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【麻布中学校2020年度入試算数第4問】平均値と面積

さて、今回は麻布中学校2020年入試算数第4問を扱おうと思います。この問題は麻布中学校の入試問題としては易しいです。典型的な食塩水の問題。合格者なら出来て当然。そういう問題です。

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(麻布中学校・高等学校、2008年5月11日、SANDO撮影、Wikipediaより)

出来て当然とは言え、中学生ならば連立方程式を立てて解く普通の問題も、中学入試だとそうは問屋が卸さない。特有の解法があります。

まずは準備のために、平均のお話からしましょう。

平均と仮平均

A, B, C, D, E の5人がいます。算数のテストの点数はそれぞれ 80, 60, 90, 70, 50 でした。5人の算数のテストの平均点はいくらでしょうか?

答えは (80+60+90+70+50)/5 = 350/5 = 70点 です。別に難しくありません。これを図で書いてみます。

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上図は縦軸が点数、横軸は人(数)となりますが、棒グラフの各幅を1と見なすと、点数は各棒の面積に対応します。5人の平均点は水色の長方形で表されていて、平均とは凸凹した棒を平らにならしたときの高さに相当します。このとき、平均を表す長方形の面積と5つの棒の面積の合計は等しくなります。

ここまでは大した話ではありません。

次に、仮平均を登場させます。仮平均とは、名前の通り仮の平均、平均を「適当に予想した」値なので、実際には平均とは何の関係もありません。全く違う値で構わないです。

では仮平均の点数を60としてみます。このとき、平均点はどのように見えるでしょうか?

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本当は負の数が出てくるので中学の範囲になってしまいますが、ごまかすために苦し紛れに上右図で 10' という数字を使っています。これは「下に10」と思って下さい。

右図は適当に決めた「仮平均」からのずれをグラフにしています。例えば A は算数のテストが80点だったので、80-60=20で、ずれは20となっています。Bは0、Cは30、Dは10。ここまではいいのですが、Eについては仮平均より 10点低いので、下に10のグラフを書いています。

このグラフで平均を取るときは、上に出ている面積の合計と下に出ている面積の合計を計算して、値の大きい方から小さい方を引きます。今回の場合は、上に60、下に10なので、60から10を引いて50となります。これを5人で割ると10となります。

先ほどの(上に出ている面積と下に出ている面積の)引き算のとき、上の方が大きかったので、仮平均より実際の平均は上に10、要するに10点高いことがわかります。もし下の方が大きい場合は仮平均から引くことになります。

ということは、もし仮平均が本当の平均である場合は、上に出ている面積の合計と下に出ている面積の合計が等しいことになります。

本題:麻布中学校2020年入試算数第4問

さて、ここからが本題です。

[問題] 空の容器 X と,食塩水の入った容器 A, B があり,容器 A, B にはそれぞれの食塩水の濃さが表示されたラベルが張られています.ただし,食塩水の濃さとは,食塩水の重さに対する食塩の重さの割合のことです.

たかしさんは,次の作業1を行いました.

作業1 容器 A から 120g, 容器 B から 180g の食塩水を取り出して,容器 X に入れて混ぜる.

このとき,ラベルの表示をもとに考えると,濃さが 7% の食塩水ができるはずでした.しかし,容器 A に入っている食塩水の濃さは,ラベルの表示よりも 3% 低いことがわかりました.容器 B に入っている食塩水の濃さはラベルの表示通りだったので,たかしさんは,次の作業2を行いました.

作業2 容器 A からさらに 200g の食塩水を取り出して,容器 X に入れて混ぜる.

この結果,容器 X には濃さが 7% の食塩水ができました.容器 A, B に入っている食塩水と,作業1のあとで容器 X にできた食塩水の濃さはそれぞれ何% ですか.

[問題終わり]

実は食塩水の問題は究極の平均値問題です。同じようにグラフで表現することができます。点数のときには横幅は全て1でしたが、今回は横幅に食塩水の重さを取ります。1gを幅1に取ったと思って下さい。

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縦軸は仮平均7%のときの濃度の差です。面積は食塩の重さに対応します(厳密には3% → 0.03 とすべきですが、全て100で割らずにそのままで扱うことにします)。

ここで、緑と赤の部分は容器 A の表記上の食塩水を、緑+青の部分は容器 A の本当の食塩水を、水色の部分は容器 B の食塩水を表しています。

ところで、容器 A の食塩水は 7% より濃く(=濃度が高く)、容器 B の食塩水は 7% より薄い(=濃度が低い)としてグラフを書いていますが、これは問題文から明らかです。そこを悩んではいけません。

まず、容器 A の食塩水は表記より薄かったため、作業1の段階で 7% より薄い食塩水が出来ます。作業2では 7% より薄い食塩水に容器 A の食塩水を加えて 7% にしているので、容器 A は 7% より濃くなければ実現できません。そうすると、容器 B は 7% より薄くないと、最終的に 7% の濃度の食塩水は実現できなくなります。

問題文から、作業1終了後は表記上は7%の食塩水ができ、作業2終了後は実際に7%の食塩水ができることになっているので、グラフの面積で考えると「水色=赤+黄緑=黄緑+青」がいえます。だから、「赤=青」がいえるので、120 × 3 ÷ 200 = 1.8 % で、容器 A の食塩水の(本当の)濃度は仮平均 7% より 1.8% 高いので、7 + 1.8 = 8.8% となります。

次に容器 B の食塩水の濃度ですが、(120+200) × 1.8 ÷ 180 = 576 ÷ 180 = 3.2 % で、仮平均の7% より 3.2 % 低いので、7 - 3.2 = 3.8 % となります。

最後に、作業1のあとの容器 X の食塩水の濃度ですが、水色 - 黄緑 = 青ですので、120 × 3 ÷ (180 + 120) = 360 ÷ 300 = 1.2 % で、仮平均 7% より 1.2 % 低くなります。ですので、7 - 1.2 = 5.8 % となります。

今回のような濃度の問題を始めとして、平均を扱う問題はグラフを書いて長方形の面積を比較するのは基本的な手法です。麻布中学校などの難関中学を受験するのであれば必須ですので、覚えておくといいでしょう。

中学生の解法

最初にお話ししたように、中学生であれば連立方程式を立てるのが基本。容器 A の食塩水の(本当の)濃度を x%、容器 B の食塩水の濃度を y% とすると、

{120(x+3) + 180y}/100 = 300×7/100
(320x + 180y)/100 = 500×7/100

これを解くと、x=8.8, y=3.8 が出てきます。食塩の重さで式を立てるのは基本です。

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