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「短歌人」2023年9月号掲載作品

「記憶と忘却」

画廊ギャラリーの女あるじの銀髪の、卯の花くたし降つてゐる午後

水芭蕉さがしにゆきてみつからず水のほとりに私が咲かう

はつなつの遠い記憶の教室に万人祭司説を知りたり

紅い花あをい花咲く忘却の森へとつづく道の傍ら

いだかれてゐてもいても寒かつた淋しさばかり分け合つてゐた

晴れた日は気持ちがよくて大さうぢ昔の人の手紙も捨てる

無防備に喉を見せつつ青空の破れた箇所を指さしあつて


(同人2欄 冨樫由美子)

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