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【武蔵中学校2020年度入試算数第3問】いろいろと試す勇気

今回は武蔵中学校2020年入試の算数第3問を取り上げたいと思います。難(むずか)しくはないですが、パズル要素の強い問題です。別の言い方をすると、きれいなやり方のない問題。

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(武蔵高等学校中学校門、2009年7月10日Wmnnmm撮影、Wikipediaより)

この問題で重要なことは問題文にある球①~⑤を思い浮かべて実際(じっさい)に遊んでみることです。要するに

「試験中に遊ぶゆとりがあなたにありますか?」

と問われています。ちょっと遊んでみるといろんなことがわかってきます。それを書きなさい、というわけです。小学生のメンタルを試すとは武蔵中学校も趣味(しゅみ)が悪い。

ですが、中学受験で塾に通っていた当時の自分の子どもに私が何度も伝えたことを皆さんにも伝えておきます。

入試はできた子を合格させる試験じゃないよ。できなかった子を落とすための試験だから。

受験生を不合格にするために学校は何でもしてきます。難問を先にもってきたり、出題の傾向(けいこう)を変えたり。それが入試です。

[問題] 5 種類の球①, ②, ③, ④, ⑤が2個ずつあります.このうち 5 個を A の箱に,残りの 5 個を B の箱に入れます.ここで,箱の中に入っているたまに書かれた数の積の一の位の数を,その箱の点数とします.例えば,図1(下図)の場合の点数は,A が 0 点,B が 6 点です.次の各問に答えなさい.

(1) A, B のどちらにも⑤が入っているとき,少なくとも 1 つの箱の点数は 0 点となります.その理由を答えなさい.

(2) A は B より点数が大きく,B が 0 点でないとき,A, B それぞれの点数として,考えられる全ての場合を答えなさい.

(3) 最初,A が 5 点だったそうです.次にそれぞれの箱から 1 個ずつ球をとり出し,箱の中に残った 4 個の球で同じように点数を考えます.
(ア) A の点数が 5 点より大きくなったとき,最初に A に入っていた 5 個の球とそこからとり出した 1 個の球を解答欄(らん)に書きなさい.
(イ) B が A より点数が大きくなったとき,最初に B に入っていた 5 個の球とそこからとり出した 1 個の球として,考えられるすべての場合を解答欄に書きなさい.

[問題終わり]

この問題は正直なところ難しくはないですが、他の問題で時間を使ってしまうと、この問題で点数を取れないと思います。その意味で差がつく問題です。かと言って、先に手をつけるのが怖(こわ)くなる問題でもあります。時間を使ってしまう危険性を感じるので。

(1) は、図1の A を見ればわかりますが、偶数と⑤が一緒(いっしょ)になったら必ず 0 点になります。それだけです。もし私が答えを書くと完全に証明になってしまって小学生っぽくありません。がんばって小学生っぽく書くと

「A か B の箱のどちらかには必ず偶数が入りますが、偶数が入った箱は、他にどの球が入ったとしても、偶数×5×残りの数の積の一の位の数は必ず 0 となり、点数が 0 になるから。」

でしょうか。「偶数」の部分は「球②」でもいいのですが、(2) のためにあえて偶数としました。

(2) は、A も B も 0 点ではないので、(1) の答えから ⑤ の入っている箱に偶数が入ってはいけません。したがって、一方の箱には 2 個の⑤ と他の奇数が3 個はいります。そのような場合は2通りあって、
・一方の箱が①が2個、③が1個、⑤が2個で5点、残りの箱は②が2個、③が1個、④が2個で2点。
・一方の箱が①が1個、③が2個、⑤が2個で5点、残りの箱は①が1個、②が2個、④が2個で4点。
A の方が点数が大きいので、(A, B) = (5, 2) または (5, 4) の場合が考えられます。

(この(A, B)のような書き方をして小学生は分かるのかな?見たまんまなのですが。)

(3) の (ア)ですが、これも少々遊びが必要になるかもしれません。まず (1) から「A が 5 点であるためには、 A に⑤が入っていて、残りの球は奇数」が分かっています。そして、少し遊ぶと「A に⑤が2個入っていると、どの球をとり出しても 5 点のまま」なのが分かります。

したがって、A は①が2個、③が2個、⑤が1個から⑤をとり出した場合のみ、点数が5から9と大きくなります。

(3) の (イ)ですが、2つの場合に分けて考えます。

まず、A に⑤が1個しかない場合を考えます。この場合、A は ①が2個、③が2個、⑤が1個の場合しか考えられず、1個をとり出したときの A の点数は 5 または 9 になります。これは (ア) で確かめています。このとき、B については (1) から 最初の点数は 0 で、1個取り出して 0 でなくなるためには⑤をとり出すしかありません。しかし、このときの点数は 4 にしかならないので、この場合はダメです。

では、A に ⑤ が 2 個ある場合を考えます。このとき、(ア) で説明したように、どの球をとり出しても 5点のままです。では、B の方はどうでしょう?

2つの場合があります。
①が1個、②が2個、④が2個の場合。最初は4点で、①をとり出しても4点のまま、②をとり出すと2点、④を取り出すと6点となります。
②が2個、③が1個、④が2個の場合。最初は2点で、②をとり出すと6点、③を取り出すと4点、④を取り出すと8点となります。

以上、太字で書いた 3 つの場合が考えられることになります。

多分、この問題は「時間を使えば」武蔵中学校の受験生なら解けると思います。ですが、入試という限られた時間の中で解こうとするので、あわててしまって解けなくなります。

気持ちの強さが結果に影響(えいきょう)する入試ではこういう問題がときどき見られます。焦(あせ)らせて受験生を落とす。

そのような問題に負けないよう、うそでもいいから「自分ができなければ他の人もできない」と思えるよう、準備をして入試に向かってください。

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