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悲喜こもごもの季節に思う

適材適所とか嘘ばっかり
なぜ人事課はこんな異動をさせるの
説明できないわけじゃない
説明の必要がないと考えているのさ
#ジブリで学ぶ自治体財政

公務員をやっていると,桜が咲き始めるこの季節はなんとも落ち着かない別れと出会いの“悲喜こもごも”に彩られる季節でもあります。
福岡市は人事異動の内示スケジュールが遅く,この記事を書いている時点ではまだ私も含め4月1日に誰がどの席に座りどんな任務に就くのか,誰が上司でどんなチームで仕事をするのか全く分かっていませんが,既に他の自治体では4月1日の人事異動の内示や発令が行われ,SNS上で昇任,転任,残留のご挨拶投稿が毎日のように繰り広げられています。
昇任や異動希望が叶っての転任を喜び,予期せぬ部署への配置に不安と期待に胸膨らませ,異動や昇任への期待がかなわず残留し,あるいは異動を命じられて不平不満を募らせる。
人事異動に起因して毎年繰り広げられる“悲喜こもごも”は,文字通り「悲」と「喜」の感情がないまぜになり,その両方が自分や自分の周りで起こることで,役所全体が精神的に不安定な状況に置かれています。

さらにその不安定さに追い討ちをかけるのが,人事異動が「命令」であることによる説明の不足,納得感のなさ,合意の不備とそこから生じる組織への不平不満,不信です。
私もこの時期,人事に関する不平や不満を言葉にしたこともありますし,SNSに投稿したこともありますが,最近は達観し,言葉にしないことにしています。
この理不尽に対する精神安定剤としてこの時期によく「置かれた場所で咲きなさい」という言葉を聞きますが,私も昨年その趣旨で,私が長く在籍した財政課に関する人事異動について,かなり長いシリーズの連続投稿をいたしました。

新たに財政課に配属された皆さんには財政課が担う責務と,その遂行にあたり大事にしなければならないことを書きました。

財政課を無事卒業した皆さんに向けては,よりよい自治体運営のために,財政課に残された後輩たちのために,ひょっとしてまた財政課に舞い戻ってくるかもしれない自分自身のために,卒業生として今後行うべきことを書きました。

財政課に残留した方向けには,改めて財政課の使命を確認してもらいつつ,私が財政課時代に行った職場改革について書きました。

そして,私自身,つらく苦しい9年間の財政課生活が限られた人生の貴重な時間を過ごすうえで得難い価値ある体験になったことを改めてご紹介しています。

これだけの紙面を割いて,全国の自治体で行われる財政課にまつわる人事異動で生じている“悲喜こもごも”をどう受け止め,乗り越え,4月から新たな気持ちで置かれた場所で花を咲かせるかということについてお話ししてきましたが,ここでふと疑問がわいてきます。
これって各自治体の人事課の仕事なんじゃないの?という疑問です。
なんで各自治体の人事異動で生じたもやもや感を,当事者でない自分が慰めたり励ましたりしているのか。
別にそれは嫌な役回りではなく,誰かから頼まれているわけでもないのですが,そもそも人事課がぴしゃっと説明責任を果たして納得のいく人事をすればいいんじゃないの?とも思うわけです。

人事異動に関して納得がいかず,どうしてそうなったのか,ならなかったのかということに説明を求める人は後を絶ちません。
一方で,人事課にそのことを尋ねると,人事は難しいもので一口では語れないし言えないこともたくさんあると口を濁します。
以前は私もこの人事課の生ぬるい対応に業を煮やし,人事課は人事異動に関する説明責任を果たすべきと論陣を張ったことさえありますが,今はそこまで人事課を標的として攻撃するつもりはさらさらありません。
ただ,人事課の発令に従って異動しあるいは残留する各職員の自分なりの心の整理だけにゆだねることもまた人事課の責任放棄であると考えています。

人事課のやっている仕事は人事異動だけではありません。
採用から退職までの私たち職員一人ひとりの異動,昇任,賞罰等の人事管理はもちろん,私たちが働く職場の勤務条件の整備やその労務管理,組織が担う業務の量や質の変化に応じた組織編制や定数管理も彼らの仕事です。
また私たち職員が使命感や目標を持って仕事に向き合い,スキルやモチベーションを維持向上させながら成果を上げるための組織マネジメントや人材育成も所管しています。
果たすべきはこれらの人材管理業務全般についての説明責任であり,この全体像についての納得感の向上を図ることが求められるのではないでしょうか。
私たちは自治体職員として組織からどのような期待を受けて雇われているのか。
そのことを雇い主の市長に代わり,あるいはその職務遂行の権限を私たち職員に信託している市民に代わって職員に伝え,その期待に応えようという意欲を喚起させるのが人事課の務めだと思います。

このことは,人事課が行うべきという必要論としてではなく,それが必要だと考える人事課はきっと行うことになるだろうという必然論として思っています。
厳しい財政状況と多様な市民ニーズに板挟みになり,風通しの悪い縦割りの職場で,十分な業務改善も行われずに多忙になるばかりの毎日。
この春もまた,私たちの仲間が公務員の世界を離れ新たな世界に巣立つことを決意しています。
それは新たな世界への飛躍と喜ぶべきですが,私たち公務員の世界に彼らを引き留める十分な魅力がなかったということでもあります。
また,就職市場では安定を求める公務員人気は底堅いと言われていますが,公務員試験の倍率は年々下がっており,求める資質を備えた人材を採用することが難しくなっている現状はあちこちで見聞きします。
本当にいい人材を求め,その人材が意欲をもって奉職できる職場,仕事だけでなく人生そのものを豊かに過ごせる毎日を過ごすことができる職場,組織,仕事を与えることができると,雇い主として私たち職員やこれから公務員を目指す人たちに示すことができなければ組織は立ち行かない。
その危機感があれば,当然に人事課から何らかの心情の吐露があるはずであり,人事課が感じている必要性や緊急性の度合いに応じて,職員との対話的関係の構築による情報交換や意思疎通が行われ,その意を汲んだ人事政策全般の改革が行われるはずだと私は思っています。
私が財政課長時代に行った予算編成制度改革もそうでしたからね。

★自治体財政に関する講演、出張財政出前講座、『「対話」で変える公務員の仕事』に関する講演、その他講演・対談・執筆等(テーマは応相談)、個別相談・各種プロジェクトへの助言・参画等(テーマ、方法は応相談)について随時ご相談に応じています。
https://note.com/yumifumi69/n/ndcb55df1912a
★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885
★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/
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