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佐久間裕美子のMyLittleNewYorkTimes

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書籍化したMy Little New York Timesから1年前の今日の日記と今年の日記を対にして不定期にお届けします。
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2019年8月の記事一覧

アメリカのドラッグ問題

2019年8月26日ニューヨークに戻って何日か経ったときに気がついたことがある。白昼、道を歩いていて、明らかにドラッグ中毒者と思われる人たちが増えたような気がしたのである。それも、ちょっと前まで普通に生活していたことを思わせるようなタイプの人たちだ。 調べてみると、意外にも最新のデータによると、オーヴァードース(ドラッグの過剰摂取)による死は、今、久しぶりに減少傾向にあるのだという。目に見えて多いような気がしたのは夏だからだろうか。 これまでも日記にたびたびオピオイド・ク

白人ナショナリズムの心理学

インディアナのファーマーズ・マーケットで、ブースを出していたオーガニック・ファームのカップルが、実は白人ナショナリズム団体とつながっているという疑惑が持ち上がり、ひと悶着起きている、という記事を読んだ。 この記事を読んだときの暗澹たる気持ち、どう説明すれば良いだろうか。 まずひとつに、この記事を読むまでは、ファーマーズ・マーケットのような場所にいる人たちはプログレッシブであろう、というナイーブな仮説のもとに自分が生きてきたことである。そして、もはやその希望的観測をもっては

トランプ・カントリーにて(4日目)

3日目のエントリーは、こちらにアップしました。 ノースダコタ州ファーゴのモーテル。チェックインを済ませ、外に出ると、口笛とともに「ママシータ」という声がする。声が聞こえたほうを見ると、灰皿の横に、サングラスをかけた白人男性二人が立っている。周りを見回すと、女性は私しかいない。車に乗り込んで、what the fuck is wrong with people とつい言葉が出た。男友達が「なにか言われたのか?」というので、起きたことを説明すると、「気のせいだよきっと。あっちの

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トランプ・カントリーにて(第2日目)

ミズーラに1週間ほど滞在していたコリーがパッキングする間、友人のベン・フェレンズに連絡した。ベンはFairEnds というブランドをやっていて、ミズーラ郊外のファームに住んでいる。

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トランプ・カントリーにて(第1日目)

ポートランド経由で1ヶ月と10日ぶりにアメリカに入国した。 成田からポートランドは9時間かからない。ポートランド空港の職員はみんな上機嫌で、ここから入国するのも悪くない、と考える。私の荷物をチェックしたTSAの職員が、ポートランド空港はTravel and Leisure のランキングで連続7年ベスト空港に選ばれているのだと教えてくれた。 市内のヴィーガンカフェで時間を潰し、空港に戻ってモンタナ州ミズーラ行きの飛行機に乗り込んだときに、乗客のほとんどが白人だと気がついた。

「マリファナというブギーマン」の裏バージョン+背中を押される

この日記は、「マリファナというブギーマン」の裏バージョンです。 そもそも、自分は「マリファナの本を書きたい!」という野望を持っていたわけではない。これ、おもしろいトピックだから、雑誌の記事にするべきなんじゃないか、と思った。そして記事を出した。そうしたら、文藝春秋という憧れの出版社から声がかかってしまったのである。 そんなチャンスが向こうからやってきたら、やらないという選択はないだろう、と取り掛かることを決めた。 こういう事の運び方は、自分の人生において象徴的なことだ。自

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マリファナというブギーマン

*写真と本文は関係ありません。 「真面目にマリファナの話をしよう」(文藝春秋)の刊行に際し、8月4日から飛び石でトークを4つやった。 なにせタブーなトピック、ということになっている。相手はどうしようなどといろいろ考え、1本は、駒沢の友人の店スノーショベリングで、店主のシュウくんを相手に練習ラウンド的なものを。2本目はポッドキャスト#こんにちは未来 の公開収録に、大麻の医療利用を提唱している医師の正高佑志さんをゲストとしてお呼びして、3本目は、SPBSで大量に撮った写真を使

マリファナをテーマに本を書きました

先日、ニュースのヘッドラインに「ニューヨーク」「大麻」という言葉を見た人も多いと思う。 日本では、メディアや書き手によって「合法化」「非犯罪化」「処罰を緩和」など、表現にバリエーションがあった。実は、ニューヨーク州では、マリファナ(カンナビス)の所持や吸引を、いわゆる犯罪ではなく、立ちションや路上での飲酒と同様に、罰金を課す軽犯罪として扱う「非犯罪化」は、とっくの昔(1977年)に最初の一歩が行われていて、ただ長いこと、NYPDがそれを無視するという時期があり、そこから少し