見出し画像

ゆるキャラグランプリは組織票の戦いである

ゆるキャラグランプリ2018が先日終了しました。
ご当地部門507体のエントリーのなかで優勝は埼玉県志木市文化スポーツ振興公社のカパル。組織票疑惑が取りざたされた三重県四日市市のこにゅうどうくんは3位でした。思わぬネタで話題を呼んでしまった今年のゆるキャラグランプリですが、私はゆるキャラファンのひとりとして、あえて「ゆるキャラグランプリは組織票の戦いである」と言いたいと思います。そう考える理由を挙げてみます。

1. ゆるキャラとはそもそも組織のもの

まず、あまりに基本的なことですが「ゆるキャラ」とはそもそも地域や企業など団体をPRするためのマスコットです。(ゆるキャラグランプリにはご当地部門と企業部門あります。例年圧倒的な盛り上がりをみせるのはご当地部門。)●ンリオや●ィズニーといったビジネスを目的につくられたキャラクターとの違いはそこにあります。ということは、純粋にキャラクターとしての評価を受けることよりも、いかにそのキャラクターを通して組織をPRできるかが評価の対象です。ゆるキャラグランプリにエントリーするということは、彼らが背負う組織をPRすることが目的であり、言うなれば、ゆるキャラ同士の戦いとは組織と組織の戦いなのです。つまり、「いかに組織票を動員できるかの戦い」と言っても過言ではありません。組織票が動員されるということは、ゆるキャラの性質上ごく当たり前というか、そこに本質があるとも言えるのです。

2.組織人にとって組織票は意気込みのあらわれ

ゆるキャラが組織のために存在しているということは、その管理やPRを担当しているのも多くの場合組織の人間たちです。この組織人のミッションは、自分が任されている職務を全うすることです。その職務がゆるキャラのPRであれば、そこに邁進するのみで、ゆるキャラが地域や団体の活性化にとって本当に有効なのか…といった本質的な議論をする立場にはありません。大きな組織になればなるほどその傾向は明らかです。そうでなくても、日々キャラクターに接し関係者と文字通り汗をかきながら活動をしていれば、純粋にグランプリでひとつでも順位をあげたいと思うのは人情。実際、毎年優勝したキャラクターのアテンドをするスタッフ(行政職員の場合も多い)は、スピーチで号泣しています。それだけ本気で戦いを挑んでいるのです。キャラクターへの愛が深い人ほど、より熱心に組織票を呼びかけることになるでしょう。県知事や市長、社長といった立場の人もまたしかり。彼らの熱心な姿に感じ入るからこそ「●●に投票しましょう!」と号令をかけるし、となれば忖度してしまう人たちが出てくるのもまた当然の流れです。

3.ゆるキャラグランプリは無差別級の戦いである

一様に「地域・企業など団体のPRマスコット」と言っても、その規模はバラバラです。地方自治体だけをとっても、県のキャラもいれば町のキャラもいる。同じ市でも人口規模には何倍も格差があります。ハンデはありません。それでも同じ土俵で組織票を争うとなれば、人口が少なかったり知名度のある知事や市長がいない地方自治体などは、あの手この手を使わざるを得ません。そのなかで、業務命令ともとれる上長の号令があったり、フリーアドレスを大量に…といった少々行きすぎた戦術を使うことになるのも不思議ではないのでは、と思います。

4.組織票は地道な活動に敵わない

ここまで、組織票の動員はごく当然のことと書きましたが、冷静にそう言っていられるのは、グランプリのこれまでの結果を振り返ると、結局は地道に活動してきたキャラクターが優勝してきた、という経緯があるからでもあります。例えば2014年はゆるキャラという言葉が生まれる前から20年にわたり活動してきた群馬県のぐんまちゃんが優勝、2016年は人口わずか2万人の高知県須崎市のしんじょうくんが優勝しています。
たしかにイベント主催者側にとっても組織票は深刻だったようで、グランプリ開始当初はインターネット投票のみで順位が決まっており、主催者側が明らかに不正投票と思われるものを削除した、などの事態も起きていたようです。なのでここ数年は、インターネット投票はID登録制、ロボット対策もあって投票にはなかなか手間がかかります。さらに2013年からはインターネット投票を締め切ったあと、表彰式が行われるイベント2日間での決戦投票との合計得票数で優勝が争われるシステムに変更しましたが、これも直接会場に足を運ぶ熱心なゆるキャラファンの支持を重視するためだと推測しています。表彰式の映像を見てみると驚きますが、アイドルのコンサートばりの熱い声援がキャラクターやアテンドのスタッフに飛び交います。今年優勝したカパルも、何年も前から上位に入賞していて今年は最後の挑戦、と宣言しての参加だったこともあり、ファンの熱烈な応援を感じましたし、アテンドのお姉さんの人気も高く表彰式では会場じゅうから熱い声援が飛んでいました。ファンの多くは、もちろん地元だからという理由で応援する例もあるでしょうが、地縁に関係なく韓流スターや●ャニーズアイドルにハマるようにキャラクターを応援しイベントに足を運び投票をします。(かくいう私も熊本には縁もゆかりもありませんが、くまモンにハマってしまい、熊本まで足を運んでしまいました..)この熱烈な票をできるだけ生かすための、イベント主催者側の工夫により、組織の大きさに関係なく、長年地道に活動していたり、個性や面白さが際立つキャタクラーに光が当たるようになっているのです。(怒られるかもしれませんが、むしろ組織票排除のためになんらかの大きなチカラが働いているのは?と思うことすらあります。)

問題にすべきは組織票すら動員できない組織

むしろ、問題にすべきは組織票すら動員できない組織ではないでしょうか。ゆるキャラグランプリにはピーク時より減ったとはいえ毎年多くのキャラクターがエントリーします。2018年のご当地部門だけを見ても507体。ひとつの都道府県に平均10.8体がひしめいていることになります。熾烈な戦いのなかで、うかうかしていればすぐに下位に沈んでしまいます。2012年には865体中最下位に沈んだ大阪府堺市都市緑化センターのポピアンがわずか4票しか獲得できず、職員ですら投票していないのか?と逆に話題を呼びました。せっかくお金(場合によっては税金)をかけてキャラクターをつくったのに、エントリーしただけで終わり、自身の所属組織の職員の票すら確保できないようでは、組織としての結束力を疑わざるを得ません。

このように考える根底には、ゆるキャラと言えど「命」であるという想いがあります。単なるイラスト、単なる着ぐるみと言えど、誰でもぬるいぐるみや人形を簡単に捨てられないように、目鼻があるものには命を感じるのが人間。そもそもゆるキャラを安易に生み出すべきではない、という話はここでは割愛しますが、生み出した以上、雑に扱うことは人間倫理に反することなのです。強い責任感をもってPRしてほしい、と思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?