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【灘中学校2020年度入試(1日目)算数第1問】計算にもセンスがある

今回は灘中学校2020年度入試(1日目)の算数第1問を取り上げたいと思います。単なる計算問題ですが、私が取り上げるからには理由があります。

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灘中学校・高等学校
2011年8月28日、Saoyagi2撮影、Wikipediaより

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なぜこんな単純な計算問題を取り上げたのか?

実は Youtube でこの問題の解法をやっていたのですが、その解き方にセンスのかけらもなかったからです。

Youtube に上げているからには少なからず「自分は算数・数学が出来る」という自負はあるでしょう。私もそれなりにあります。

ですが、今回の方に限らず、センスのない解法を堂々と披露(ひろう)されてる方は案外多かったりします。

ということで、センスのある解き方を書いてみたいと思ったわけです。

ちなみに、時系列(じけいれつ)的には Youtube を見る前に既に一度この問題を解いています。その上で Youtube を見て「はぁ?」となって現在に至(いた)っています。今回書くのは思考(しこう)を含めた初見で解いた時の再現です。

(ここのnoteの元々の動機も2019年度の女子学院中学校入試第6問に対する解法でまともなものがなかったこと。この問題は最上級に美しい問題なので、解法が美しくないと台無しです。)

まず最初に

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とするのは基本です。25 を見て 4 を思い浮かべるのと同じように、125を見て 8 を思い浮かべるのは基本だと思って下さい。25×4=100 と 125×8=1000 は知ってて損はありません。

まあ今回は分数の問題なので、仮に知らなかったとしても 125/100000 として約分することでいやでも出てくるでしょう。

問題はここから。

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ここがポイントです。この一行に計算のセンスの全てがあります。

先に 32 + (48/101) を計算するのは全くセンスがありません。Youtuber がおかしたミスはこれ。

この問題を見たときに、分母の 2020 と 101 に注目すべきです。どちらも 101 という巨大な素因数を抱えています。こんな数が出てくるのには意図があると見るのがまともな感覚です。

要するにここを処理したときに 101 で約分できる可能性を最初から考えるべきです。

もし 101 で約分できないならどうなるか?そのときになって初めて 4/100 の方も通分すればいいのです。最初から手を出して余計なことをしてはいけない

だいたい、32 も 48 も 8 の倍数です。おのおの約分ができるのですから、数を小さくしてから計算すべきです(※)。そのくらいのことはしておくべき。大きい数を計算するより小さい数を計算する方がミスが少なくてすみます。

ちなみに、4/100 と 6/10100 はどちらも既約分数ではないですが、これはこのままで大丈夫です。約分のし忘れではありません。私は初見でこのようにしました。

理由は次の通り。

6/10100 の方は先ほど話した通り、19/2020 と先に計算して 101 で約分することを想定しているからです。通分すると 10100 になるのが分かっていて約分するのは無駄です。

4/100 の方は、6/10100 と 19/2020 の計算をしたときに可能性が2つしかなく、一つは 101 で約分されて分母が 100 になる場合、もう一つは約分できなくて 10100 になる場合。これだけです。

どちらの場合も 1/25 にするよりも 4/100 のままの方が都合がいいのです。

ちなみに、6/10100 と 19/2020 の計算で分母が 100 か 10100 になるというのは次の理由からです。

6/10100 は 2 で約分できるけど 5 では約分できない。19/2020 = 95/10100 は 5 で約分できるけど 2 で約分できない。

よって、計算したあとの分子は 2 の倍数にも 5 の倍数にもならないので、2 や 5 で約分できる可能性はありません。約分できる可能性が 101 しかないので、分母は 100 か 10100 になります。

上記の一行の中でこれだけの判断を一瞬で行って処理しています。慣れればどうということはありません。

で、今回は読み通りに 6/10100 と 19/2020 の計算を先に行うことで非常に簡単に計算できました。(説明用に式番号を入れましたが不要でした。)

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ということで、答えは 1/20 となります。

問題で出てきた数字の割に、大きな数の計算をほとんど行っていないことに注意してください。暗算が得意な子であれば暗算できるレベルです。

(※) 実際に計算してみると、4/100 と 6/10100 を先に足した方が簡単だったかもしれません。計算すると、404/10100 + 6/10100 = 410/10100 = 82/2020 となり、ここで 19/2020 を移項すると 101/2020 = 1/20 と簡単に計算できます。

「しょせんは計算問題なんだからそこまでしなくても解けるでしょ」という意見もあるかもしれません。それは確かです。

ですが、入試は時間とミスとの戦いです。いらないリスクを取るべきではない。

さらに言えば、こういう工夫の仕方を常に考えて行う習慣は、そののちの数学の計算でも役に立ちます。数学での計算は問題によっては工夫の仕方で30分以上の違いを生みます。たかが計算、されど計算なのです。

そもそも私は時間をかけて手順を考えながら計算をしたわけではありません。それでは本末転倒です。

101で約分出来たら数が小さくなって楽だな、という感覚にしたがって、普通の計算の流れでこういう解き方をしているだけです。

実際、検証してみると (※) にある通りにもっと簡単な計算手順があったかもしれない。それでも、今回の方法でさえ普通に計算して瞬殺でした。ほぼ暗算レベルなので。

noteの中で「いろいろな解法を考えてみて」という発言をことあるごとにしていますが、そういう習慣が算数・数学のレベルを格段に上げるのは間違いありません。

計算問題でさえ工夫の余地があるのです。まして、文章題で解き方を検討することに損など一つもないはずです。

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