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再び大切な人を失う

夫と死別してから、私は哀しみを抱えながらも、相続手続きや新しい介護体制の構築、自己基盤を整えるための講座参加など、わりと忙しい日々を過ごしていた。
そうでもしていないと、自分が壊れそうで怖かったのかもしれない。

そんな日々を通して、新たな出会いがあったり、気づきや学びを得たことで、自分に起こった悲劇にも大分納得できるようになったし、人生を楽しめるようにもなっていた。

一時は絶望という暗い、果てしなく続くトンネルから抜け出せない状態に陥っていたが、少しづつ光を見つけ、その方向に導かれ、今では光の当たる場所まで到達したような状態だ。

私は徐々に光の方へ向かうことができたが(哀しみがなくなったわけではないが)、まだ暗闇から抜け出せていないと思われる人がいた。

夫のお母さんだ。

夫が倒れる前から体調を崩し、回復途中で夫が亡くなってしまった。
子に先立たれる親の絶望感や哀しみ、苦しみは相当なものだろう。
夫が亡くなってから、義母は再び体調を崩してしまった。

心と身体は繋がっているとよく言うが、本当にその通りだと思う。
風邪をひいても食欲が落ちない私でも、夫が倒れてから2週間は食欲がなかった。
私の場合、2週間後には通常の食欲が出てきてしまい、「こんな時によくもお腹を空かせられるなあ!」と自分で自分に腹が立ったが、私はいつの間にか精神的にもタフになっていたのだと思う。
進行性の筋肉の病気で、「出来てたことが出来なくなる」という喪失体験を積み重ねてきたので、知らずとたくましくなっていたのだろう。

それはさておき、義母は最愛の息子を失ったことからの気分の落ち込みに加え、身体の具合も悪くなってしまい、ずっと落ち込んでいるようだった。

それでも私のことを気にかけて電話してきてくれたり、片道2時間かけてうちまで来てくれたりしていた。

嫁姑問題はよく聞くことだが、私たちはとても仲良しだった。
私たち夫婦も義母も出かけることが大好きなので、3人で出かけることもよくあった。
私の外出時の介助が夫一人では厳しくなってきてから、お母さんも率先して手伝ってくれていた。
3人で色々な場所に行ったし、色々なものを食べた。
物知りなお母さんは行った先の場所について解説してくれることも多く、私の知らない事をたくさん教えてくれた。

そんな私の大好きな義母も、夫が亡くなってから3年後に旅立ってしまった。
私の哀しみを一番理解してくれていたのは義母だと思う。

夫と死別してから、もう二度と見送る役はやりたくないと思ったが、また見送ることになってしまった。

お出かけ大好き3人組の2人も失い、私はたった一人になってしまった。
もう私は外出を楽しむことはできないのだと思ってしまった。

夫が倒れてから、私にずっと寄り添ってくれたお母さん。
いや、思い返せば、初めて出会った日から、私をすぐに受け入れてくださったお母さん。
あなたの包み込む優しさと、たまにすねたり、天然ボケで笑われるチャーミングさが私は大好きでした。
今まで本当にありがとうございました。

きっと今は哀しみや苦しみから解放され、夫と一緒に幸せでいるのだろうな。
そう思うと、私も温かい気持ちになる。

でももう当分は死別は経験しないことを切に願う。

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