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できる自信がやる気の源

このくらいなら私にもできるわ
私を見くびらないで
実はこういうのが得意なんだって
びっくりさせてやろうかしら
#ジブリで学ぶ自治体財政

先日開催された,自治体財政課職員を対象としたオンライン講演で私がテーマとして取り上げたのは枠配分予算。
私が福岡市で実践した事例を踏まえ,いつもこのnoteでご紹介している枠配分予算の目的や効果などについてお話しさせていただきました。
「枠予算バンザイ」
https://note.com/yumifumi69/m/m3128398729c9

この話をすると必ず「枠を配分する具体的な方法」について質問をいただきます。
どういう配分方法だとうまくいくのか,適切な配分額の算出方法は,各部局が守ることができる枠を配分するには,などなどいつも質問攻めにあいますが,いつもお話ししているのは「方法に正解はない」が「枠配分予算の目的が達成できるようにあらゆる工夫をする」ということです。
福岡市でも,私が財政課長になって予算編成手法改革を始めた2012年以降おおむね一定の方法論を確立していますが,それでも毎年のように微修正を繰り返しています。

枠配分の作業は大まかにいうと,以下のような流れです
① 次年度歳入における一般財源(税,譲与税交付金,地方交付税等)の見込みを立てる
② 次年度の歳出における一般財源所要額の見込みを立てる
③ 歳入歳出それぞれにおける一般財源見込みのギャップを埋めるために歳出見込み額をある程度圧縮し,部局ごとの枠配分額を決定する
④ 各部局において配分された一般財源の範囲内で予算原案を作成する

これは枠配分予算であろうとなかろうと,全国の自治体財政課で必ず予算編成前に行う次年度予算フレームづくりの作業工程と同じです。
当然,前年度決算が出たばかりで現年度の決算見込みも出ていないなかでその次年度の見込みを立てようというのですから,あくまでも試算。
歳入をある程度固めに見積もり,その範囲内で歳出予算を組むためにどの程度の費用圧縮が必要かを見立てるための作業ですので,この時点で正確性を期すために精緻に見積もるために積算根拠を詳細に把握したり,その金額を査定で圧縮したりして時間や労力を費やすことは全く意味がありません。

枠配分予算の場合,この時点で財政課と各部局が共有しておくべきなのは,枠配分予算の制度がきちんと機能し,各部局の裁量による予算編成ができるかどうかです。
このため,②については,各部局への枠配分額を算出する前提として,枠配分対象経費と対象外経費に分けて所要額を把握しています。
対象外経費としているのは,義務的経費(人件費,扶助費,公債費等)や他会計繰出金など,部局の裁量にゆだねることが困難なものに加え,重要な政策の推進や一時的な費用負担を伴うイベントに係るものなど毎年度の部局の枠にとらわれずに全庁的な視点で判断することが適当な事業を財政課があらかじめ指定しています。
それ以外の事業についてはすべて部局に配分する枠の対象経費とし,そのうち現年度予算額から特に大きな増減があるものだけを把握し,その増減理由を踏まえて次年度配分額に反映するかどうかを決定しています。

また③については,枠配分予算を採用していない通常の予算編成では,歳入歳出のギャップを埋めるために予算編成過程で歳出額を精査し,歳入の範囲内に収めることになりますが,その前裁きとして予算要求の上限額をあらかじめ定めるために現年度予算額に一定の率を乗じる,いわゆるシーリングが行われます。
シーリングはあくまでも上限額でしかなく,その範囲内に予算要求が収まっていたとしても,その内容を財政課が精査しさらに鋭く切り込んでいくことになるため,その圧縮率はざっくりと一律に設定されることが多く,各部局の実情に配慮することはあまりありません。

しかし,枠配分予算における枠の設定は,枠配分予算の本来の目的である各部局の裁量の発揮が可能でなければならないことから,枠として配分できる一般財源を可能な限り確保できるよう,義務的経費も含めた対象外経費での予算編成における財政課査定見込みや基金等での財源調整の見込みも考慮したうえで,確保した額についても各部局の必要額に対して一律の圧縮率を乗じて配分するのではなく,各部局の実情に応じてそれぞれで自律経営が可能な金額となるよう個別に圧縮率を設定し,これを各部局の必要額に乗じて配分しています。

ここで忘れてはならないのが,枠配分予算の目的です。
各部局の裁量を最大限発揮できる枠組みとして制度運用するためには,各部局の裁量で増減させることができないものは対象外経費とすること,枠配分対象であっても特に大きな増減を伴うものはきちんと把握し,それが部局の裁量によりがたいものである場合にはある程度の配分増を認め,これを次年度枠配分額の算定基礎に含めるということ,また,各部局の裁量を可能な限り確保できるよう,配分額の算定にあたっても各部局の所管する事業の性質や政策的な位置づけなどを勘案しながらその実情に十分配慮し,「この金額なら頑張ればなんとか枠の
範囲内に収められますよね?」と示せるよう個別に調整することなど,制度が期待どおりに機能するよう常に配慮することが必要不可欠なのです。

枠配分予算制度は,各部局の裁量を認めその権限を自律的に行使できる環境を提供することで,市民に近い現場の創意工夫による効率的,効果的な予算編成を期待する仕組みですから,そこに必要なのは正確,平等,不変の秩序,ルールではなくいかに現場でやる気をもって取り組んでもらうか,その誘導のための臨機応変な目標設定です。
できもしないこと,自分たちの裁量ではどうしようもないことを押し付けず,全庁で調整するものは財政課の査定で引き取り,現場の裁量で判断できることは逆に財政課が立ち入らないという役割分担によってお互いの持ち味を生かした連携が図られる,そんな関係性が構築できるよう,枠対象経費の区分や経費増減の妥当性を判断するという心がけで,一度決めたルールにこだわらず常に微調整しながら予算編成作業を進める阿吽の呼吸が何よりも大事だと思っています。

しかし,それだけ各部局の実情を配慮し,現場がやる気を失わないように枠配分の額を決め,その枠に入るように各部局での予算編成の過程で助言を行っても「どうしても枠に入らない」と現場がさじを投げてしまったらどうすればいいのでしょうか。
以下,次稿に続きます。

★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/
★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885
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