イノベーション

イノベーションって・・・

おむつ自販機ウェルカムベビープロジェクトから生まれて今全国に30機にまで増えました。空港の中や、商業施設の中、いろんな場所に置いてもらっています。ウェルカムベビーとは関係なく、設置が進んでいるので、台数は後から知ることが多いです。でもたった一人の「おむつが自販機が売ってたらいいな」という声からこんな広がりが生まれている、、、新しいものづくりの時代を感じます。子どもが生まれ育っていく環境を、いろんな人たちの『参加』で豊かにしていく、そんなことを重視しているプロジェクトならではの展開だとも思ってます。イノベーションってよく聞きますが、実際に埋もれたニーズ・声から何から生まれていく、いろんな事業体が参加しながらそれを実現していく、その過程について、今日は少し思っていることを書こうと思います。

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この1年やってきたこと

おむつ自販機だけでなく、ウェルカムベビープロジェクトではこの1年間、新たなコトづくりに向けて、イオン東戸塚、株式会社大川印刷、花王株式会社、 家事代行サービスのコピエ、 東京キリンビバレッジサービス、ヤマト運輸神奈川主管支店、 リノベーションの株式会社WAKUWAKU(こまちカフェをリノベーションしてくれた会社) の7社とで1-2か月に1回くらいのペースで集まって検討を重ねてきました。

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『家事はもう夫婦2人では無理!』の声にこたえていく家事シェアスペース、『家から出られない!』の声にこたえていく移動販売、『謝ってばかりで感謝されることがない!』に対するありがとう自販機など、いろんな面白いアイディアが出てきて、年末に関内にて発表会を実施しました。

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難しかったことは山ほど

コンセプトづくりだけでなく、具体化しよう、一回トライアルをやってみよう、と詰めれば詰めるほど新たな課題が出てきて一進一退が続きました。3つのグループに分かれて検討をしたのですが、もう一度ゼロから考え直そうを数回繰り返したグループもありました。難しさは、当たり前のようですが事業性のところでした。ニーズは分かるが各社どう事業として成り立たせていけるのか、の部分が具体に落とし込もうとするとすぐに難題としてやってきます。目的は、「出産子育てが豊かになる」ということをベースに、社会が持続すること、各社も持続すること、プロジェクトも持続すること、ということを条件にしながら進めると、相反することがたくさんでてきます。「ゴミ」の問題、「コスト」の問題、、、あげればきりがありません。

全体では全8回(振り返り含めて9回)集まり、2回発表の機会を設けてきましたが、それに加えて個別にグループでの検討は3-5回。多いようでお互いの信頼を重ねながら、ニーズ知ったり理解を深めたり、自分たちの資源を出し合いながら何ができるかを詰めたりするには、本当に少ない回数。限られた時間をどうデザインしていくかなかなか悩みどころでした。

重要な要素

1年集まってコンセプト発表まで行き、具体化のステージに入った今、どんな要素が今欠けているのか何が大事なのか立ち止まる時間を、みんなで考える時間を先日もうけました。出てきた意見や思うところを集約してまとめると、何かを生み出していくためにはこの5つの要素が欠かせないということでした。

イノベーション

まず大前提に、事業者同士のみならず、創る人同士の深い「信頼」がベースにあるということ。これがあった上で、全てが上にのっかってくること。会社と会社以上に、信頼は出発点に人と人の間のことなので、人事異動があるともう一度築き直すことにもなります。人をベースに積み上げていく強みでもありもろさでもあります。でも、それでもやはり組織と組織の前に人と人であることをベースにすることが重要というのが実感です。このために、各社の現場を1年かけて全社全員で見て回り、時間をとってお互いの人としての理解と事業の理解に時間をかけました。

次に「ニーズ」について。当事者の声を聞く機会、私たち自身が日々現場で聞こえる声を代弁したりしながらニーズを伝えたり、葉っぱというツールを使ってみてもらったり、「ニーズ」を捉えてもらい一緒に見て感じて捉えるということもしました。しかし、振り返るとここは最も重要で、「このニーズこそ私たちが情熱を傾けたい」というものに直接触れる時間がもっともっと必要だったと振り返って思います。これからそこを再度強化しながら具体化プロセスに入らねばです。

