加は少子高齢化を加速

日本の最大の課題は、少子高齢化です。支えなければならない高齢者が増えるのですから、一人一人の子どもが十分な教育を受け、たくさん稼いでしっかりと税金を納めてくれることは、何よりも重要なことです。

今、一人の高校生が大学進学を諦め、高卒でフリーターになって、年収200万円で40年働いても生涯賃金は8000万円です。この収入では結婚も子どもを持つことも難しいでしょう。

しかし、今、大学進学を諦めずに大学に進み、正社員として働けば3.3億円を稼ぎ、納税者となって社会を支えてくれるのです。結婚して子どもを作ることもできるでしょう。

幸い、大学に入れば、今年から始まった「高等教育就学支援制度」や、日本学生支援機構の貸与型奨学金を利用し、卒業することは決して無理ではありません。ただ、今受験生の家庭が直面しているのは、お金がなさすぎて「受験勉強を続けられない」ということなのです。食事を減らすか、受験をやめるか、という2者択一なのです。

コロナ禍での大学受験生の目の前の問題は、大学入学後ではなく、「2万円の受験料がない」ことなのです。

大学進学率が高すぎる!は本当か

「大学に行く必要のない人まで大学に言っている」という意見も根強いですが、これだけ社会が高度化する中で「大学に行く必要のない仕事」はどれほど残るのでしょう? コロナ禍で所得が激減したのは、非正規雇用などのそもそもの所得が低い方々です。いわゆるブルーカラーの仕事はどんどん無くなるのです。

社会が高度化し、世界各国は今、国を挙げて教育投資を増やし高度な人材を排出しようとしています。世界各国の大学進学率を見ても、日本は決して高くはありません。国際統計・国別統計専門サイトGlobal-noteに寄れば、日本の大学進学率は64%で46位。韓国は96%で7位。中国は54%で61位です。

修士、博士などの人材を見てみましょう。これは教育再生実行会議第三次提言の資料です

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修士号も博士号の人口100万人にあたりの取得者数も各国に比べて少ないですし、博士号取得者数も大変少ないです。日本は教育レベルが高い国だと信じている人も多いですが、世界の中ではむしろ教育レベルの低い国なのです。


そして、日本だけ GDPが上がらない

教育レベルが低いということは、国の成長に直結します。

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これは経済産業省の資料からの抜粋ですが、2000年から2020年にかけて日本のGDPは成長していない。中国の急成長は別にしても2000年と2020年を比較すればどこも成長しているのに、日本はその成長がないのです。

この先、日本の人口は減少していきます。高齢化が進む中で、重要なのは、この先20年後に一人一人の生産性が高まり、たくさん稼いでくれることではないでしょうか?

公明党の提言は、そのために今、一人2万円の投資をしましょう、という、そんな提案です。個人的には、2万円の10倍も100倍もかけていいと思いますが、とにかく2万円でもいいからしっかりと配布して、次世代を支えることが重要です。

例えば、政府がコロナ対策として行なっている Go To キャンペーンは1.7兆円、事務依託費だけで3000億円とも言われています。 Go Toキャンペーンの是非は私にはわかりませんが、事務費をうまく節約して1割削減すれば、280億円は捻出可能です。

高校生と保護者の頑張りに答える国であってほしい

キッズドアでは、寄付を集めてコロナで家計の不安が増す557人の高校3年生、高校2年生3万円に「受験勉強サポート奨学金」を支給しました。応募状況のアンケート「受験勉強サポート奨学金アンケート最終報告レポートと受給者からの声」はこちらからダウンロードできます。

最後に応募してくださった高校生と保護者の声を載せます。一人一人、皆本当に頑張っているのです。その頑張りに答える国であって欲しいと願います。

●高校生の声

「看護⼤学を希望していて、救急医療チームに⼊る事を目指しています。私がキャリアを積んだ看護師になった時には、海外の医師と看護師を必要としている国で医療を受けられない人々や⼦供、医療を受けられない障害をもつ人を1人でも多く救いたいと考えています。奨学⾦の使い道は、学校の決まりで⼤学希望者はオープンキャンパスがある時には⾏かなければならないので、その交通費と英語が苦⼿なので英語と数学の⼤学に向けた参考書が欲しいです。残りは現在、⾼校の引き落としがされていない状況なのでそこへあてたいと思います。」

学校で全員が受験する外部模擬試験代(年間33,280円)を始め、受験料が⾼額で⾼校進学後は受験を諦めていた各種検定受験料、科学の甲⼦園など理系科目強化のための参考書購⼊に使用予定です。特に⼤学受験に直結する模擬試験は現在の⾃分の⽴ち位置を確認するために必須です。」

⼤学受験の際にかかる費用が多額だと知りました。受験料や交通費など、その時の必要費用として寄せておきたい。親の負担を減らしたい。

●保護者の声

「この度の給付⾦は、今⽉末締切で、学校で⼀括申し込みをする「⼤学⼊試試験(旧センター)」の費用に、早速、充てたいと思います。本当に⼤変助かります。」

「お振込みありがとうございます。 本当助かります。
⼤学受験を受ける為に塾へ通わせていますが、コロナの影響を受けて、今⽉も食べて⾏くだけで精いっぱいで、塾をやめさせるかなやんでいました。 今⽇、塾へお⽉謝を持って⾏く事ができます。ありがとうございます。」

「⼦どもの「⼤学へ⾏きたい」という気持ちを⼤事にしてあげたいと思うのと同時に費用⾯でほんと夜も眠れない⽇々が続いていました。でも、そちらの温かい⽀援のおかげで改めて気付きました。⽴ち止まってる時じゃないと。費用⾯の応援と同時に、心も応援していただいた様でほんとに嬉しいです。感謝致します。」

コロナ禍で大変な思いをしながら、毎日頑張っている子どもが、保護者がいます。政府にはまず、目の前の子どもたちへの支援を何よりも願います。