読書感想文「短くて恐ろしいフィルの時代」

読み終わって出てきたフレーズは、
「悪の凡庸さ」
「無関心」
「寄らば大樹の陰」
である。

外ホーナー国の人たちは、ただ単に上位者の言うことを聞いていればいいと“自ら考える”ということをしない。客観的に考えて上位者であるフィルの言うことを精査せずに、ただただ鵜呑みしている。上司が言ったから・・・とまるで偽装・改ざんを起こす組織と同じ状況である。勇気をもって進言しても不忠といって処罰されるのである。

そんな外ホーナー国に、大ケラー国の人たちがやってきて、外ホーナー国の行っていることに干渉しはじめ、結果、制圧してしまう。そして、モンスターと言われていたフィルはその存在すらも忘れられていくようになる。

フィルが行ったことは、フィルの論理の正義であり、しかしそれが、皆にとっても正義かというと甚だ疑問である。なぜならば、そもそも「悪」はなく、勝手に悪を作りだしているからである。また、大ケラー国が行ったことは大ケラー国の論理の正義である。悪行は許してはいけないが、それと同時に忘れてもいけない。フィルの銘板が埋もれて忘れられていくようになるのは、悪行を忘れてしまうようにしているのと同じである。

寄らば大樹の陰で権力者の庇護にあずかろうとする人たち、それゆえに、他人に対しての無関心さがはびこっていく。いつの時代でも、大きな悪がそもそも存在しているのではなく、我々の無関心さが悪を育てるのである。そして、過ぎ去ったネガティブな出来事は忘れてしまい教訓にしようとしないところも、歴史が繰り返される所以に違いない。


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