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「短歌人」2022年10月号掲載作品

「遅刻・早退」

人生に遅刻してきたやうな気がずつとしてゐる 青葉まぶしい

簡潔にまとめられたる夭折の遺書は早退届と思ふ

遠き日に買ひたる仏語入門書はじめの方に書き込みはあり

しりとりをしながら歩く子どもらの最先端の語彙が弾めり

あをぞらの飛行機雲を仰ぎつつこれから出会ふ人を思ふよ

この世から早退したき日もあれど雨のあとには虹もたつから

幾たびも夢の中にて遅刻する同じ授業の教室静か

(同人2欄 冨樫由美子)

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