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めでたくないひとへ

内示ゼロ?昇任も異動もなしですか
あれだけ頑張ったのにそれはない
目立たなくてもみんながんばってます
どうやってやる気を保てっていうんですか
#ジブリで学ぶ自治体財政

今日は令和3年度最後の日。
例年のことですが、我々地方公務員業界では異動や退職のあいさつが飛び交い、旅立つ人も残る人も浮ついた日々が年度明けまでしばらく続きます。
私は今回、昨年の春に続き、またしても1年間で現在の職責を離れ、明日から新たな勤務地へと赴くことになりました。
私がこのタイミングで異動になることやその異動先を見て、この人事がめでたいのかめでたくないのかということについていろんな人がいろんなことを推測しいろんなことを言っていますが、そういう論評は私自身が知っていることや私自身の思いをきちんとお尋ねいただいてからにしてほしいと思います。
私自身は“希望”通りでとても満足している「めでたい」人事なのですから。

とはいえ、異動や昇任で現在の勤務地を離れることとなり、浮足立って軽口をたたきながら荷造りをし、会う人会う人にご挨拶を交わす中で少し気にしなければならないのが、今回の異動のタイミングで何かが起こることを期待しながら何も起こらなかった人のことです。
自分自身に事件が起こるとどうしてもその事件のことで浮ついてしまい、事件を待っていたのにその期待が叶わなかった人への気遣いを忘れてしまいがち。
皆さんはいかがでしょう。
「昇任おめでとう!」と祝いの言葉をかけた友人のすぐそばに、同じタイミングで昇任すると言われていた方が昇任を逃してひっそりとたたずんでいる、なんて経験ありませんか。
人事異動はいつも悲喜こもごも。
限られた椅子取りゲームのルールでは誰かの喜びは誰かの嘆きと裏腹です。
毎年「おめでとう」の数だけ言葉にならない残念無念が陰に潜んでいることを私たちは忘れてはならないと思います。

ここ数年は立場上、人事を預かる仕事にも携わり、この悲喜こもごものドラマの裏側も垣間見ることが増えました。
どうして自分は昇任できなかったのか。
どうして自分の異動希望はかなわなかったのか。
自分は仕事をしっかり頑張ったはずなのにどうして認めてもらえないのか
日々の仕事の評価の総決算とされる人事異動のこの時期には、仕事を頑張ったのに昇任や異動で処遇してもらえないことへの不満が爆発します。
異動や昇任の決定プロセスに携わっている者としては、そのような思いをさせてしまっている組織のあり方に問題があるのであって、何の非もない多くの職員の心の平穏を毎年乱してしまうことを申し訳なく思います。
日々の仕事が要求される水準に達しているか、役に立っているかは、それ自体がその都度評価されるべきであり、それを昇任や異動などの処遇で評価することには限界があります。
昇任や異動で本人の満足を得ようにも、それだけのポスト数を用意できず、希望をすべて叶えることなんぞできっこありません。
それなのに、あたかも昇任や異動をがんばったご褒美であるかのように振舞い、それをありがたく受け取る組織文化になってしまっていることが問題なのです。

断言しますが、昇任することができなかった彼らの多くは、その仕事ぶりを十分認められています。
しかし、人事案を作る上で優先される、組織上の課題、業務上の課題解決を考えたときに、その解決を担う一番手は誰か、二番手、三番手は誰か、という具合に組織、業務優先になっているということなのです。
それはそのポストに就くことができなかった彼らが期待されていないということではなく、よりその職場、課題について期待されている、別の能力を持った人がいる、ということだと理解すべきであって、職務遂行能力の評価が高い低いということではありません。
役所は年功序列だと思っている人がいますが、全く同じ能力、個性で年数だけ違うならそれもありでしょう。
しかし、職員の個性は千差万別。
近年では年功序列を重視しない適材適所への配置が広がっています。
毎年度、先に組織編成案を作り、そのうち退職者など必ず欠員になるポストを上位の職、大事な職場から埋めていく、組織の機能重視の人事案作成なので、どうしても個人のキャリア形成の観点が疎かになるのです。

だからこそ私は思うのですが、もっと個人が昇任や異動ではなく仕事そのもので充実感や達成感が得られるよう、上司が褒めたり、育成指導をしたりしないといけないのですが、それができていない。
勤務評定も異動と昇任のことしか聞かないし書かない。
これでは救われない人の方が増える一方です。
昇任や異動などの処遇が日々の仕事の評価であるとの誤解が解けないまま組織文化として定着しているままでは、このモヤモヤ問題は解決しませんが、この春、そんなモヤモヤを抱えてしまった皆さんは、そのような不備を抱えた組織にいることを所与のものとして、昇任や異動はごほうびではなく、組織を機能させるためのパズルに過ぎないと割り切る必要があるでしょう。
そして、この処遇がご褒美であるとの文化が虚構であると割り切り、自分は人が頑張っている時はその都度誉める、成長してほしいときにはその都度指導する、人事をごほうびにちらつかせる輩の世迷言には耳を貸さず、自分が褒められなくてもふてくされず、そんな程度の上司だとあきらめる、そんな気持ちの切り替えをしてもらえたらと思います。
少し長くなりましたので別稿に譲りますが、そもそも人事異動で一喜一憂する必要があるのか、ということもいつかここでお話ししたいと思います。
この春,おめでとうと言われることのなかった皆さん、腐らないで(※)日々を楽しんでいきましょう!
※私が腐っているわけではないということは繰り返し述べておきます(笑)。

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