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【麻布中学校2020年度入試算数第6問】規則的に二人が出会う問題

突然ですが見出し画像をつけてみました。(過去の記事にも遡(さかのぼ)ってつけています。)

何がいいのか分からないですが、算数・数学分野を強調するためにサイクロイドを変形させたグラフにしてみましたが、いかがでしょうか。

今回も麻布中学校2020年入試の算数から第6問を取り上げようと思います。今回はさほど準備がいらないので、さっそく問題に入ります。ただし、問題文がかなり長いです。

405px-麻布中学校・高等学校

(麻布中学校・高等学校、2008年5月11日、SANDO撮影、Wikipediaより)

[問題] 周の長さが 1m の円があります.図1(下図)のように,この円の周上を点 A は反時計回りに,点 B は時計回りにそれぞれ一定の速さで動きます.点 A と点 B は地点 P から同時に動き始め,2点が同時に地点 P に戻(もど)ったとき止まります.以下の問いに答えなさい.

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(1) 点 A の動く速さと点 B の動く速さの比が 3 : 5 のとき,点 A と点 B が同時に地点 P に戻って止まるまでに,2点は地点 P 以外で何回すれ違(ちが)いますか.

(2) 点 A の動く速さと点 B の動く速さの比が ア : イ のとき,点 A と点 B が同時に地点 P に戻って止まるまでに,2点は地点 P 以外で 14 回すれ違いました.このとき,ア : イ として考えられるものをすべて,できるだけ簡単な整数の比で答えなさい.ただし,点 A よりも点 B の方が速く動くものとします.

次に,周の長さが 1m の円を図2(下図)のように2つ組み合わせます.これらの円の周上を,点 A と点 B はそれぞれ一定の速さで次のように動きます.

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・点 A は5つの地点 P, Q, R, S, T を,P→Q→R→P→S→T→P の順に通りながら,繰り返し8の字を描くように動く.
・点 B は5つの地点 P, Q, R, S, T を,P→T→S→P→R→Q→P の順に通りながら,繰り返し8の字を描くように動く.

点 A と 点 B は地点 P から同時に動き始め,2点が同時に地点 P に戻ったとき止まります.以下の問いに答えなさい.

(3) 点 A の動く速さと点 B の動く速さの比が 3 : 8 のとき,点 A と点 B が同時に地点 P に戻って止まるまでに,2点 A, B が動いた道のりは合計何 m ですか.また,2点は地点 P 以外で何回すれ違いますか.

(4) 点 A の動く速さと点 B の動く速さが ウ : エ のとき,点 A と点 B が同時に地点 P に戻って止まるまでに,2点は地点 P 以外で6回すれ違いました.点 A よりも点 B の方が速く動くものとすると, ウ : エ として考えられるものは9通りあります.これらをすべて,できるだけ簡単な整数の比で答えなさい.

[問題終わり]

問題文が長いためにうんざりするかもしれませんが、正直なところ難しい問題ではありません。ただし、(1) を解いたときにあることに気がつくか気がつかないかが勝負です。(1) が解けない、では話になりません。

(1) ですが、A と B の速さの比が 3 : 5 なので、逆に円を1周するための時間は 5 : 3 となります。面倒なので単位を分としておきます。ということは、A と B が同時に地点 P に戻るためには、5 と 3 の最小公倍数である 15 分かかることになります。その間、A と B はそれぞれ円を 3 周と 5 周ずつ回ることになります。

二点が同時に地点 P に戻るまでに円を回った回数は速さの比(ただし、簡単な整数の比)と同じになります。ここがポイント。速さの比が簡単な整数の比でない場合は最大公約数で割って簡単な整数の比になおしてから考えます。

さて、このとき、二点で合計 8周 (8m) 円の周りを回ることになりますが、二点が動いた距離の合計がちょうど1周 (1m) になるごとにすれ違う (←ここもポイント) ので、A と B が同時に地点 P を出発してから 8 回すれ違います(正しくは「出会います」)。ただし、最後の 1 回は地点 P のため、それを引いて 7 回 が答えとなります。

この2つのポイントが分かれば、残りの問題は解けたも同然(どうぜん)です。

(2) は、(1) の求め方を見れば明白です。地点 P 以外で 14回すれ違うためには、二点は合計で15周 (15m) だけ円を回ることになります。この 15 という数字が二点の速さの比を足したものとなればよいので、ひとまず、1 : 14, 2 : 13, 3 : 12, 4 : 11, 5 : 10, 6 : 9, 7 : 8 の7通りが出てきます。ただし、この比が「簡単な整数の比」でなければならないので、3 : 12, 5 : 10, 6 : 9 を取りのぞいた4通り、1 : 14, 2 : 13, 4 : 11, 7 : 8 が答えとなります。

(3) と (4) は次のようになります。

A と B は 1m ごとに地点 P に戻るので、二点が同時に地点 P に戻るまでの距離を考えるためには一周を 1m としてそれぞれ何周したかを考えます。

一方、二点がすれ違うのは二人の動いた距離の合計が円2つ分の 2m ずつであるので、一周を 2m として考えます。ここが前半の問題との違いです。

(注) 地点 P だけは例外的に二点の動いた距離の合計が 1m ですれ違うことがあります。具体的に言うと、地点 P に同時に戻ってきた後も A と B が続けて動いた場合、二点の距離の合計が 2の倍数と11の倍数のどちらかのときにすれ違います。特に、11の倍数のときに二点は地点 P ですれ違うことになります。

(3) は、二点が円を 3 周と 8 周ずつ回ったときに同時に地点 P に戻ります。このとき、合計で 3+8 = 11m 動いたことになりますが、これを 2 で割ると 5 あまり 1 となり、5回 すれ違うことになります。

(4) は、(3) がヒントになっていることに気が付くかが分かれ目です。6回すれ違うためには、二人が動いた合計が 6×2+1=13m の場合と (6+1)×2=14m の場合があります。それさえ分かれば、あとは (2) と同じです。

(13mの場合) 1 : 12, 2 : 11, 3 : 10, 4 : 9, 5 : 8, 6 : 7
(14mの場合) 1 : 13, 2 : 12, 3 : 11, 4 : 10, 5 : 9, 6 : 8 (7 : 7 は同じ速度のため除外)

このうち、簡単な整数の比になっているものだけ書き出せばいいので、太字で書いた9通りの答えが出てきます。

この問題、難関中学を目指すなら (1) ~ (3) はほぼノータイムで解いてほしい。塾で行うテストや問題集によく出るタイプの問題なので、こういうよく知られた問題が取れないと合格は難しくなると思います。

(4) は出来が分かれそうですが、 (3) から距離について2通りの場合があることを読み取れるかがポイントで、それさえ分かれば簡単です。

イタズラに難しくなりがちが図形問題(特に立体図形の問題)と違って、こういう問題は努力すればできるようになります。その意味でこれから受験する小学生には十分に味わってほしい問題です。

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