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お惣菜×保育園×居場所

お惣菜を保育園に届け、保育園から働いている子育て世帯に地域情報とともにお惣菜をお渡しし地域へとつながっていくきっかけをつくる事業を一昨年(2022年)秋から構想と準備始め、2023年から開始しました。内閣官房「地域における孤独・孤⽴対策に関するNPO等の取組モデル調査」にも採択され、試行錯誤を重ねてきて、昨日はその実践の報告会でした。

事業の概要と目的


本事業のポイントは3つ。

①お惣菜を保育園に届け、園から保護者に渡すことで共働き世帯の家事負担を軽減
②お惣菜をきっかけに利用者が地域とつながる機会をつくる
③保育園・就労移行支援事業所・商店会・デイサービス等、多様な主体との連携により地域全体で子育てを応援する土壌をつくる 

目的は働きながら子育てをしている世帯の孤立予防と家事負担の軽減だけでなく、「家族のみで頑張らずに頼っていい」というメッセージを伝えること、お惣菜と一緒に近隣情報を届けること、利用世帯が地域活動に参加する循環が生まれることも目指しています。

フォーラムでお話しした内容を、関わってきてくださった保育園や就労移行支援事業所の皆様のお言葉や本プロジェクトのプロデュースをしてきたこよりどうカフェマネージャーや、現場でのとりまわしとデザインと開発をリードしてきた店長守家の言葉、キッチンでメニュー開発をしてきたスタッフ・就労移行支援事業所との間で調整をし働く環境をつくってきてきたスタッフ・イベント担当をしてきたスタッフ、の言葉やスライドを拾いながら以下に書いておきます。

実施の流れや体制

実施の体制と流れとしては、このような流れです。

はじめるにあたっての課題


最初にあった課題は、①いかに忙しい保育園の職員の皆様のご負担が大きくならないような仕組みにできるか②超絶忙しい働きながら子育てをしている保護者が注文するという手間をどう楽にできるか③就労移行支援事業所の利用者の方々が安心して一緒に働いてもらえる環境をどうつくれるか④どう地域につながっていく、参加する、共につくるというところまでの流れをつくっていけるか 等でした。

こまちぷらす側でもこよりどうカフェの立ち上げ1年目ということもあり居場所をまず運営するだけでも混乱の中で大変でしたが、その居場所とお届けの両輪を目指し新たなカフェのありようを模索するというミッションのもとに本当に実施体制・開発と苦労がたえなかったと思いますが、現場スタッフが本当によく踏ん張って試行錯誤を重ねてくれていました。美味しいものでないとやはり頼んでもらえませんので、その工夫は相当頑張ってくれていました。

居場所とお届けの両輪。言うは易し、実施は本当に大変。

スタッフは構想段階から保育園の園長先生に相談し、園の先生方のご意見をお聞きしながら検討をすすめました。

1.事前オーダー、事前決済の仕組みづくり

まずはモバイルでもPCからでも、通勤中でも隙間時間で注文ができるようにネットで決済と注文ができる仕組みをつくりました。そのオーダーを受けて、他人ごとに注文いただいたお惣菜の組み合わせをつくり、保育園にお届けをするというとりまわしにすることで、現場の保育園の先生方に金銭授受やオーダーとりまわしのご負担がない仕組みにしました。

それでも園の先生には、受け取り時にお渡し頂くというお手間をおかけしてしまっていますが、利用者の方々にヒアリングをするとそこで職員の方と少しお話しする機会になっていることや、お子さんが「水曜日はお惣菜の日」とわかっていてそれが楽しみで自ら職員室に行くという様子もお聞き出来て、お母さんお父さんやお子さんにとってはそれも一つ楽しみなんだなということも分かりました。

2.メニュー開発

保育園の先生方からのご意見をもとにメニューの開発もしてくれていました。おにぎりだけでも栄養がとれるようにしてほしいという声や、ご飯ができるまでお菓子でつないでいるからそのときに食べれるようなものがよい、価格も安い方がよい等いろんなご意見を受けてキッチンスタッフは白いおにぎりから混ぜおにぎりにしたり、いろいろと工夫を重ねていました。

最初は右上のように「白おにぎり」でしたがどんどんと利用者や園の皆様のご意見を踏まえて、おにぎりが進化。見て楽しいわくわくするご飯

3.多様な方と働く環境整備

こまちぷらすではこまちパートナーといってたくさんのボランティアさんが関わってくださっています。つくる過程には、安全や衛生面での注意をしながら様々な方が関わってくださっていますが、今回は就労移行支援事業所の利用者の方々にも関わっていただくという連携をはじめることにしました。注文いただくお惣菜のなかでも特にお子さんに人気メニューのおからナゲットの整形等皆さんにしていただいていて、これが子育て中のお母さんお父さんたちやこどもたちに届くことを実感しながら緊張感と誇りをもって仕事をしてくれている感想もお聞かせいただいています。

