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【灘中学校2020年度入試(2日目)算数第1問】無駄をはぶいてスピード勝負!

さて、灘中学校2020年度入試の算数も1日目を全て終え、いよいよ2日目です。1日目が小問集であったのに対して2日目は文章題の連続です。ここからはいかに理解して最短ルートで問題を解くかが勝負となってきます。

2日目は1問が重たいので、1問ずつ解説していこうと思います。まずは2日目算数の第1問です。

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灘中学校・高等学校
2011年8月28日、Saoyagi2撮影、Wikipediaより

[問題] 1 周 600m の円形の散歩コースがあります。A さんと B さんはコース上の S 地点を同時に同じ向きに進みはじめ,A さんは毎分 50m の速さで歩き,B さんは一定の速さで走ります。A さんが 1 周して S 地点に戻(もど)った時点で 2人は止まります。2人が進んでいる間,S 地点と A さんの距離(きょり),S 地点と B さんの距離,A さんと B さんの距離の 3 種類の距離を測ります。ただし,これらの距離は散歩コースに沿って,短い方 (等しいときはその等しい距離) が計測されます。そして,これらの 3 種類の距離のうち最も短いものを「最短距離」と呼ぶことにします。

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例えば,S 地点と A さん,B さんの位置が,上(原文では下)の図 1,図 2,図 3,図 4 のとき,3 種類の距離と「最短距離」は下(原文では右)の表のようになります。

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(1) B さんが毎分 100m で走る場合,出発後の時間 (分) と「最短距離」 (m) の関係を表すグラフを,右ページの方眼に実戦でかき入れなさい。

(2) B さんが毎分 150m で走る場合,出発後の時間 (分) と「最短距離」 (m) の関係を表すグラフとして正しいものを,次の 4 つから 1 つ選び,選んだグラフの右上のグラフ番号を囲った波線をなぞりなさい。さらに,選んだグラフの空欄(らん)に適切な数を書き入れなさい。

[問題終わり]

こういう問題が与えられたとき、まずは思考実験 (しこうじっけん=考えて、ため) してみることです。

(1) では B さんは毎分 100m ということで、A さんの速さの 2倍の速さで走っています。ということは、
・0~6分後までは (S 地点と A さんの距離) = (A さんと Bさんの距離) でひたすら増える
・0~3分後までは (S 地点と B さんの距離) = (S 地点と A さんの距離) × 2 だが、3分後に B さんが半周となるので、その後は (S 地点と B さんの距離) は減る
・6分後にAさんは半周、B さんは1周
ということが分かりますが、そのあとどう動くかというと、
6~12分後は 6~0分後の動きと左右対称なだけで同じ動き
になります。これに気がつくかどうかがポイントの一つです。

あとは、どこで (S 地点と A さんの距離) = (A さんと Bさんの距離) と (S 地点と B さんの距離) の大小が入れかわるか。これは、(S 地点と A さんの距離) = (A さんと Bさんの距離) = (S 地点と B さんの距離) となり、3つの距離の合計が 1周=600m になるときとなります。すなわち、A さんが 600 ÷ 3 = 200m 地点のときなので、200 ÷ 50 = 4分後となります。

これだけあれば下のようにグラフが描(か)けると思います。

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ここで、黒い線は (S 地点と A さんの距離) = (A さんと Bさんの距離) が「最短距離」の場合で、緑の線は (S 地点と B さんの距離) が「最短距離」の場合です。

もちろん、2 つを区別する必要はないですが、参考になればと思います。

(2) も同じように考えていけばいいだけですが、今回は B さんの速さが毎分 150m と A さんの 3倍です。ですので、A さんが半周で B さんは 1周半、A さんが 1周で B さんは 3周となります。

また、今回も (1) と同様に 6~12分後は 6~0分後の動きと左右対称なだけで同じ動きをするので、0~6分だけ考えれば十分です。

・0~2分は (S 地点と B さんの距離) = (S 地点と A さんの距離) × 3 で、2分後に B さんは半周するので、ここからは (S 地点と B さんの距離) は減る
・0~3分は (A さんと B さんの距離) = (S 地点と A さんの距離) × 2 で、3分後に A さんと B さんの距離が半周となるので、ここから (A さんと B さんの距離) は減る。また、A さんは S から (1/4)周、B さんは S から (3/4)周=S まで (1/4)周となるので、ここで「最短距離」が (S 地点と A さんの距離) から (S 地点と B さんの距離) に切りかわる
・4分後に B さんが 1周し、そのとき A さんは (1/3)周
・ここから (S 地点と B さんの距離) が増え、(A さんと B さんの距離) が減って 6 分後には B さんは A さんに半周地点 (A さんは半周、B さんは1周半) で追いつくため、その前に (S 地点と B さんの距離) = (A さんと B さんの距離) となるが、B さんの速さが A さんの速さの 3倍であるため、B さんが A さんに半周地点で追いつくためには (A さんと B さんの距離) = (半周地点までの A さんの距離) × 2 となる。S 地点から並べてみると、S ー B ー A ー 半周地点となっているため、(半周地点までの A さんの距離) = (半周=300m) ÷ 5 = 60m となり、(S 地点から B さんまでの距離) = 120m であるので、4 + (120/150) = 4.8 分後に (S 地点と B さんの距離) と (A さんと B さんの距離) の大小が入れかわる。

ということで、次のグラフができあがります。

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今回は、黒い線は (S 地点と A さんの距離) が、緑の線は (S 地点と B さんの距離) が、ピンクの線は (A さんと B さんの距離) が、それぞれ「最短距離」となっています。複雑です。

ちなみに、解答欄には (グラフ3) が選択され、150m, 120m, 3分,7.2分 が記入されることになります。

今回の問題は、いかに問題文を整理して理解するかにかかっていると思います。問題自体はそれほど難しくないですが、時間との勝負になるでしょう。

特に、(2) で 4.8 分後に 120m 地点で緑からピンクに変わるところをいかに求めるかがカギで、私はすぐに比が思いうかんだのでこの解き方を選びましたが、もちろん相対速度を使う方法もあると思います。

この場合は、A さんと B さんは 200m 差で、B さんは速さを 2倍にしたときに A さんに追いつくと考えれば、200 ÷ (300 - 50) = 0.8 が出てきます。(B さんの進んだ距離を 2倍にすると Aさんの位置にくる、と考えています。)

結局、どの方法が慣(な)れているかだと思いますので、自分にあった方法を信じることだと思います。

にしても、自分で言うのもなんですが、ここで比を使うあたり、私も小学生の解き方がしみついたなぁ…と思います。娘の算数にはそこそこつきあいましたから。

大人であれば普通は時間を変数にして速度を使って方程式で求めるので、昔の自分ならば比は思いつかなかったと思います。そして、算数を使うと意外な解き方が見えてくるのでおもしろいです。

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