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『緊急投稿』【早稲田大学高等学院・中学部2020年度入試算数第4問】出題ミス?

原則、毎週金曜日に投稿している中学入試算数シリーズですが、今日は緊急で早稲田大学高等学院・中学部の2020年度入試算数第4問を取り上げたいと思います。おそらく出題ミスだと思います。時期的には今更ですが。

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早稲田大学高等学院
2007年7月18日、koutakkkkk撮影、Wikipediaより

[問題] 机の上に,図のような形の折り紙が1枚置かれています。左側の三角形 ABF と,右側の三角形 CDE は互いに合同な二等辺三角形であり,四角形 BCEF は正方形でその1辺の長さは 5cm よりも長く 10cm よりも短いとします。AG と BF, DH と CE はそれぞれ垂直(すいちょく)で,AG = DH = 5cm です。

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折り紙の左右の三角形 ABF, CDE の部分を,それぞれ BF, CE のところで折って正方形 BCEF の上に重ねる作業をします。ただし,折り紙の厚みは考えず,折るときに折り目以外の部分はまがったりしないものとします。また,円周率は 3.14 とします。次の問いに答えなさい。

(1) 折り紙を,BF を折り目として折って,左側の三角形を正方形 BCEF の上に重ねました。このとき,点 A が動いた長さを求めなさい。

(2) 折り紙を,BF と CE を折り目として,それぞれを同時に一定の同じ速さで折り始めると,机から 2.5cm の高さのところで左側の三角形の点 A と右側の三角形の点 D がぶつかったので,そこで折るのをやめました。このとき,折り始めてからぶつかるまでに点 A が動いた長さを求め,その値を仮分数で答えなさい。

次に,折り紙を折って三角形の部分を正方形の上に重ねた後,折る前の状態にもどすまでの作業を「往復」と呼ぶことにします。往復は,左右同時に始めて2つの三角形が接触(せっしょく)するまでくりかえし,接触したところで往復をやめます。ただし,左右の三角形はそれぞれ一定の速さで動き,左側の三角形は右側の三角形よりも速く動くものとします。また,接触とは,左右の折り紙が,重なったりぶつかったりすることをいいます。次の問いに答えなさい。

(3) 1回往復するのに,左側の三角形は4秒,右側の三角形は12秒かかるものとします。このとき,2つの三角形が同時に往復を始めてから接触してとまるまでに何秒かかるか,式や考え方を書いて求めなさい。

(4) 1回往復するのに,左の三角形は4秒かかる速さのままで,右側の三角形の速さだけを変えて,折る前の状態から同時に往復を始めました。このとき,往復を開始してから16秒以内に左右の三角形が同時に再び折る前の状態にもどることが1回だけあり,その後も接触せずに往復を続けました。このような2つの三角形について,1回往復当たりの速さの比を,もっとも簡単な整数の比で表しなさい。[問題終]

この問題は一見すると立体図形のように見えるかもしれませんが、実際には平面図形です。直線 AGHDがあれば十分です。

(1) は単純な話で、点 A は G を中心として半円を描きますので、2 × 5 × 3.14 × (1/2) = 15.7cm となります。

(2) は、斜辺が5cm, 直角を挟む辺の1つが2.5cm の直角三角形ということで、正三角形を半分にした三角形となっています。したがって、点 A は G を中心として 150° 動いたことになります。したがって、2 × 5 × 3.14 × (5/6) = (157/6) cm となります。

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(3) は止まることがないと仮定したときに、6秒後にAは1往復半、Dは半往復動くので、ちょうど折りたたまれた状態になります。したがって、答えは6秒以下となります。

そして、2つの三角形が接触する可能性があるのは点 A と点 D がそれぞれ開始位置から 120~180° の範囲にいるときとなります。ですので、それぞれがこの範囲にいるときの時刻を求めると、A は (4/3)~(8/3)秒、(16/3)~6秒となります。一方、D は 4~6秒となります。

以上のことから、6秒後に接触してとまります。

(4) ですが、GH の長さに依存するため、そもそも問題不成立です。

仮に GH が 5cm より長く 10cm より短いどのような長さであったとしても という意味であったとすると、今度は解なしとなります。

おそらく、「以内」を「より短い時間」と解釈する必要があると思います。

以上の仮定を設けて初めて解が一意に定まり、2 : 1 となります。

まず、GHの長さで条件が最も厳しいのは限りなく 5cm に近い値のときで、このとき、左右の三角形が 120~180° の範囲内に同時にいるときに接触が起こります。ただし、同時に 120° にいる場合のみ接触が起こりません。

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さて、左側の三角形が 120° から出て、再び、120° に到達するのにかかる時間は 8/3 秒です。(そして、4/3秒の間範囲にとどまる。)

したがって、右側の三角形は1回の往復を4秒より大きく、8秒以下で行う必要があります。

その上で「往復を開始してから16秒以内に左右の三角形が同時に再び折る前の状態に戻ることが1回だけあり」という条件を満たさなければならないので、右側の三角形が1回往復するのにかかる時間は 6秒、8秒のいずれかになります。

あとは (3) と同じ方法で 120~180° の範囲にいる時刻について確認を行います。

[右側の三角形が6秒で1往復するとき] 0~12秒の間に A が 120~180° の範囲にいるのは (4/3)~(8/3)秒、(16/3)~(20/3)秒、(28/3)~(32/3)秒の3回、B が 120~180° の範囲にいるのは 2~4秒、8~10秒の2回となります。このうち、2~8/3秒と28/3~10秒で重なりがあるため、接触があります。 

[右側の三角形が8秒で1往復するとき] 0~8秒の間に A が 120~180° の範囲にいるのは (4/3)~(8/3)秒、(16/3)~(20/3)秒の2回、B が 120~180° の範囲にいるのは (8/3)~(16/3)秒の1回となります。この場合はぎりぎりで接触がありません。

以上のことから右側の三角形は8秒で1往復するので、比で求めると 4 : 8 = 1 : 2 となります。

以上で解答は終わりです。

ちなみに、右側の三角形が1回の往復に16秒かかる場合は、 120~180° の範囲に (16/3) 秒間いることになるため、GH間の長さが5cmに近いときには必ず左右の三角形が接触します。

実際、右側の三角形は (16/3)~(32/3)秒の間に120~180° の範囲にいるため、左側の三角形が 120~180° の範囲にいる (16/3)~(20/3)秒の間で接触します。ただし、GH間の長さが 10cm に近いと接触しません。

ちなみに、GH間の長さが 10cm に近い場合は 右側の三角形が 6 秒で 1往復する場合も接触しません。したがって、解が複数存在します。(しかし、解答欄は1つのみ。)

問題作成の苦労は想像に難くないですが、受験生には受験生の苦労があります。彼らの人生の一部がかかっていることも確かです。

受験を行う側には受験の公平性の観点からすべての問題に対して解答もしくは採点基準を公表する義務があり、疑問のある場合には説明を行う義務があると考えています。

大学受験ではそのような傾向にあり、実際にいくつもの大学で記者会見が行われています。

仮に今回の件で何も発表がないならば、受験生およびその親から提訴されたとしても文句は言えないでしょう。そのくらい不備のある問題です。

以上のことから、早稲田大学高等学院・中学部がこの問題に対して正しく対応されることを強く望みます。

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