最終(ミステリー)二人のれいこ-17

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会ったことのない君に

もう戻れない

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「またやっちゃった~」
 礼子は独り言を言いながらアパートへ走る。このままでは、遅れてしまう!
 礼子は部屋に入り、急いで着替えてしまう。そして、自転車に飛び乗った。
 玲子は一分、遅れてファミレスに着いた。
「お疲れ様ですっ!」
 いつもは余裕の玲子が息を切らして入ってきたことに、店長の三島は驚いていた。
「あら、慌てて……。ん? 蓮見さん、ホクロ、取った?」
 三島の言葉にはっとした。ホクロをつけ忘れてしまったのだ!
「あ! いえいえ。コンシーラーで隠してみたんですっ。分かりませんか? すごいなぁコンシーラーって、あははは……」玲子はそう言いながら口元を隠した。「い、急いで着替えてきますね!」
 玲子はロッカーに着くと、誰もいないのを確認して急いでホクロを書き足した。そしてその上からコンシーラーを塗りたくる。鏡を確認すると、なんとなく不自然ではあるが、良しとしよう。
 準備を終えた玲子は、よし、と気合を入れるとホールに出た。今日も忙しくなりそうだ。
 
 みずきは逮捕された。学長室に置いてあった機械からは毒が検出され、さらにそこから、みずきの指紋も検出されたようだ。
 意識不明だった幸次も意識が戻り、もう少しで退院もできるそうだ。吉本が、逐一礼子に報告してくれている。

 月曜日がやってきた。今日からまた、いつもと変わらぬ日常が始まる。
「おはよう!」由貴が礼子を見つけ、声をかける。
「今回はお手柄だったな!」
「何ってんの。ゆきちゃんにも色々手伝ってもらったおかげだよ。ありがとう」礼子は素直に言った。
「え! どうしたんだよ! お前が俺に、お礼なんか言うとは!」由貴は驚きすぎて、立ち止まってしまったほどだ。
「はぁ? なんで? 私、ちゃんとゆきちゃんにはお礼だってしてたよねぇ? 講義の代返してくれた時とか」
「待てよ! お礼を言うのは当たり前だ。お前のありがとうはいつも軽いんだよ。サンキューってさ! ありがとう……ありがとう。そうだ。それこそ感謝だ」由貴は一人、うんうん、と頷いている。
「あ、今週末、林さんが一緒にご飯行こうって言ってたぞ。……三人で」
「え? なんで三人? せっかくだから吉本さんも呼ぼうよ」
「なんでさ。林さん、きっと俺のことだって邪魔なんだぜ」
「え、なんで?」
「それは……いや、こういうのは、黙っておいた方がいいのか……」由貴は一人、ごにょごにょ言っている。
「とにかく、吉本さんと四人で打ち上げしよう! うん、それがいい! 林さんに伝えておいてよ!」礼子はそう言うと、講義の行われる建物に向かって駆け出した。
「あ! そうだ! じゃあさ、玲子さんとこで打ち上げやろうよ!」
「礼子さん?」礼子は立ち止まる。そして気づいた。「玲子さんって蓮見玲子……ひっ、ダメダメ! それはなしっ!」礼子がかたくなに拒否する。
「なんでだよぉ! お前、知り合いなんだろ?」
「知り合いじゃないって言ったでしょう! 全然違う!」
 そう言い合いしているそばを、依子が通り過ぎる。蓮見玲子、というワードに反応し、チラッと礼子たちを見たが、そのまま行ってしまった。実はさっきまで、玲子として情報学部の講義を受けていたのである。依子は講義が終わった後も友達と話していて、やっと出てきたのだろう。
 礼子は依子の後姿を見てふぅ、と息を吐くと、くるりと回転して由貴の方を振り返った。
「回らないお寿司屋さん、連れて行ってもらおうよ!」
「お! それ、いいねぇ! そうだよな、それくらいしてもらってもいいよな! 俺たち、頑張ったもんなぁ!」由貴が嬉しそうである。
「そうだよぉ! ね、そうしよう!」礼子は上機嫌である。上機嫌は寿司のおかげではなく、玲子のファミレスに行かなくなったことが一番の要因ではあるが。
 礼子たちはそして、講義に向かう。これからまた、いつもの呪文を話しているような先生の講義が始まるのだ。

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