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「短歌人」2022年4月号掲載作品

「冬の雑感」

英国の菓子と紅茶の送られてきたる冬の日ふるき友より

薔薇ならば咲かせておけばいいけれどこのさみしさは匿すほかなし

あのひとの誕生日にはあのひとの好きだと言つたモーツァルト聴く

繰り返し失くしつづける人生だ手袋や傘そして恋など

花束を抱へたこともあつた手でいただきものの白菜を抱く

一輪のうすむらさきの冬薔薇さうびふるき讃美歌うたへるごとし

けふの恵みひとつひとつを数へつつ祈りつつ降る眠りへのきだ

(同人2欄、冨樫由美子)

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