スポンジの使い方やものの置き場所、レシピやとりまわしが誰にとってもわかりやすくなるように(=ユニバーサルデザイン)と現場スタッフの中でも特に就労移行支援事業所さんとの間で調整役をつとめてくれているスタッフが中心となって声を双方から拾いながら考えてみんなで整備を少しずつしてくれました。スポンジのことやお箸の洗い方等細かいことを気づいてくれることで、日ごろのヒヤリハットの防止につながっていることなど昨日の報告会でもその様子の発表がありました。

利用者さんが入って動きやすい工夫はみんなにとって動きやすい工夫になるということを実感しています。

また、就労移行支援事業所利用者の皆さんからは、こよりどうカフェに入って一緒に仕事をすることで、得意なことに気づいたり苦手なことにも気づいたりする機会になっていると昨日の報告会では聞かせていただきました。そうした気づきが今後の就労先を考えるときのヒントにもなっていることも教えてもらいました。

4.地域との接点づくり

地域との接点づくりでは、商店会主催のイベントでこよりどうカフェが担当をさせていただき、保育園や就労移行支援事業所の方や保育園、デイサービス等多様な方がそれぞれの日中活動の延長線上で参加していただけるようなキャンドルナイトのイベントができました。

保育園に通うお子さんたちが事前準備には、幼児クラスの子ども達が全員参加して、当日は年長クラスが準備を担当。子ども達が、自分達の作品が大勢の人に見てもらえるとはりきってお母さんお父さんたちの手をひいてイベントにきてくれました。町内会長さんや商店会の会員の方々も集まり、来てくれたお母さんお父さんたちも点灯式で一緒に3,2,1!と声をあげながら点灯の様子を一緒に楽しんでいました。その後はこよりどうカフェでゆっくりご飯をしたりしながら参加者同士で交流を深めていました。仕事・家庭・保育園という以外にも地域の中でもう一ついける場所や地域情報が手に入る場ができることや、自然とまちの人や情報が耳に入るような状況をつくっていくことがいかに大事かということも実感する時間でした。


今後に向けて

今年度の取組では、まずは保育園との関係性構築とコンテンツ作成(お惣菜のメニュー開発や改善)、基本的なシステムやフローづくりに力を入れましたが、次年度は更にお申し込みのしやすさにつなげるため、LINEの活用や頼みやすいメニュー設定を検討していこうと考えています。

本取組を来年度以降も継続するために、利用者負担を可能な限り低くするために品質とクオリティに対しての日々の改善を重ねること、加えてご寄付や協賛で支えていただけるような仕組みにしていく必要があります。各園や関係機関とのコミュニケーションを密にしてとりまわしを更にブラッシュアップして、いろんな園やカフェでも同じような取り組みをしたい!となっていくようなものにしていきたいと思います。

この場を借りて、このトライアルを一緒に始めてくださったYMCA乳児保育園様、YMCAとつか保育園様、戸塚せせらぎ保育園様、ちゃいれっく戸塚保育園様、就労移行支援事業所SmileStep様、LITALICOワークス横浜戸塚様、通所介護 デイサービス 還る家ともに様、善了寺様、戸塚宿駅前商店会様に感謝申し上げます。尚、この取り組みをスタートするにあたって最初のご相談にのっていただいた地域子育て支援拠点とっとの芽様にも深く感謝申し上げます。何をやるにしても、糸口を見つけて最初共感してくださり、後押ししてくださる存在は本当に大きいです。

■報告会の様子。ご参加のみなさまありがとうございました!

パネルディスカッション
これまで一緒に事業をつくってきてくれたスタッフの一部メンバーで、当日参加/準備をしてくれたスタッフのみんな


打ち合わせ風景


背景や実施の報告

一緒に実践をはじめてくれた保育園の先生が、どうなるかわからないけど必要なことだからと覚悟してこの取り組みを一緒にすすめてくださったこと、保育園としての使命はこれから何なのか時代と照らし合わせながらすごく考えてきてらっしゃること、その思いに大変感動しました。こんな素敵な方々とご一緒にお仕事ができているなんて、なんて私たちは幸せなんだろうと思いました。

また、終わった後スタッフで振り返りをしました。参加したスタッフの感想が一つ一つ深く深く心に残っています。日頃のやっていることが、どう誰の気持ちにつながっているのか、どんな人たちの想いとつながっているのか、受け止める時間がいかに大切かを実感しました。来てくださった皆さんの表情、スタッフみんなのうれし涙や感想を見たり聞いて、ご褒美のような一日でした。みんなとお裾分けをしたい・・・