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【ボストン研修レポート⑥~若年層ホームレス支援団体からの学び~

3連休が終わり、10月11日(火)6日目の研修の日を迎えました。この日は一日中、BridgeOverTroubledWaterという若年層のホームレスにむけた全人的ケアをしている50年の歴史のある団体で研修を受けました。


インパクトレポートより


この団体が対象としているのは、14歳から24歳までの、家出やホームレスの若年層。14歳から17歳が約1割、18歳から21歳が約5割、22歳から24歳が約3割とのこと。黒人が53%、ラテン系23%、白人19%、その他5%。いろんな人の家に泊まって過ごしている人が30%、道端で過ごしている人が28%、家族と一緒に過ごしているのは18%、シェルターからきている人が16%。紹介できている人は5%で、ほとんどの人は勇気を出して状況から抜け出すためにこの場に足を運んでいるのがこの数字からも伝わってきます。

インパクトレポートより(https://www.bridgeotw.org/fy21-annual-report)

BostonCommonsという公園の目の前にビルがあり、教会のシスターたちが立ち上げた活動ですがそのビル一棟買い上げたことにより今は家賃が発生しないとのこと。(そのビルの中だけでおさまらず他の場も借りて活動しているため、それらのところは家賃がかかっています)そのビルの中で、HOTLINEの運営、日中立ち寄れる場、相談できる場、夜過ごせる場、シェルター、教育プログラム、就職支援、カウンセリング、無料の医療相談ができる(ビルの中で)などを実施しています。それ以外にも、無料のアウトリーチ型の医療ケアを提供するバンを街中で走らせたり、シングルのお母さんのための家の運営、ソーシャルスキルを学びながら仕事や学校にいくための移行期を過ごす家の運営など10億円程の予算を持ちながら様々な全人的ケアをしています。

こちらが医療バン。BridgeのHPより。

お話をしてくれた人たち

この団体の代表の方、ファンドレイザーの方、カウンセラーの方からどのように事業を設計し、どのように事業が回るように連邦政府/州/市の予算と寄付を集めているか、カウンセラーがどのように一人一人と向き合っているか等の話を聞くことができました。


こちらが代表のElizabeth。とてもパッションがある方でした。手に持っているのは運営している移行期やシングルの方向けの家


ファンドレイザーの方のお話し。チームでいかに連携しながらこどもたちのケアを続けられるように資金集めをしているかを聞かせてもらいました。

教えてもらったポイント

朝から夕方までみっちり教わったポイントは、無数にあり、書ききれませんが一部共有します。
・こどもたちの権利や政府の介入のための法律があるものの、政府は大きすぎて一人一人のケアをしきれるかといえばできない。公の責任だけどそのうまくできない部分を私たちのようなNPOが一人一人に対応する活動をかわりにしている。
・政府のお金を得るものの、LGBTQを支援するならばお金を出さない、結婚していないお母さんを支援しているならばお金を出さないなどいろんな条件がついてくるときがあり、そういうときは、多くの寄付を集めそういうこどもたちへの支援を続ける。そうやって公的なお金と寄付によって細やかな活動ができる。
・何故若者だけを支援するか、というと大きくなると価値観があまり変わらない。この時期に仕事や学びにつながりたいと思っているこどもたちが実際につながるための支援を得ることが最も大きな効果を長期にわたって発揮する。
・疲れた、お腹がすいた、こんな生活をしたくない、、、という言葉で彼らは表現をしない。ありとあらゆる汚い言葉や乱暴なふるまいで表現をする。その表現の後ろに、彼らの「もうこの状況から抜け出したいんだ」という叫びや、これ以外の表現の仕方以外を教わってこなかった悲しみをいかに感じ取れるかが職員のスキル。それを聞き取れない人には辞めてもらうか、トレーニングをし直す。
・ボランティアはセラピー相談にのってはいけないという法律があるため、ボランティアができる範囲は料理したり掃除をしたり等範囲を限っている。そのためにバウンダリー(境界)を学んだり、質問をしない等の研修が1-2時間ある。
・スタッフは年中プロを呼んでの研修やメンタリングをしている。誕生日会をしたり楽しいこともたくさんする。最も辛い所にいるこどもたちと真正面から向き合うかなりタフな仕事。(研修やマニュアルの充実度がすごかったです)
・寄付を集めるために、どんなプレゼンをしているのか。どんなことを伝え、どんな数字で自分たちの活動を表現するのか。その寄付が集まらないと、給料も払えず、こどもたちが休む場や学ぶ場が継続できない。必死で24時間寄付のことを考え、この子たちのためになんとかしないとと集めている。近道はない。常にお金をお願いをしないといけないことは時に時々しんどいが、世の中の人たちが直接支援はできないけれども世の中をもう少しいい状態で見たいと思っている人は多いので、その関わりたい分野や関心に合わせて自分たちができていることを一人一人に伝えている。
・10億の予算だけど、支援しているのは数十人。もっと人数のインパクトをということを求められるが、一人の人への支援に必要な高いクオリティの関りをしないといけないのだということを伝えている。

等々、、、これだけでもまだ1時間程度の話をまとめた内容ですが、とても多くの学びがありました。
何より情熱が伝わり心がとても揺さぶられました。実際に一時シェルター等にも行きました。

シェルターの様子

キッチン。冷蔵庫の中にはたくさんの食べ物。キッチンにもサンドイッチ等。

一時的に立ち寄れる場には、とにかくたくさんのお茶や食べ物がふんだんにあります。まずはたっぷりとお腹を満たすこと。シャワーを浴びれること。洋服を洗濯ができること。そんな基本的なニーズをしっかりみたせるようになっていました。

やっていいことやっていはいけないこと

やっていいことやってはいけないことなどのルール。アルコールやドラッグはだめですよー等基本的なことですが、ハラスメントはNGすべてのプログラムから出ていってもらいますという強いメッセージ。

関りの中では、一人一人への丁寧なカウンセリングがとにかく充実していて、その手法もただ座って話を聞くだけでなく、困っていることや「こうしたいんだ」ということを発話できるように、大分手前からいろんなステップで関われるように仕組みがつくられていました。


ショートステイのリビング。この裏側にもキッチンがあり。

短期的に過ごすシェルターの部屋も複数あり、その先には大きなリビングとキッチンがあり。キッチンで料理をすること、片付けることなどたくさんのことを経験をし、料理をするという作業のなかでスタッフや互いに話しができるように、支援につながるようなあったかい雰囲気をいかにつくっているか、その工夫の数々に圧倒されました。

ちなみにこのEQUALITYの旗は今か過去の入居者がはったもの。こうやってリビングを自分たち仕様に関わりながらつくれることもとても素敵ですし、「大事な事」といっていました。

最後に


最後に、どんな団体であっても資金が十分にあるということは絶対にない。その規模感に限らず支援を必要としている万という人と会い続けるし、そのための資金は常に足りない。今でもシェルターを土日あけることはできないが、そのために更に資金が必要という状況がある。また、高いインフレに対応するための給与水準をあげていかないといけないがそれがいかに難しいか。困難は常にその資金獲得にあるという話をされていました。悲しいこともたくさんあるとのこと。でも、50年の活動のなかでであってきたあの子の卒業、あの子の嬉しい顔が代表の方の机に飾ってありました。それを見ながらなんとかなるなんとかしようと前をむいているとのこと。その気持ちがすごく伝わってきて、私自身にとっての「あの人」「あの子」を思い出し、どの団体も規模がかわってもそうした気持ちは変わらないものなんだなと思いました。