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【筑波大学附属駒場中学校2020年度入試算数第4問】これ、xyは使えないですよね?

4週連続となる筑波大学附属駒場中学校2020年度入試の算数も今回で最後、第4問です。

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筑波大学附属駒場中学校・高等学校
2006年9月5日、Benjamin58撮影、Wikipediaより

[問題] 図1 のように,長方形ABCD (エービーシーディー)において,辺 AB の長さが 2m,辺 AD の長さが 1m です。この長方形の内部に点 P (ピー)を,4つの三角形 PAB, PBC, PCD, PDA の面積がすべて異(こと)なるようにとります。4つの三角形を,面積の小さい順に (a),(b),(c),(d) としたところ,三角形 PAB が (a) となり,(a) と (b),(b) と (c),(c) と (d) の面積の差がすべて等しくなりました。次の問いに答えなさい。

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(1) (a) の面積が (1/6) m2 のとき,(d) の面積を求めなさい。

(2) 点 P が図2 の位置にあるとき,三角形 PDA が (b) です。また図2 で,点 Q (キュー)は辺 AD 上,点 R (アール) は直線 PQ 上にあり,PQ と AD は垂直です。さらに,斜線(しゃせん)で示した図形 DRAP の面積は,(a) と (b) の面積の差に等しく,(1/6) m2 です。このとき,QR の長さを求めなさい。

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(3) 点 P として考えられるすべての位置を解答欄の長方形 ABCD の内部に書きなさい。ただし,(a),(b),(c),(d) の面積はすべて異なるので,図3 の点線部分は答えに含まれません。

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(注) (a)~(d) は原文では〇の中にア~エが書かれています。また、問題文中の2か所の太字は、原文では下線と上点で強調されています。

[問題終わり]

この問題の (1)~(3) を解く前に、きちんと押さえておきたい事実があります。

[事実1] 三角形 PAB + PCD = 三角形 PBC + PDA = 2 × 1 ÷ 2 = 1 m2 となります。

[事実2] 三角形 PAB が (a) であるならば 三角形 PCD が (d) になります。(事実1 より)

[事実3] 4つの三角形のうちの 1つの面積が分かれば,残りの 3つの三角形の面積が分かります。もしくは 2つの三角形が (a)~(d) のどれであるかが分かった上でこれらの面積の差が分かれば、すべての三角形の面積が分かります。(事実1 と 2 より)

このくらい事実を確認しておくと,この問題は解けると思います。

(1) は、事実1 より 1 - (1/6) = (5/6) m2 となります。

(2) は、(a) と (b) の面積の差が (1/6) m2 であることから、事実3 よりすべての三角形の面積が分かりますが、今回は (a) の面積だけ求めます。(a) と (d) の面積の差は (1/6) × 3 = (1/2) m2 であり、事実1, 2 より (a) + (d) = 1 m2 であるので、(a) の面積は (1 - (1/2)) ÷ 2 = (1/4) m2 となります。

次に、三角形 PDA が (b) であり、斜線の部分の面積が (a) と (b) の面積の差 = (1/6) m2 であるので、三角形 RDA の面積は (a) の面積と等しくなります。

したがって、1 × RQ ÷ 2 = 1/4 であることから、(2) RQ = (1/4) × 2 = (1/2) m となります。

さて (3) です。今年度の筑波大学附属駒場中学校入試の算数の中で最も難しい問題だと思います。

ちなみに、この問題は中学生であれば簡単です。変数を使って解けばいいだけで、簡単なグラフの問題です。ですが、小学生なので、変数を持ち出してごり押しするような「無粋」な解き方はできません。

まず最初に、あえて (a) ~ (d) の面積がすべて異なるという条件を無視します。すると、長方形 ABCD の対角線の交点O は点 P の条件を満たします。

そこで、点O を基準に考えていきたいと思います。話を簡単にするため、三角形 PBC を (b)、三角形 PDA を (c) とします。逆の場合も似たような話になります。(数学的な言い方をすれば対称性が成り立ちます。)

三角形 PAB の面積は 点P から辺 AB へ降ろした垂線の長さで決まります。そこで、点O より 辺 AB 側に垂直方向に 10cm 近づけたとします。このとき、(a) である三角形 PAB の面積は 0.5 - 0.1 = 0.4 m2 となり、(d) である三角形 PCD の面積は 0.6 m2 となります。

そうすると、(b) は 0.4 + 0.2 × (1/3) = 0.5 - (0.1/3) m2、(c) は 0.5 + (0.1/3) m2 となります。面積が 0.5 から (0.1/3) m2 だけ減らすためには、点Pは、点O より 辺 BC 側に垂直方向に 20/3 cm だけ近づける必要がでてきます。

同じ要領(ようりょう)で考えると、点O より辺 AB 側に 30cm 近づけると、辺BC 方向へは 20cm 近づける必要があります。このように考えると、次の線分が求まります。

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ただし、点O と辺AB 上の点は含まないです。

今回の問題は算数の問題としては美しくないと言わざるを得ません。どれだけがんばって算数で説明しようとしても、結局は数学の問題でしかないからです。しかも、数学として考えたら簡単な問題です。これでどんな能力を見たいのでしょうか?

落とすための入試問題として中学校側が図形を多用する気持ちは理解できますが、個人的に中学入試に出てくる図形問題はあまり好きではありません。すべてではありませんが、今回みたいにしょうもない難問が多いからです。

こんな、筑駒の受験生なら(落ちた子も含めて)1年経てば誰でも解けるような問題を入試問題に入れても意味がないので、もう少し問題を練った方がよろしいかと思います。

[参考] O を原点に下方向を x, 右方向を y として P の座標を (x,y) とおくと (x > 0, y > 0)、三角形 PAB と PCD の面積はそれぞれ 0.5 - x と 0.5 + x であるので、三角形 PBC を (b)、PDA を (c) とすると、三角形 PBC と PDA の面積はそれぞれ 0.5 - (x/3) と 0.5 + (x/3) となる。したがって、(1 - y) ÷ 2 = 0.5 - (x/3) であるので、y = 2x/3 となる。

ただし、x=0 のときは 4 つの三角形の面積が等しくなり、x=0.5のときは三角形 PAB の面積が 0 となり三角形ではなくなる。

あと、(b) と (c) を入れかえると y = -2x/3 が得られる。

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