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夢洲カジノ用地契約差止請求は住民訴訟として提訴

「合議不調」となった監査請求を受け、請求者5名は全員住民訴訟に踏み切った。

簡潔に言うと訴えは下記の3点。

[1] 土地契約の差し止め
  大阪市長は、大阪IR株式会社と夢洲のカジノ用地に関し、借地契約をするな。

[2] 土壌改良費用支払い契約の差し止め
  大阪市長は土地所有者の責任として、大阪IR株式会社の事業のために土壌改良費用を支払う合意を結ぶな。

[3]土地改良費用支払いの差し止め
  大阪市長は、カジノ用地に係わる土地改良事業のために、大阪IR株式会社に一切の支払いをするな。

同様の内容で、大阪港湾局長を被告として訴えている。

この訴訟の根底をなしているのは、基本協定書において、大阪市がカジノ事業者である大阪IR株式会社に対して、土地課題対策費(液状化対策、土壌汚染対策、地中障害物撤去)を負担する前提の条項となっていることにある。

[違法性1]憲法14条の平等原則に反する
住民監査請求の記事にもある通り、大阪港営事業では、土地の分譲・貸し付けについては、これまで土地の瑕疵については責任を負担していない。この違いは、憲法14条の平等原則に反するため、違法性を問うている。

[違法性2]大阪市に多大な損失を与える
(1)大阪市に免責事項がない
大阪市会では、2022年3月に土地課題対策費788億円の債務を負担することを可決している。しかし2022年2月15日に大阪IR株との間で締結した基本協定書では、788億円が大阪市の負担の上限とはなっていないだけでなく、大阪市側の免責についても記載がない。(基本協定 第13条の2)

(2)大阪市の負担額に上限がない
基本協定内で、大阪IR株式会社が協定を解除できる条項によって大阪市の負担が青天井になる恐れがある点。(基本協定 第19条4項4号)
 区域整備計画が国に認定された日から30日を経過した日に、「IR運営事業に悪影響を与える土地に関する事象が生じておらず、生じる恐れもない」状態でなければ、協定を解除できると規定されている。土地に関する事象とは地盤沈下、液状化、土壌汚染、残土・汚泥処分などが該当し、ある意味IR事業者の言いなりとなり、際限のない支出が続く可能性がある。「将来的に地盤沈下が生じないようにする」ことは技術的に極めて困難で、関西国際空港が現在も地盤沈下をしていることを考えれば、IR開業後も大阪市が負担し続けなければならないこともあり得る。

(3)地方公営企業として逸脱した費用支出
大阪市は、2021年1月IR事業用地の1地点のボーリング調査を発表し、IR事業用地に土壌汚染があることを公表した。大阪市が土地課題対策費としている788億円は、この調査結果をもとにしているのだが、その関さんの仕方が杜撰なのだ。本来なら、事業用地内のうち汚染されているのがどれだけかを測るため、土壌汚染対策法に基づく「土壌汚染状況調査」を行い、費用をできるだけ抑えるべきところだ。しかし調査に時間がかかるという理由で、IR事業用地49haすべてが汚染されているとみなし、約360億円かけて約300万㎡の土壌を搬出することとした。最少の経費で最大の効果を上げるという地方公営企業の本分を逸脱し、IR誘致のスケジュールを優先した。また、約360億円という費用も一般的な汚染土壌の搬出費用よりもかなり安く見積もられており、積算根拠に信用性がない。

上記に示していることが、地方自治法2条14項、地方財政法4条1項、6条、地方公営企業法3条、17条の2第2項に違反しているため、提訴したものである。


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