見出し画像

「短歌人」2024年9月号掲載作品

水の旅

似ることは共犯めいて島と鳥、緑とえにし、アリアとマリア

ウ、ハ、ム、心と書いて窓となる何十年もずつと唱へる

雨がまた雨になるまで水の旅 川の近くに住んでゐたいね

やはらかく目隠しされてゐることに気づかないまま月日は流れ

ゆでたまごがきれいに剥けた朝だから少しだけいい紅茶を淹れる

姉を知る家に暮らして老いてゆく生まれながらの妹として

おさがりの衣類が思ひ出を語るクローゼットのくらがりのなか

※同人2欄、冨樫由美子

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?