また、「情熱」について。現実に落とし込もうと思うと尖った意見はまるくなります。尖ったものは理解されない、決裁が通っていかないからです。尖った意見をとがらせたまま通すための情熱とこだわりをどこまで持てるのか、これは中から湧き出るものなので外からインストールは難しいところです。でも、案外仕事人としてだけでなく一人の人として情熱を眠らせてきた人、持ち続けている人はたくさんいるというのが実感です。右脳的な理屈・ロジックの部分に加えて、最後はここが一押し、踏み切る覚悟につながるポイントだと思っています。

あとは、「資源」。もちろんそれぞれ事業の強みや課題もあるので、それらを持ち寄りかみ合わせていくということも同時並行でやりました。リソースを真ん中に出していくようなこのプロセスは、いくらでも広げることができてしまうことで、出発点に戻していくことやニーズから離れないようにしていくのが難しい部分でもありました。

最後に「タイミング」。これはどうにもコントロールできない部分で「運」に近いものもあります。もしかしたら「今」じゃないかもしれない、あと数か月後、2年後だったら通るかもしれない、ということもあります。事業各主体の戦略・タイミングが当然あるのでそこがぴったり、その検討のタイミングと合わないと簡単に実現にはいたらない。その時を待ち寝かせる、というのも一つの答えなのかもしれません。でも、多くの人が「今じゃない」と思うものを誰かが踏み出さないといつまでも変わらないので、少々理解されなくても「今」に事業体の中のみんなを引き込むのか、、、そのタイミングを待つのか、、、それは参加している一人一人の担当者や経営者やマネジメントの方のそれぞれにしか分からないこと・できないことで、とても大きなポイントかもしれません。

ブツブツっときれている状態から

本来ならば、コミュニティの話も各企業団体が取り組んでいることも全部つながっているのですが、福祉は福祉、ビジネスはビジネス、子育ては子育て、といろいろとぶつぎりにするからこそ見えなくなっていることがたくさんあると思います。ものを買う、使う、捨てる、住んでいるコミュニティで暮らす、住んでいるコミュニティの外で働く、できないことはアウトソースする、それをサービスで買う、公共サービスを利用する。。。そんなどれも人が関わっているのですが、それを忘れすぎていることを、いろんな事業の方々と話していると気づきます。

貨幣価値でコトもモノもサービスも買う、その対価は当たり前のように要求する、そこに人がつくっていること人が動いているなんて想像すらしない。払った価値に見合うかどうかをとことん考える。でも払った価値に「見合わない」「足りない」「ぴったり合わない」と感じるちょっとした「こまったこと」がたくさん増えていく。何故かというと、ユーザーはオーダーメードで求めるけど、創り手としては大多数に合わせた「型」をベースにせざるを得ないから。オーダーメードにしようとすれば高価格帯になってしまうから。その困ったことは新たなサービスを買わないと解決しないけど、その困ったことを解決してくれる「サービス」を買うにはどんどんお金が必要になる。もっと働かないと、もっとこのサービスを買わないと、のぐるぐるの中で、あれ?そもそもその先に求めていた「暮らし」は何なんだろう、、、と分からなくなってしまう。

子どもを育てる、ということは夫婦という単位や家族という単位でできることは限界があるから、これまで人類は複数の単位で暮らしてきたのだと思います。それをどんどん広げて分業した結果、コミュニティとビジネスと行政がわかれてきたけど、それはもともと一つの村でやってきたこと。今の時代ならではの形で、小さな単位からもう一度考え直そう。

ウェルカムベビープロジェクトでは、小さな単位で、信頼をベースにそんないろんな資源と情熱とタイミングとニーズを持ち寄って、次の社会に必要なことをつくっていきたい。こまちカフェや開催している小さなおしゃべり会では、安心して話せる場、一対一の「信頼」を取り戻せるような時間をつくっていきたい。その両方があるから、頼り頼られ安心して子育てができるような環境を次に残せるんじゃないかと思います。