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超短編ストーリー三つ

Twitter上で見つけたタグや診断メーカーのお題や字数制限で書いてみた、とても短い物語三篇です

①「54字の物語」

月が綺麗ですね。彼からのメッセージを開くと立体画像が浮き上る。地球に残った最後の人類が見る私達の居留地の姿。


②冨樫さんには「それは人魚の恋に似ていた」で始まり、「君には届かない」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば2ツイート(280字程度)でお願いします。

それは人魚の恋に似ていた。幼いころから注意ぶかくわたし自身を取り囲ませてきた居心地の良い海のような世界の外に、突然あらわれた君。この世界から踏み出したいとはじめて願った。わたしの海は例えばきれいな真珠のような声でうたう女性歌手。甘い香りの文体をもつ短編小説家。なつかしい色彩で表現する画家。そんなものでできている。君の世界は広い草原。そこを駆け廻る子供たち。流れの速い雲。そこへ行きたい。わたしは決心した。じぶんの海を出て君に想いを告げることを。それなのに。声がでない。お気に入りの世界はわたしそのものだったのだ。その外でいくら叫ぼうとしても、君には届かない。


③とがしゆみこさんには「小さな嘘をついた」で始まり、「月が綺麗ですね」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば2ツイート(280字)以内でお願いします。

小さな嘘をついた。「満月を見るたびにあなたを思い出すね」別れ話が満月の夜だからって、いつまでも覚えているわけがない。だいたいあなたは何人めの恋人だったか。優しいだけが取り柄の、なで肩の男。そう、太陽ではなく月のような。わたしは太陽が好き。胸を焦がすような熱い視線を、付き合ってなくても投げかけてくる男たち。付き合えば、その情熱でわたしを力強くリードする。なのになぜ、あなたと逢う時間なんて作ってたんだろう。嘘で別れの傷を和らげようとしたんだろう。別れの傷を和らげる?違う。あれはあなたへの呪い。満月のたびにわたしを思い出すように。今夜も月が綺麗ですね。






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