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「短歌人」2021年3月号掲載作品

「小さな棘」

ブックカフェ赤居文庫に出会ひたる歌集一冊読み干した午後

珈琲のカップの薔薇の模様にも小さな棘がかがやいてゐる

寄り添つて優しく、けれどかんたんに消えない傷をつけてあげたい

ゑがかれた時計の上のすすまない時間のやうな約束をした

文庫本を読みてゐるとき清潔な待合室はとても静かだ

部屋隅の塵や埃をぬぐふとき床につくひざ 祈りのかたち

ゆふがたにきれいな雪が降つてゐてあなたのことを思ふしばらく

(同人2欄、冨樫由美子)

#短歌 #短歌人

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