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ドッグカフェでも猫カフェでもないのですが。


ウチは那須の観光中心部からちょっと離れた、森の中のカフェ。

数年前から、「犬連れなんですけど、大丈夫ですか」というお問い合わせが増えてきて、断る理由もないので「いいですよー」と言ってきたのだが、このことについて最近モヤッとすることが多い。

まず、基本的に人間のためのカフェなので、ワンちゃんウェルカムというスタンスではないし、ワンちゃん用の設備やメニューがあるわけでは全くない。

さらに、お客さんの中には犬好きの人もいれば、犬が苦手な人もいる。最近は少なくなったものの、「不衛生」と言って顔をしかめる人もいる。
カフェなので、いろんな人が利用する中、他のお客さんに嫌な思いをさせないように配慮するのは、ドッグオーナーなら当然のことと思う。

上記のような記事もあるが、「店内で排泄しないこと」「人間の食事を食べさせないこと」など、店側からすれば言わずもがなと思われる記述もあり、常識レベルが低すぎないかと思う。

当店として切にお願いしたいのは、店内で吠えないこと。じっと座って待てること。必要以上の面積を占有しないこと。カフェのオーダーから発生する以外のゴミを残さないこと。

カフェは店内の空気感も大切な要素と考えている。古民家の落ち着いた空間を味わってもらいたくて、あえてBGMも使わず、静かな中に古時計がカチコチ時を刻む音を流している。
しかし、飼い主は慣れているのか、犬の吠え声が店内の静かな空気を掻き乱しても、なんとも思わないようだ。
一応、入店時に言っているんですけどね。吠えるワンちゃんはテラスでお願いしますって。

また、日本では小型犬の室内飼いが圧倒的に多いせいか、犬を座席に座らせる飼い主も多い。
敷物を使ったり、キャリーに入れたまま置くなど、気を使ってくれてはいる。しかし、椅子は基本人間のためのもの。ケースバイケースだが、次にその席を使うお客さんのことを考えると、席に犬の毛が残るような使い方はちょっと気になる。

私の理想は、ドイツのカフェのように、コーヒーを飲みながら新聞を広げたりしている紳士の足元で、丸くなってくつろいでいるワンコがいる風景。人に、犬が寄り添っている風景だ。

ドイツの犬事情については、こちらの記事③ベルリンの街で に、写真が沢山あって楽しい。

ベルリンは「世界一犬が幸せな街」らしいが、それは犬が人と暮らしていくために、きちんと愛情をもって、しかし徹底的にしつけられているおかげで成り立っていることがよくわかる。

当店にやってくるドッグオーナーは、残念ながら犬にかしずいちゃってる人が多い。
やたらといろんな道具を持ってくる。床に敷物を広げ、オモチャや食器を配置する。
足元にいろいろ置かれるとカフェのサービスに支障をきたすから、もう少しコンパクトにまとめてほしいと思う。

また、自分たちだけで食事するとワンコが黙っていないのか、持ってきたおやつを与える。容器に水を入れて床に置く。おやつのゴミを置いて帰る。

カフェはパブリックな空間なので、自宅でやってることがすべて許容されるわけではない。ワンコのごはんやお水は、外でやってください。ましてやゴミを置いていくなんて、理解に苦しむ。

当店はドッグカフェではなく、しつけのできたワンちゃんなら連れてきていい人間用のカフェです。

那須にはワンコと一緒にお泊まりできるペンションや、都会にはない、広々としたドッグランがある。ワンコグッズのお店もある。
そのせいか、ドッグオーナーたちのコミュニティで人気の観光地になっているらしい。

そのこと自体は悪いことではないのだが、同じ犬種の飼い主が集まってオフ会のようなイベントを組み、当店にやってきたりする。この頃は、予約の時点で「オフ会くさい」と思ったらお断りしようと思っている。
人はなぜか群れると気が大きくなり、大声で喋り、一人の時にはしないような迷惑行為を平気でするようになる。犬ばかりでなく、人もうるさい。

カフェとして、お客さんには提供する飲食はもちろん、この店で過ごす時間と空間を楽しんでもらいたいと切に願っているので、仲間内で徒党を組んで移動することを第一義としている人たちには、できればあまり来てほしくないと思うのである。

こんなにドッグオーナーに対するモヤモヤが多いのに、なぜ「犬連れOK」をやめないのか。
それはつまり、店として来てくれるお客さんを公平に、平等に受け入れたいから。

何かを理由にして排除したくない。
外国人でも、日本語分からなくても不安にさせたくない。聾唖の人でも、手話できないけど、なんとかコミュニケーションをはかりたい。古民家で段差があるけど、車椅子で来られたら入店のお手伝いをしたい。小さなお子様連れでも、食事を楽しんでもらいたい。
ユニバーサルサービス。そういうことの一環として、コンパニオンアニマルも受け入れたい。

しかし、それが可能になる前提として、みんながパブリック空間でしてもいいこと・いけないことをよく考えて欲しい。これは、子供連れのお客さんにも言えることだが、どんな場合でも他のお客さんに配慮することは、最低限必要だと思う。

また、自分が持ち込んだゴミを置いて行くのは、絶対にやめてもらいたい。公園でランチをして、あなたゴミの置き去りやりますか?


