見出し画像

【女子学院中学校2019年度入試算数第6問】問題読解力の大切さ

初回はnote.com を利用しようと思ったきっかけの問題とその解法を書こうと思います。女子学院中学校2019年入試の算数第6問。

画像4

女子学院中学校・高等学校、
2009年11月23日、IZUMI SAKAI撮影、Wikipediaより

今回の問題は多くの塾で「この問題に入試で出くわしたら捨てなさい。」と評価されています。その意見には私も同意です。この問題を速攻で捨てることができた受験生は優秀です。手を付けたら時間を浪費しかねません。

ですが、それでも塾は解法を考える必要があります。女子学院を受験しようと考えている生徒から当然のように質問されるからです。ですが、ネット上で公開されている解答が残念すぎて仕方がない。出題者の意図をまるで理解していません。

実は、この問題はあることに気が付くと瞬殺できます。計算は非常に単純。ただし、そのことに気が付くまでに(普通は)時間を要する。そういう問題。算数の能力が時間に跳ね返るという点では女子学院らしい問題と言えます。

さて、問題は以下の通りです。

[問題] クラス対抗の球技会が行われます。バスケットボール,ドッジボール,サッカー,卓球の4つの競技で,1人1つまたは2つの競技に出場します。あるクラスの生徒の出場は次の通りです。
(ア) サッカーと卓球の両方に出場する生徒はいません。
(イ) 2つに出場する生徒は,9人です。
(ウ) バスケットボールとドッジボールの両方に出場する生徒の人数はバスケットボールに出場する人数の1/5,ドッジボールに出場する人数の1/4です。
(エ) バスケットボールに出場しない生徒は,20人です。
(オ) バスケットボール,サッカー,卓球のうち、2つに出場する生徒は,ドッジボールのみに出場する生徒より3人少ないです。
バスケットボールとドッジボールの両方に出場する生徒は (A) 人,
サッカーまたは卓球に出場する生徒は (B) 人,
このクラスの人数は (C) 人です。

[問題終わり]

どうでしょう?

最初に見たときの私の感想は「よくこんな問題出したな」です。ハッキリ言って、ほとんどの受験生にとって情報量が多すぎて問題を処理できず、大半が手を出せず、または、出さずに0点だと思います。手を付けた受験生を地獄に送るための問題です。

私も初めは取っかかりがつかめなかったのですが、ベン図を書きながら数分眺めるとあることに気が付きました。

「サッカーと卓球を区別する必要ないじゃん!」

実はこの問題の中でサッカーと卓球が単独(たんどく)で登場することがありません。さらに、両方に出場する生徒もいません。ということは、「サッ卓」という1つの競技にまとめることができ、競技を3つにすることができます。ベン図も書きやすくなります。それがこの問題の1つ目のポイントです。(このアイデアを明示している解答は塾サイトにはありませんでした。)

あとは(オ)をどう使うかです。これはベン図上での人数の置きかえに使います。ここからはベン図を書くのが良いと思います。

画像3

上図で、バスケットボール(ベン図のB)は赤い線で、ドッジボール(ベン図のD)は黄緑の線で、サッ卓(ST)は青の線で描かれています。そして、(オ)は水色とピンクの人数の置きかえに使います。水色の人数をピンクの人数に置きかえるときは人数が3人増え、逆のときは3人減る、と考えます。これが2つ目のポイントです。

まず(イ)に(オ)の置きかえを使ってみます。

画像2

2つに出場する生徒は上手の水色と橙色にあたります。これが9人。このうち、水色の部分をピンクに置きかえます。このとき3人増えます。橙色とピンクを合計するとドッジボールに出場する生徒全員になります。これが 9 + 3 = 12人となるので、バスケットボールとドッジボールの両方に出場する生徒(A)はその 1/4 ということで、12/4 = 3人となります。同時に、バスケットボールの人数も 3×5 = 15人と出ます。

続いて(エ)に(オ)の置きかえを使ってみます。

画像3

バスケットボールに出場しない生徒は上図の青(STから水色を抜いた部分)とピンクにあたります。このうち、ピンクの部分を水色に置きかえます。このとき、3人減ります。青と水色の部分を合計するとサッ卓(サッカーまたは卓球)に出場する生徒全員になり、これが (B) 20 - 3 = 17人 となります。

クラスの生徒の人数(C)は、3つの競技それぞれの人数の合計から 9 を引けばよいので、12 + 15 + 17 - 9 = 35人です。

見ての通り、計算そのものは非常に単純です。しかも、解き方も「説明を聞けば」さほど難しくありません。少なくとも女子学院の受験生にとって。

しかし、この解法はなかなか思いうかばない

この差を埋めるのが問題読解力(どっかいりょく)です。問題読解力は、ただ問題文を文章として理解するだけでなく、そこに眠っている手がかりを引き出すことを含んでいます。いわゆる観察眼(かんさつがん)です。

この問題では1つ目のポイントが最も大きなカギで、余分な情報を捨てることによって問題を簡単にし、答えが導かれています。

問題文から何を読み取るか?

入試の中で問題の意図を正確にくみ取るのは難しいですが、過去問を解いたり、模試の見直しをするときに、その問題から何を問われているかを考えると、算数・数学のレベルが格段(かくだん)に上がると思います。ちょっと意識してみては?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?