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仏作って魂入れず

業務改善で人が減らされるらしいよ
今まで三人でやっていたことは二人でってさ
じゃあ二人で三人分のお手当を山分けかい?
それとも二人分しか仕事をしなくていいって?
#ジブリで学ぶ自治体財政

「お役所仕事」をやめさせる“三つの「める」”の一つ目は「誉める」こと。
我々公務員も一般市民も、それぞれが「お役所仕事」でないものを意識して拾い言語化することで一人ひとりの「誉める」言葉が積み重なり、「お役所仕事」ではないものが善行として歓迎される空気を醸し出していくことができる。
それが私たち公務員の当たり前を変え、「お役所仕事」ではないことを当たり前にしていく動機付けになる、と書きました。

しかし、これは「お役所仕事」が具体的にどういうことか、それがなぜよくないことかがわかっている人ならできるかもしれませんが、多くの公務員は自分の仕事に忠実なあまり、無自覚にそういう行為に及んでいることもあります。
あるいは、よくないことだとわかっているけど、忙しい、面倒だ、最低限のこと以外のものに手を出してもし失敗したら厄介だ、などという理由であえて知らんぷりを決め込む公務員もいるでしょう。
実際に「お役所仕事」というのは仕事をしないことではなく、やるべき最低限のことだけしかしないということですから、職務上の怠慢を指摘し改善を指導するわけにはいきません。
では、このように「お役所仕事」の撲滅に消極的な公務員の行動を変容させるにはどのような方策があるでしょうか。

動かないはずの公務員が必ず動き出す、効果テキメンの技、それは「決める」ことです。
やると決まれば動く、既定方針には異を唱えないのが公務員の特性です。
近年、急速に進み始めた自治体DXがまさにそれ。
これまで民間サービスに比べ圧倒的に後れを取っていた行政事務のデジタル化によるサービス改革は、費用対効果への疑問や自治体独自で取り組むことによる自治体間、業務領域同士の連携に難があるとして後ろ向きだった自治体も多く、なかなか進みませんでした。
しかし、国がデジタル庁を創設し、目標年次を掲げて標準的な自治体業務のデジタル化を進めると決めたとたんに、異を唱えることなく右向け右。
デジタル化による業務改善、サービス向上に表立って否定的な意見を口にする人は自治体内に忽然といなくなりました。

以前、対話が苦手な公務員がどうすればその一歩を踏み出すことができるかという話を書きました。
保守的な公務員は横並びが大好きです。
これは、うまくいかないというリスクを回避するとともに、なぜやるのか(やらないのか)を説明する手間を省きたいという思考パターンで、現状からの変革を求める場合には障壁となる性質ですが、逆に周りがやりだすと「なぜ自分だけやらないのか」という理屈が立ちにくくなり、周りに合わせるためにある意味盲従的になってでも自己変革に乗り出すという面白い性質でもあります。
決まったことをやり続けるというのもまたしかり。
決まったことをやっていれば批判されることはないし、やらないことでの悪目立ちすることは避けたいもの。
「対話」や「自己開示」といっためんどくさいことでもみんながやっていればやるようになるし、それが社会のルールとして定着すれば当たり前のように標準装備できるようになる。
「周りがやっているから」と将棋倒しのように雪崩を打って「対話」や「自己開示」を始め、それが組織文化として定着する世の中がくるのではないか。
楽観的な私はそんな風にも思うのです。

「お役所仕事」の撲滅だって本当は同じようにできるはず。
法律や条例で決めれば強制力を伴いますし、そうでなくても行財政改革の実行計画に盛り込む、あるいは人事評価の項目に加え、「お役所仕事」を変えていく「顧客重視」や「対話・傾聴」の姿勢、あるいは前例踏襲を疑い、果敢に挑戦していくこと、物事を俯瞰的にとらえ、関係者と適切に役割分担し、その連携のもとで総合的に業務を遂行することなど、「お役所仕事」と揶揄されないまっとうな取り組みを例示し、個人や職場がそのような姿勢であるか、具体的に取り組んでいるかどうかをきちんと評価し、賞罰を与えていくことだってできるのです。
実際に多くの自治体で「脱・お役所仕事」を掲げた行革やサービス向上のプランを策定、実施していますし、人事評価に取り入れている自治体も数多くあります。
それなのに「お役所仕事」を撲滅できないのはなぜなのでしょうか。
その多くは「決める」ことが実効性を持たずに掛け声倒れになってしまっているのです。

多くの公務員は職務に忠実で、やると決まったことはきちんとこなします。
しかし、時には「やるべきこと」を行為としてなぞるだけで、その目的を達成したかどうかが問われず、目的を達成するために最も効果的なやり方になっているかどうかをあまり意識しない、単なる帳面消しに終わらせることがあります。
それこそがまさに「お役所仕事」(笑)
せっかく仏を作っても魂を入れなければ何にもなりません。
脱・お役所仕事とスローガンを「決める」だけでなく、なぜそうするのか、それは「どういう状態を目指すことなのか、そのために具体的にどんな方策をとるのかといった「魂を込める」必要があるのです。
今、全国の自治体で一斉に進められている自治体DXも、そういう意味できちんと魂が込められているのか、少し不安になりますね。
さて、ではどうやったら「魂を込める」ことができるのか。
「誉める」「決める」に続く“三つめの「める」”に答えがありそうです。
続きは次回以降に。To be continued!

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★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
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★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/
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