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6月10日 Defund the police

ここのところ、blacklivesmatterから始まった闘いは、defund the policeという具体的な要求に形を変えている。

警察から資金を取り上げるーーおそらく日本から見たら、ずいぶんラディカルな考えに聞こえるだろう。

そもそも警察というものは、自治体や州がそれぞれ運営するものなので、予算もそれぞれの税金から捻出される。早速、こちらも暴力的な警察が名高いLAでもLAPDの予算大幅削減カットが決まり、ニューヨークでも市長が予算削減に応じる意向を示している。先日も書いたとおり、今回のジョージ・フロイドさん事件が起きたミネアポリスでは、市議会がそれをさらに一歩進めて、警察を解体することにコミットしている。

警察を解体!

早速、共和党サイドからは、「過激な左派が〜」というナレティブが組まれていて、まあ実際ラディカルではあるのだが、背景をよくよく知ると、defund the policeは、地域を安全に守るための機関を失くす、ということではないし、現行の警察の形は、もはや機能していない、次の段階に進み、地域住民を大切にする自警の形態を考えることが唯一の道だ、という結論になるのだ。ポイントは、この「現行の警察はもはや機能していない」というところにある。

警察というものは、検挙数で評価されることが多い。だから黒人やヒスパニック、アラブ系といった「ブラック&ブラウン」人種の住むエリアに出かけていって検挙数を稼ぐ。小さいことでも違反を稼げば警察の収入や検挙数に貢献する。だから、マイノリティからすると、警察は、自分たちを守る存在であるどころか、武器をもってやってきて自分たちを恐怖に陥れ、暴力を振るう存在でしかないのである。(このポッドキャストで、ミネアポリスの黒人たちが、自分の警察観をシェアしているのだが、7歳のときに銃を突きつけられたとか、14歳の女児が白人の友達と車に乗っていて、自分だけ犯罪者扱いされたとか、ひどい話ばかりである)

貧しい地域のほうが犯罪が多い、それは本当だろう。けれど逮捕数・検挙数が多いのは、それだけ警察が激しく活動しているということでもある。たとえば、マリファナを嗜む人口の割合を人種別に見ると、白人のスモーカー率が一番高い。

それなのに、同じ罪で黒人が逮捕される確率は、白人の3倍である。

そして、ミネアポリスでは、アメリカの多くの都市部と同様、警察の横暴がもうずいぶん長い間、問題になってきた。これに対して、まったく対処がされてこなかったわけではない。捜査の手法を改善するとか、罰則を厳しくするとか、トレーニングの導入とか、そういうことは行われてきた。それなのに丸腰のマイノリティが殺される、という事件の数は相変わらず減らない。defund the policeというアイディアは何も今回初めて生まれたものではない。ミネアポリスのマイノリティを代表するアクティビストたちは、この事件の前から、市議会の議員たちと、警察の横暴を止めるための方法として、この手法を議論していたらしい。

こういう背景があるからこそ、「市民をまともに扱わないのなら予算を取り上げるぞ」という理屈が正当ではないとは思えない。

とはいえ、こういうラディカルなフレーズは、中道・穏健を遠ざける可能性がある。何人かに確認したが、誰も内容をはっきり読んでいないのに「過激すぎる」という。せめて読めや、と思うのだが、政治の最大のハードルはきちんと調べない人たちが、調べない人たちのために用意されたメッセージをまんまとそのまま受け入れる、という現実なのでしょうがない。トランプは、早速これを、左派攻撃の道具に使っている。そして、それが民主党を傷つけることになるのではないかと懸念している人たちがいる。

幸い、警察は、もともとローカルな問題であるし、連邦政府が現実的にできることは、限られている。バイデンも、defund the policeは支持していないので、争点にならないことを祈りつつ、警察がローカルレベルでおしりペンペンされる展開になっていくのだろう。

この問題を、ジョン・オリバーが解説してくれているのが秀逸なのでご覧あれ。

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