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お役所仕事を止めさせろ

こちらの所管ではありません
前例がないのでできません
国の判断を仰ぐ必要があります
貴方だけ特別扱いはできません
決まりですのでご理解ください
#ジブリで学ぶ自治体財政

「お役所仕事」とは,形式的で時間がかかり,実効の上がらない仕事ぶりのこと。
組織の縦割り,窓口のたらいまわし,杓子定規な回答,融通の利かない対応など,我々公務員の仕事ぶりはよく市民やマスコミからこのように揶揄されます。
決められた枠を踏み越えることのないよう自分がやらない理由を巧妙に探し,法令順守や公務の公平性などの理屈を盾に,相手方の要請に真正面から向き合わない術はまさに伝統のお家芸。
私たち公務員ですら,役所の中で仕事をしていてこの壁にぶち当たり,同業者ながら辟易することがあり,これだけたくさんのこの資質を持った公務員がいるということはひょっとすると公務員試験の科目になっているのかとさえ思います(笑)
なぜそこまで自分の領域を狭く限定的にとらえ,その外側に手を出そうとしないのかということについてはこれまでも何度か書きました。

市民が期待する無謬性や公正公平性、いつ誰が担当しても間違いがなく、手続きや結論に偏りがないという機能を追求した結果,行政組織で顕著に発達した精緻な分業は縦割りやたらいまわしを生みます。
さらに悲しいことに「お役所仕事」の非効率を正す行革の嵐のなかで自治体職員の定数削減が進んだ結果、職員や職場の担当領域に隙間が生じていっそう「縦割り」が進み、職員の間、組織の間での分担と連携に支障をきたすケースも増えています。
今後も職員定数の増加が見込めない中にあっては,職員同士,組織同士での情報共有を密にし,それぞれの抱える事情を理解し,互いに協力し連携しながら適切な分担を図っていくことが必要。
これまでの精密機械のような事務分掌による組織運営の文化が染みつき,仕事の押し付け合いやたらいまわし,連携ミスによるポテンヒットなど,職員,組織間での自らの所掌を超えて意思疎通を図ることができずに職務遂行に支障が出るということがないようにしていくために、私たち自治体職員はいかにあるべきか、そうできないのはなぜなのか、各自で胸に手を当てて考えていただきたいと思います。

多くの公務員は職務に忠実ですが,その真面目さが仇になることも。
給料や昇任のインセンティブがなくても自分が担当している業務をより領域拡大し市民サービスの向上を図りたいと考える自治体職員の強い使命感が時には納得できないことはしたくないという自我へと変容し,意に沿わないものに対して「それは本当に必要なのか」「うちの職場で人員を割いてまでやる必要があるのか」と声高に叫ぶ抵抗勢力を産みます。
行政へのニーズの多様化,定員削減による担当業務範囲の拡大,災害等予期せぬ事象への対応の頻発など,自分の業務領域以外のものを見ざるを得ない,考えざるを得ない,前例のない局面がどんどん増えているこの機会をとらえて視座を一段高く上げ,「今,本当に大切なもの」を他者と語り合い,互いの視点や価値観の違いを認め合ったうえで対話によって合意形成を図り,適切な分担と連携で市民の福祉向上を図ることが自治体職員の本来の使命であると改めて認識してほしいと思います。

近年、自治体に求められる役割や機能が変化するなかで、自治体の外側にある組織や人材の力を借り、協力を得ながら物事を進めるという場面が増えましたが,自治体組織が長年育んできた独特の文化が外部ではうまく受け入れられないことや、自治体組織の外側では当然のこととされている常識が自治体職員に通じないということがよくあります。
特に,民間企業との取引、協業における経済感覚のずれは致命的で,意思決定や事業のスピード感、打ち合わせや書類の多さ、情報の非対称、コスト感覚のずれなど、決して対等とは言えない関係性で役所の論理を民間に対して振りかざし、悪気はなくとも結果として民間側にそれなりのコストと労力を負担させてしまうこともあり、そうした役所と民間企業の感覚のずれからくる恨み節が「お役所仕事」という揶揄に代表される、役所の能力、公務員の能力に疑問符を付けられる評価につながっています。
世の中の大半の人は、経済優先の常識の中で市場を感じ、リスクテイクを考え、自分の時間と労力を投じて自分の食い扶持を稼いでいますが,その大原則をきちんと知らず、その中で生きている個人や企業の価値観を正しく理解せずに「お金のことに疎い」公務員が社会を動かしていていいのでしょうか。
公務員が自分や自分の組織がそういった感覚に欠けていることを自覚し、自省したうえで、それをどう補うのかということを真剣に考え、自己啓発や人材育成、あるいは能力を持った別の存在とのコラボレーションができるようになることが自治体として必要な「経済リテラシー」の向上につながる。
それは、厳しい財政状況の中で自治体経営を迫られるすべての自治体職員が意識し、心がけてほしいことだと私は思います。

このように、これまでの記事では厳しい口調で大所高所から偉そうに「こんな公務員は嫌だ」「こんな役所は困る」と言ってはいますが,じゃあどうすれば改善されるのか,お前はただ「こうあるべき」「こうしてほしい」と言うだけ番長か,という声も聞こえてきます。
「お役所仕事」をしてしまう公務員諸氏もそんなに馬鹿ではありません。
問題なのはわかっているけど改善のための行動ができないのです。
その壁を乗り越えるための,“三つの「める」”について,次回以降お話ししたいと思います。

★自治体財政に関する講演、出張財政出前講座、『「対話」で変える公務員の仕事』に関する講演、その他講演・対談・執筆等(テーマは応相談)、個別相談・各種プロジェクトへの助言・参画等(テーマ、方法は応相談)について随時ご相談に応じています。
https://note.com/yumifumi69/n/ndcb55df1912a
★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885
★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/
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