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【灘中学校2020年度入試(1日目)算数第2~4問】手際の良さが求められる前半戦

良問というのはなかなかないもので、毎週問題を取り上げているとネタが尽(つ)きてくるものです。苦笑

そこで中学校入試の問題をまるまる取り上げて、試験時間全体の中での位置づけを考えてみたいと思います。まずは灘中学校1日目の算数。

前回の第1問の他にも何問か取り上げていますが、今回は第2~4問を取り上げたいと思います。

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灘中学校・高等学校
2011年8月28日、Saoyagi2撮影、Wikipediaより

[問題2] 太郎君は 1000円を持ちコンビニへ商品 A を買いに行きました。コンビニの店内には飲食可能な場所があります。太郎君ははじめ,A を 5個買って店内で食べようと思っていましたが,店員に「持ち帰るなら消費税 8% だけど,店内で食べるなら消費税は 10% だから 4個しか買えないよ」と言われました。そこで,太郎君は 4個だけ店内で食べ,1個を持ち帰ることにして,全部で 5個買うことができました。A の消費税抜(ぬ)きの値段は 1個につき (   ) 円です。ただし,この値段には,1円未満の端数(はすう)はありません。また,消費税は,持ち帰る商品の合計金額の 8% と,店内で食べる商品の合計金額の 10% の合計から,1円未満を切り捨てた金額とします。[問題終わり]

さてこの問題、整理すると次の通りです。ある商品を5個買うのに
(条件1) 消費税 8% なら 1000円以下
(条件2) 消費税 10% なら 1000円より高い
(条件3) 4個を消費税 10%、残り1個を消費税 8% なら1000円以下

ということで、条件3 があるので条件1 は不要です。いらない情報は捨てることも入試では重要。そこで、条件2を満たす最低の値段を調べます。

消費税 10% で 5個の値段が1000円より高いということで、1000 ÷ 1.1 = 909.090... ですので、これを超える5の倍数の最小値は 910 円となります。ちなみにこのとき、910 × 1.1 = 1001円で、1000円をたったの 1円しか超えていません。ということで、これを 5 で割って 1個につき 182円が正解となります。

(消費税を 10% から 8% にすると 1001円未満となるため、切り捨てを行うと 1000円以下となる。)

答えしか聞いていない問題ならば、これ以上のことを行うのは時間の無駄(むだ)で、すぐに次の問題へ進みましょう。

ですが、この note はあくまで解説なので、きちんと条件を確かめておきます。

条件3 ですが、910 × 1.1 - 182 × 0.02 = 1001 - 3.64 = 997.36 となり、997円ですので満たしています。仮に 183 円だとどうなるかというと、997 + 5 = 1002 以上になるため、条件3 を満たさなくなります。したがって、答えは 182 円以外に存在しません。

[問題3] 下の図(原文では右の図)のように,4地点 A, B, C, D を結ぶ直線の道路があります。B と C は 84m,C と D は 1260m 離(はな)れています。

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最初,太郎さんは A,次郎さんは C にいます。2人が B に向かって同時に歩き始めると,同時に B に到着(とうちゃく)します。また,最初の状態から 2人が D に向かって同時に歩き始めると,同時に D に到着します。このとき,A と B は (   )m 離れています。ただし,B に向かうときと,D に向かうときとで太郎さんの歩く速さは同じです。また,次郎さんも,B に向かうときと,D に向かうときで歩く速さは同じです。[問題終わり]

この問題は次のように数字を入れたら終わりです。

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太郎さんと次郎さんが歩いた距離(きょり)を考えると、AB : AD = BC : CD = 84 : 1260 が出てきます。したがって、AB : BD = 84 : (1260 - 84) = 84 : 1176 = 1 : 14 が出てきますが、BD = 84 + 1260 = 1344m ですので、AB = 1344 ÷ 14 = 96m となります。

[問題4] ある工場では,毎日休みなく製品を作っています。一日あたりに作る製品の個数は,月曜日から金曜日までが同じで,土曜日は金曜日より少なく,日曜日は土曜日と同じです。ある年,この工場で 6月に作った製品は 372個,9月に作った製品は366個でした。この年の,6月1日は ( ア ) 曜日で,7月に作った製品は ( イ ) 個でした。[問題終わり]

この問題はとにかく月初と月末を書いてみるといいでしょう。

 1  2  3  4  5  6  7
(6月,3週間)
29 30  1  2  3  4  5
(7月,3週間)
27 28 29 30 31  1  2
(8月,3週間)
31  1  2  3  4  5  6
(9月,3週間)
28 29 30  1  2  3  4

これを見て土日がどこにくると6月が9月より少なくなるかを考えればいいだけです。

すると、6月2, 3日もしくは6月3, 4日が土日になると1日だけ土日が少なくなります(それ以外は土日が同数か6月が1日多くなります)。

ということで、この時点で土日は平日より製品の作る個数が 372 - 366 = 6個少ないことが分かります。

あとは、6月2, 3日と 6月3, 4日では土日の回数がそれぞれ 9回と 8回となって回数が違うので、どちらが 372個という個数を実現できるのかを考えます。

これは 372 + 6 × (6月の土日の回数) が 30 で割り切れるかどうかで判断できます。この数は平日1日当たりの製品を作る個数になります。

ここで両方の数を入れて割り算を行ってもいいですが、下1桁だけを計算して 10で割り切れるかを見れば一目瞭然(いちもくりょうぜん)。土日は 8回となります。

ということで、6月3日が土曜日と決まりましたので、(ア) 6月1日は木曜日となります。

さて、7月に作った製品の個数を求めるためには、平日の1日あたりに作った製品の個数を求める必要があります。上の式で計算すると (372 + 6 × 8) ÷ 30 = 420 ÷ 30 = 14個となります。土日は 14 - 6 = 8個です。

さて、7月の土日は何回かというと,7月1日が土曜日のために10回となります。ということで、(イ) 14 × (31-10) + 8 × 10 = 294 + 80 = 374個となります。

前回の計算問題を含めて最初の 4問は難しい問題ではないですが、ちょっと手間(てま)取ると時間を消費(しょうひ)してしまうために気をつけたいところです。

入試ではできるできないも大切ですが、いかに時間をかけないで正確に問題を解くかも大切です。

特にこういう、落としてはいけない問題を短時間で解くことで、勝負どころの後半の問題に少しでも多くの時間を使えるようすることが重要となります。

難しい問題が解けるようになることと同じように、やさしい問題を短時間で解けるようになる練習も忘れないで下さい。

ちなみに、第5問は以下で取り上げていますが、この問題はできるできないの意味でも、時間の意味でも、差のつきそうな問題です。できる子だと最初の 4問と同じくらいの時間で解くだろうと予想しています。

これで1日目の前半(1枚目)が終了。次回は第6問と第7問を解説したいと思います。

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