Sexual Reproductive Health and Rights 2023 近年の各国の動きについて

日本で内服中絶薬認可の前進

2023年4月、日本では内服中絶薬認可が決まりました。
この数日前に、米国ではテキサス州の連邦地裁がFDAの中絶薬認可差し止めを決定するという、決定がなされていました。FDAの中絶薬承認プロセスが不充分、というのです。
このタイミングで、独自の承認機構を持つ日本で、内服中絶薬の安全性と有効性が確認できたために承認という手続きがあったことは、世界各国の女性支援者たちに安堵とともに受け入れられました。

世界のSRHR事情

実は、緊急避妊薬のアクセスも、安全な中絶のアクセスも、世界中で大きく揺れています。その根底には、民族主義の立場をとる人たちが、少子化を恐れていることにあると分析されています。
東ヨーロッパでは以前より西ヨーロッパと比べて避妊薬が自己負担の国が多かったようですが、ハンガリーやポーランドでは欧州委員会の決定をよそに、緊急避妊薬も処方箋なしの販売を許可しないことを政策決定しています。2020年、ポーランドでは中絶がほぼ全面的に禁止されました。アルメニア、マケドニア、グルジア、ロシア連邦、スロバキアでも、中絶の条件を厳しくしたり、待機時間を設けたりなど、アクセスを制限する方向の政策が近年可決されています。1)トルコでも、2012年に中絶反対法案が提出されて以降、(中絶は違法にはならなかったものの)一般女性の中絶へのアクセスが制限され、中絶や避妊薬も自己負担が増え、アクセスも制限されているそうです。こうした動きは、2022年にロシアとウクライナが戦争を始めて以降、勢いを増していると分析する人もいます。2)
緊急避妊薬や中絶を制限しようとする国は概ね共通して、反LBTGQ 、反移民の立場をとっています。つまり、「戦争に強くなるためには、もともとその場所にいたマジョリティの民族が、その国の多勢となり、かつ、全体の人数も多くければならない」ひいては「マジョリティの民族に生まれた女性にたくさん子どもを産ませたい、かつ、できるだけ移民は減らしたい」という発想です。

日本のSRHR政策のこれから

日本はどうでしょうか?女性に選択肢をできるだけ与えず産む方向に導き、性的マイノリティの権利を認めず、移民をできるだけ制限していれば、日本社会の未来は明るいのでしょうか。日本は、地政学的に東西戦争が始まると危機的な場所に位置します。少子高齢化が世界に先駆けて進んでいます。そんな事情を考慮すれば、SRHRの制限が私たちの未来を明るくすると、希望を持てるのでしょうか。それとも反対に、SRHRが普及し、人権中心の多様性を認め合う社会にこそ、明るい未来が見えるのでしょうか。

今、G7の首脳が広島に集い、原爆記念館に献花をしたことが話題になっています。国家のために人が産まれ生きるのではなく、産まれたひとりひとりの人が自分の人生を生きられるような社会を作ることができるよう、今、私たちが何をするべきか改めて考えています。


1)    Women’s sexual and reproductive health and rights in Europe .Council of Europe https://rm.coe.int/women-s-sexual-and-reproductive-health-and-rights-in-europe-issue-pape/168076dead
2)    Neoliberal Health Restructuring, Neoconservatism and the Limits of Law: Erosion of Reproductive Rights in Turkey. Health and Human Rights, Vol. 21(2).57-68.2019 https://www.jstor.org/stable/26915376

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