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【埼玉大学2013年度前期入試数学第?問】√2はどうやって求めるの?

今回は2013年埼玉大学 前期入試 理系 数学 第?問(改)です。数列の問題です。(問題番号が分からなくてごめんなさい。)

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埼玉大学、2007年5月20日、Rabs003撮影、Wikipediaより

a(1)=2, a(n+1)=a(n)/2 + 1/a(n) (n=1,2,3,...) で定義される数列 {a(n)} の極限  lim_{n→+∞} a(n) を求めよ.

オリジナルの問題は小問に分かれていますが、ここでは最後の小問のみを記載しています。実際の小問は後で与えますが、まずは導きたい結論のみを提示したというわけです。

(ところで、上記では an の n を添え字にできないので、a(n)と表記しています。また、極限の表記も苦肉の策です。)

今回、この問題を取り上げた理由は2つ。誘導問題がない状態でこの問題をどのように解くのか、何を手掛かりにするのかを述べること。もう1つはこの問題の背景は何かを明らかにすること。

では早速解いてみますが、この手の問題が与えられたらまずは数列の各項を求めてみます。
a(1) = 2
a(2) = 2/2 + 1/2 = 3/2 = 1.5
a(3) = 3/4 + 2/3 = 17/12 = 1.4166...
a(4) = 17/24 + 12/17 = 577/408 = 1.414215...
この辺まで来るとさすがに √2 かなと思うわけです。でもホント?

というわけで、a(n+1) -√2 を計算してみます。

a(n+1) - √2 = {(a(n))^2  - 2√2 a(n) + 2 } / 2a(n) = (a(n) - √2)^2 / 2a(n)

ほら。いい感じでしょ?

もし a(n+1) - √2 = c (a(n) - √2) (ただし、c は定数で 0 < c < 1 )という形であれば 、a(n) - √2 = (2-√2) c^{n-1} → 0 となるので話は簡単なのですが、今回はもう少し複雑なので、等比数列を意識しつつ、はさみうちの原理を使います。目標としては

0 ≦ a(n+1) - √2 ≦ c (a(n) - √2)

を示します。こうすれば、0 ≦ a(n) - √2 ≦ (2-√2) c^{n-1}→0 となるので、a(n) → √2 を示すことができます。そうすると、証明すべきは2点。全ての自然数 n に対して、
(1) a(n) ≧ √2
(2) (a(n) - √2) / a(n) ≦ 1

(2) は、(1) が成立すれば、自動的に成立します:(a(n) - √2) / a(n) ≦ a(n) / a(n) =1。では、(1) は成立するか?

これは n に関する数学的帰納法で証明できます。n=1 のときは a(1) = 2 > √2。n ≧ 1 のときに成立すると仮定すると、(a(n) - √2)^2 ≧ 0 かつ a(n) ≧ √2 > 0 より a(n+1) - √2 = (a(n) - √2)^2 / 2a(n) ≧ 0 であるので、a(n+1) ≧ √2。よって、全ての自然数 n に対して a(n) ≧ √2。

以上のことから、0 ≦ a(n+1) - √2 ≦ (a(n) - √2) / 2、すなわち、0 ≦ a(n) - √2 ≦ (2 - √2) / 2^{n-1} → 0 が成り立つので、lim_{n→+∞} a(n) = √2 が求まります。

埼玉大学の入試では、b(n) = log (a(n) - √2) / (a(n) + √2) として、b(n) についての漸化式b(n+1) = 2b(n) を求めさせ、そこから b(n) と a(n) の一般項を求め、数列 {a(n)} の極限を求めています。

さて、この問題、背景には何があるのでしょうか?

問題の背景:ニュートン法

実は、今回の問題には f(x) = 0 を満たす x を求める数値計算による反復法の1つ、ニュートン法が使われています。

ニュートン法についての説明は Wikipedia に譲ることにしますが、結果だけを書くとニュートン法の反復式は a(n+1) = a(n) - f(a(n)) / f'(a(n)) という形をしています。今回の漸化式では f(x) = x^2 - 2 としているので、初項 a(1) の違いによって数列 a(n) が -√2 に収束することもあります。試しに a(1) = -1 としてみるといいでしょう。

この数列の面白いところは、a(n) は決して √2 そのものにはならない点です。そもそも、全ての自然数 n に対して a(n) は有理数です。決して無理数にはなりません。

しかし、√2 に決してならないけれども、有理数の四則演算だけで √2 に限りなく近づいていくところに、今回の数列の面白さがあると思います。

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