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予算を編成するということ

結局予算はつけてもらえなかったのね
いいんじゃない ちゃんと議論できたんだし
少なくとも現状は市長までわかってくれた
足りなかった視点も指摘してもらえた
これで来年に向けて話はしやすくなったよ
#ジブリで学ぶ自治体財政

先日もFacebookでの過去投稿をご紹介しましたが,今日はその続編。
財政調整課長として最後の予算編成,市長言い渡しの日に投稿した所見です。
先日の投稿はこちら。

(以下抜粋)
平成28年度当初予算の市長からの言い渡しを無事終えることができました。
昨年秋の予算編成突入から数か月にわたる作業がようやくひと段落したことで,張りつめていた緊張感から解放され,ほっと一息ついています。
ここまでこの作業に従事いただいたすべての皆さんに感謝申し上げます。
まだ,計数整理,記者発表,そして議会での審査,と気の抜けない日々が続き,関係者の皆さんにも短い時間の中で大変な作業をお願いすることが続きますが,あと少しの辛抱ですので,ご協力のほどよろしくお願いいたします。

毎年やっているこの予算編成という作業は,市が行う施策事業に関する膨大な情報を集約,整理し,組織として共有するという意味で,市が行っている組織内コミュニケーションの最たるものだと思います。
これがうまくいくということは,市役所全体のコミュニケーションがうまくとれて,風通しのよい職場が創られているということでしょうし,組織間,上下のコミュニケーションがうまくいかず,目標やそれに向かう各職場の役割分担と連携,スピード感が食い違えば,ちぐはぐなものが出来上がるということになると思います。
それは市民,議会との関係性においても言えることで,満足感,納得感はコミュニケーションの密度との相関関係を常に意識する必要があると思います。

毎年,予算編成作業が終わると,まるで潮が引くようにうちの職場に来る人の数が減り,相談事や協議,調整する案件も激減します。
当然,予算編成という作業のなかでたくさんの案件に一応の決着をつけていくので,編成作業が終了した直後には,いったん潮が引くのは道理ですが,予算編成時にはあれだけ頻繁に協議,相談で顔を合わせていた方々が,予算が確定したとたんに梨のつぶてになり,どうかすると次年度の予算編成時に「お久しぶりですね(笑)」と顔を合わせ,「あの事業,うまくいってますか」という話になることも少なくありません。

別に,予算の執行状況をつぶさに把握して手取り足取り指図したいわけではないので誤解しないでいただきたいのですが,我々も事業部局の皆さんも含め,お互いに「予算」というものにまつわるコミュニケーションを「予算編成」「予算獲得」という到達点を「ゴール」とみなしてしまい,そこに向かって全力を尽くすがあまり,そのあとに必要なコミュニケーションがおろそかになっている場合があるのではないか,ということが気がかりなのです。

予算は,市役所が行う施策事業のPDCAサイクルのうえでは「P」の部分,すなわち「スタート」にすぎません。
予算を執行(=「D」)して実際に施策事業に取り組み,そこで得た成果,課題を分析(=「C」)し,次の一手をどう打つか,軌道修正の必要はないかを考え(=「A」),次の年度の予算編成に反映していくそのプロセス全般について,しっかりと現場と官房部門,首長に至る組織内コミュニケーションを図り,同じ目標,同じ方向性,同じスピード感で市政運営にあたる必要があると思いますし,その取組や成果についての納得感,満足感を得るための市民や議会とのコミュニケーションも然りです。

そういう意味で,この予算編成が終わったのちも,引き続き皆さんとたくさんのテーマで,いろんなことを語り合い,コミュニケーションを深めていきたいと思っています。
「財政出前講座」も続けたいと思いますし,各事業部門で担当している施策や事業のより良い今後のあり方についての改善,見直し,再構築なども,しっかりと対話,議論する時間や環境を作りたいと思います。
個々の職員,職場の持っている力を一つのベクトルに束ね,そのエネルギーを最大化するには,トップ層の示す全体的な目標や方向性に向かって,各局区長やその下部組織の節目を束ねるミドル層のリーダーポスト(部長,課長,係長)にある者の役割が重要だ,と先日書きましたが,そういった方々がしっかりとその役割を果たしていただける場を提供することは,私たち官房部門の役割でもあると思います。(以上抜粋)

当時はこういった所見を財政調整課長として職員専用掲示板で全職員に発信していたのですね(汗)。
この時記事の中で再三述べている「予算編成はコミュニケーション」という考えは私がその後全くゆるぎなく信奉している哲学です。
組織の中で意見が異なるとき,それでも結論を出さなければいけないとき,財政課が中心になって作る予算編成という名のテーブルは,話しにくいことを話して結論を出す,格好の場です。
それは,組織内の意思疎通を円滑にし,思いを共有するための「対話」の場で,財政課がファシリテーターの役割を務めていたということだったのではないかと思うのです。

財政運営がうまくいかないのは,お金がないからではなく,その使い道を話し合って合意形成に導くためのコミュニケーション不足こそがその要因です。
事業の廃止縮小が進まないことに悩む財政課職員の皆さん。
その本質的な理由は現場や市民との「対話」の不足です。
市民や現場,首長が自分のことを理解してくれないと嘆く前に,なぜ相手は自分のことをわかってくれないのか,そこにどのようなコミュニケーションが欠落しているのか,自分たちがどうふるまうべきなのか考えてみてください。
そこに解決の道があるはずですし,そこにしか道はないはずです。

ちなみに,予算編成が終わるとともに「潮が引く」現象については,一度noteでも書いたことがありますね。

今回の予算編成ではうまくコミュニケーションができなかったことが心残りの皆さん,潮が引く3月がねらい目です。
秋から冬にかけて全庁を挙げて膨大な時間と労力を費やしてきた「予算編成」という行為は一体何だったのか,その所期の目的は果たせたのか,何が足りなかったのか。
この投稿を参考に,それぞれの立場で考えていただき,「潮が引く」3月以降の何かに生かしていただけたらと思います。

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