「短歌人」2022年5月号掲載作品
「ブラウニー」
たれゆゑに乱れそめにし みちのくのわれにしあれば誦んじゐたり
卓上に熱い紅茶とブラウニー壁に版画の小鳥が歌ふ
夢のうちにも雪の香りのする朝に目覚めよと呼ぶ声が聞こえて
幸せにしたかつたのに約束はただ手のひらに受けた淡雪
のこされた時間のことを思ひつつ西にひろがる夕映をみる
ゆびさきで哀悼の意を打ち込みて余寒の夜のますます寒く
ひとりたすひとりはふたり春の日のとても明るい算数だつた
(同人2欄 冨樫由美子)
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