さて、もう一つのテーマ。

当店は猫カフェではありません。

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ウチは26年前、移築した古民家に住みながらゆるゆると始めたカフェで、当時はインターネットなども普及しておらず、お客さんもごくごく少なかった。
地元の人しか知らない「隠れ家」カフェで、お盆ウィークなどは逆にヒマになるほど。
自宅とカフェスペースが空間的には連続しているので、当時から我が家の猫はカフェに出没していた。

月日が流れ、猫も代替わりしたが、相変わらず気が向くとカフェスペースに出てきたり、小上がりのコタツで丸くなっていたり、ごく稀にはお客さんの膝に乗っていたりする。
もちろん、猫アレルギーだったり、猫が苦手なお客さんもいるので、近くに猫がいる場合は大丈夫かお聞きして、ダメならすぐ撤去します。

しかし、猫は繁忙期の店の雰囲気が好きではないらしく、さっさと出かけて森の中で過ごし、夕方ふらりと帰ってくることが多い。

当初から、猫については出入り自由な状態で飼っている。でも近年、猫ブームもありいくつかの雑誌やムック本の取材を受けたので、「猫がいる店」という情報が結構出回っていることも確かだ。

↓昭文社のムック本「にゃっぷる」
(2021年2月発売)

にゃっぷる01

にゃっぷる2

今年の春には、「岩合光昭の世界ネコ歩き」の収録があり、ウチの猫たちの映像が全国に流れた(4月13日放送 NHK BSプレミアム)。
岩合さんの番組は、決してペットだったり看板猫だったりを撮る意図はなくて、自然の中で、人の生活に寄り添いつつ、 のびのび生活している猫を撮るという主旨だった。

ネコ歩き

なので、最近カフェに猫を求めてやってくるお客さんが多いのに、ちょっと驚いている。
中には、ウチの猫たちが外出中なのを告げると「ネコちゃんに会いに来たので、会えないなら帰ります」と言って(座ってメニューも見ているのに!)出て行くお客さんもいる。

ウチは猫カフェじゃなくて、ときどき猫がいる(かもしれない)カフェです!

そして、本当に解せないのだが、ドッグオーナーの中にかなりの割合で猫と会いたがる人がいる。
初対面の犬と、よろしくやれる猫がいったいどれほどいるのだろう。 
ワンコのお客さんが来たとたんに、ウチの猫はこっそり裏口から逃げ出している。いない時にはいないんだってば! 会えたらラッキーくらいな感じでいてほしいものだ。

2大コンパニオンアニマル、犬と猫。
犬には犬の事情があり、猫には猫の都合があるだろうけれど、そこをなんとか収めて、人間の生活に付き合ってもらっている。
カフェとの兼ね合いでモヤモヤするところはあるが、基本当店オーナーもスタッフも、犬と猫が好きだ。
どちらとも仲良く、共存できる道を探りたい。

最後に衛生管理についてだが、飲食店の客席スペースに犬猫が入ることについて、保健所の基準には何も触れられていない。
厨房スペースに関しては、「客席と明確に仕切られていてること」「客が立ち入れないよう管理されていること」「建物のうち店主の居住部分と明確に仕切られていること」などとともに「犬や猫を入れないこと」が明記されており、これは食品の管理・調理・保存が行われる場所として必要な衛生管理と考えられているようだ。
飲食店の場合、調理されてお客さんに提供された料理は、その場ですぐに消費される前提なので、客席での衛生管理について、さほどうるさく言及しないのかもしれない。

当店を訪れる犬連れさんたちを見るかぎり、しつけに問題がある感じのワンちゃんはかなりいるが、衛生面に問題があるケースはほぼゼロだと思う。どのコも、とてもきれいに手入れされている。
多くの飲食店が「犬連れ不可」なのは、衛生上の問題というよりは、「犬を好まない他のお客さんが不快に思うかもしれない」ので、トラブルを未然に防ぎたいという心理からではないかと思う。

そのあたりは、「犬連れOK」にしているカフェとしては、ドッグオーナーさんたちによく考えて行動してもらい、「やっぱり犬連れはマナーが悪いからダメ」とならないようにしてもらいたいと、切に切にお願いしたい。

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