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佐久間裕美子のMyLittleNewYorkTimes

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書籍化したMy Little New York Timesから1年前の今日の日記と今年の日記を対にして不定期にお届けします。
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#エッセイ

自分の中のエゴという面倒くさい存在

 ずっと前に、スピ系の年下の友達が「あの人は魂年齢が高い」というようなことを言っていた。人間は、何度も生まれ変わるものだから、人によって「何度目の人生」というものが違う。何度も生まれ変わっている人は精神が成熟している、という話である。その説を、自分が信じているのかどうかはわからない。が、人によって、とても若いのに、驚くほど精神が成熟しているよね、という人がいるのは本当だ。  ケイトには、ずっとそういう印象を持ってきた。おそらく初めて会ったときの彼女は20代半ばか後半だっただろ

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日記:山、ニューヨーク、Rケリー

このマガジンは、「あっち行ったりこっち行ったり」というタイトルで日々の備忘録として書いている日記です。週に一度更新します。初月は無料です。 9月29日  今日も山の家にいる。15分ほど走ったところにあるスーパーに食材を調達しに行った。郊外の必要以上に大きいスーパー。いつもガラガラだし、置いてあるものは、あまり魅力的ではない。けれど、何でも揃うのはここだけだ。こんな田舎のスーパーでも、雑誌のコーナーには「CBD」「マリファナ・エコノミー」と見出しの踊る雑誌が並んでいる。  恋

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ロバート・フランクのアメリカ、私のアメリカ

数日前、川内倫子さんのアニエス・ベー・ギャラリーで行われた個展を訪ね、その後みんなでご飯を食べているときに、ニューヨークの友達から、ロバート・フランクが亡くなった、というニュースのリンクが送られて来た。 大御所が亡くなるたびに、いろんなことを考えるわけだけれど、今回はいつも以上にズシンと心が沈むような感覚を覚えた。ロバート・フランクがいなければ、自分のキャリアはなかったと思っているからだ。 アメリカに行って10年が経った2006年頃、ほとんど東海岸の一部でしか時間を過ごし

アメリカのドラッグ問題

2019年8月26日ニューヨークに戻って何日か経ったときに気がついたことがある。白昼、道を歩いていて、明らかにドラッグ中毒者と思われる人たちが増えたような気がしたのである。それも、ちょっと前まで普通に生活していたことを思わせるようなタイプの人たちだ。 調べてみると、意外にも最新のデータによると、オーヴァードース(ドラッグの過剰摂取)による死は、今、久しぶりに減少傾向にあるのだという。目に見えて多いような気がしたのは夏だからだろうか。 これまでも日記にたびたびオピオイド・ク

白人ナショナリズムの心理学

インディアナのファーマーズ・マーケットで、ブースを出していたオーガニック・ファームのカップルが、実は白人ナショナリズム団体とつながっているという疑惑が持ち上がり、ひと悶着起きている、という記事を読んだ。 この記事を読んだときの暗澹たる気持ち、どう説明すれば良いだろうか。 まずひとつに、この記事を読むまでは、ファーマーズ・マーケットのような場所にいる人たちはプログレッシブであろう、というナイーブな仮説のもとに自分が生きてきたことである。そして、もはやその希望的観測をもっては

トランプ・カントリーにて(4日目)

3日目のエントリーは、こちらにアップしました。 ノースダコタ州ファーゴのモーテル。チェックインを済ませ、外に出ると、口笛とともに「ママシータ」という声がする。声が聞こえたほうを見ると、灰皿の横に、サングラスをかけた白人男性二人が立っている。周りを見回すと、女性は私しかいない。車に乗り込んで、what the fuck is wrong with people とつい言葉が出た。男友達が「なにか言われたのか?」というので、起きたことを説明すると、「気のせいだよきっと。あっちの

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トランプ・カントリーにて(第2日目)

ミズーラに1週間ほど滞在していたコリーがパッキングする間、友人のベン・フェレンズに連絡した。ベンはFairEnds というブランドをやっていて、ミズーラ郊外のファームに住んでいる。

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トランプ・カントリーにて(第1日目)

ポートランド経由で1ヶ月と10日ぶりにアメリカに入国した。 成田からポートランドは9時間かからない。ポートランド空港の職員はみんな上機嫌で、ここから入国するのも悪くない、と考える。私の荷物をチェックしたTSAの職員が、ポートランド空港はTravel and Leisure のランキングで連続7年ベスト空港に選ばれているのだと教えてくれた。 市内のヴィーガンカフェで時間を潰し、空港に戻ってモンタナ州ミズーラ行きの飛行機に乗り込んだときに、乗客のほとんどが白人だと気がついた。

「マリファナというブギーマン」の裏バージョン+背中を押される

この日記は、「マリファナというブギーマン」の裏バージョンです。 そもそも、自分は「マリファナの本を書きたい!」という野望を持っていたわけではない。これ、おもしろいトピックだから、雑誌の記事にするべきなんじゃないか、と思った。そして記事を出した。そうしたら、文藝春秋という憧れの出版社から声がかかってしまったのである。 そんなチャンスが向こうからやってきたら、やらないという選択はないだろう、と取り掛かることを決めた。 こういう事の運び方は、自分の人生において象徴的なことだ。自

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マリファナというブギーマン

*写真と本文は関係ありません。 「真面目にマリファナの話をしよう」(文藝春秋)の刊行に際し、8月4日から飛び石でトークを4つやった。 なにせタブーなトピック、ということになっている。相手はどうしようなどといろいろ考え、1本は、駒沢の友人の店スノーショベリングで、店主のシュウくんを相手に練習ラウンド的なものを。2本目はポッドキャスト#こんにちは未来 の公開収録に、大麻の医療利用を提唱している医師の正高佑志さんをゲストとしてお呼びして、3本目は、SPBSで大量に撮った写真を使