『とりあえずお湯わかせ』を読みました。

『とりあえずお湯わかせ』、読みました。

柚木麻子さん、この本以外ではまだ『らんたん』を読んだだけなのだけど

Twitterで見ているだけで、もう、この人が、あまりにも、友だち過ぎるのです。今の時代、今の日本を生きることの苦しさの中でもがいて、落ち込みながらも明るいほうを探してそっちに足を向けていく。

それに、本ってほんとに不思議。友だちとも、日常の中でわざわざ、コロナ禍のつらさとか、日本での子育てへの視線の厳しさなんて、なかなか話さないけど、読んでいるうちに友だち以上に友だちになって、心が開かれていく。

そうだよね、それ、わかる! わたしもそう思っていたよ、だけど、そんなふうに言葉にできなかった。そんなふうに言いあらわしてくれたら、読んでいるこちらが、どんなに胸がすく思いがするか。ありがとう。苦しみを見つめて、言葉にしてくれて、ありがとう。たくさんの楽しみも、分けてくれて、ありがとう。これとか、これとか、わたしもやってみるからね。

そんな気持ちになる本でした。

そして、読み終わった今、親しみのレベルが勝手に深まりすぎてちょっと忘れそうになっていたけど、

読み始めて、三章分くらい読んだときに、ああ、この本はくつろいで読み進んで大丈夫そう。と感じた安心感がものすごくて、泣きそうになったのでした。

もしかするともしかするかもしれないと構えて、心の準備をして読んでいたけど、大丈夫だった。

なんの安心感かというと、たぶんちょうど同年齢くらいの子を育てているこの著者の文章が、ただひとりの人として、自分のことを書いているとわかったことでした。

子育て中だからといって、毎章、毎章、なんだかんだと子どもを巡る出来事が続く、というのではなくて、子どものこともそりゃあ出てくるけど、むしろ出てきていても、単体としての柚木さんの心の生活が書かれていること。

不妊で少しだけ苦しんだ時期のあるわたしは、その後、子を授かってなお、その苦しみを引きずっていて(そんなことを言ったら、今現在不妊に苦しんでいる人に刺されても文句は言えないとわかっています)、子がいないと楽しめない人生、という文脈につながる可能性のあるものすべてに、今でも憎悪の念が沸いてしまう。

もちろん、子育て漫画やエッセイも、大好きなものもいくつもある。柚木さんが、子育てに全振りしたエッセイなどをもしもいつか書くなら、それだって読みたい。

でも、少なくともこの本の中には、子どもは一要素であって、根っこは単体の自分、っていうことで、ブレずに書かれている感じがして、とてもホッとしたのでした。

おへそのくだりでは、久しぶりに涙を流して笑った。やられた。あと、試食販売のお仕事のこと、めちゃくちゃおもしろいのに身につまされて、わたしもこれからの身の振り方を一度真剣に考えようと思ってる。

柚木麻子さん、本当にTwitterからいなくなるのかな…かなしい。Twitter…。

でも、とりあえず、お湯を沸かそうか。

『BUTTER』も読まなきゃ。

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