陳述書[稲森豊]

私は1994年から2010年まで16年間日本共産党所属の大阪市会議員として計画消防委員会、建設港湾委員会、都市計画審議会委員等、関空2期事業及び南港ベイエリア開発における地盤沈下問題にかかわって来ました。承知のようにベイエリア開発はWTCビルをはじめことごとく失敗しています。なぜ失敗するのか?ベイエリア開発の失敗をつぶさに分析するなかで共通する失敗要因の存在に行き着いたのであります。それは

  1. 根拠の無い楽観的な架空の需要。

  2. 過大な投資。

  3. ベイエリアにおける人工島という不利な立地を考慮しない開発。

    であります。

今回の夢洲におけるIR事業はまさにこの3つ失敗の法則に該当する事業であります。
本日は立地問題について陳述します。
今回のIR事業にかかる公金支出行為は大阪市の住民監査請求制度の説明にある①違法不当な公金の支出。②違法不当な契約の締結・履行に該当します。
夢洲の埋立て履歴と開発コンセプトを無視し、土地利用を強引に変更した松井市長の行為が地方自治法第2条14項(「地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」)及び地方財政法4条1項(「地方公共団体の経費はその目的を達成するための必要かつ最少の限度を超えてこれを支出してはならない。」)いわゆる「最小経費最大効果」の原則。抵触違反する行為であると考え住民監査請求に及んだものです。
根拠を示しましょう。
令和3年(2021年)6月29日の特別職レク議事要旨(IR区域の液状化対策について)の場において松井市長は大阪市としてIR誘致を決定した以上、その施設が成り立つ土地を提供することが市の責任である。と述べています。港湾局はそれに対して土地所有者の責任として液状化対策費用を負担することは出来ない。と真っ向から反対の立場を表明しています。結局市長の主張が通ったのですが、われわれの主張は「今回の夢洲におけるIR事業が夢洲の本来の開発コンセプトである築造目的や夢洲の構造、から見てIRのような巨大集客施設事業用地として利用するのが不適切であるにもかかわらず強引にIR誘致を決定した市長の判断とその後の行為が違法・不当であると主張するものであります。」


(その証拠)
そもそも夢洲というのはどの様な洲なのか?これがこれが最も重要ポイントです。
論よりここに証拠、夢洲の建設と運営の主管局である港湾局が大阪港開港150周年を記念して発行した。Port of Osaka 2017 という冊子と、港湾局が公表している夢洲築造の設計図書とIR事業予定地のボーリング柱状図があります。
この冊子は大阪港の歴史的役割と位置づけ、夢洲がどの様な目的で築造された人工島なのかを示すコンセプト、と将来展望が述べられている言わば大阪港のマスタープランであります。
※表紙(これが表紙)
※1,2ページ(見出しは近畿2100万人の生活を支え、発展を続ける国際貿易港。説明には大阪港は国際貿易港として更なる発展を目指しています。と有ります。
※11、12ページ大阪港の更なる物流機能の強化に向けてでは、大阪市は夢洲の先行開発地区(約140ha)の大部分を「産業物流拠点」に位置づけています。とあり、さらに※29、30ページ夢洲のポテンシャルと将来開発地区への展開として。
現在良好な都市環境の保全や公害防止大阪港の機能強化を目的として廃棄物、建設工事にともなう掘削残土、浚渫土砂の受け入れを行っています。とあり、今後Future の項では浚渫土砂、残土の受け入れが終了した区域から、第2期、第3期の開発用地として順次土地利用をはかっていきますと。平成50年、2038年頃からの活用を行ってゆくと長期的な夢洲の開発スケジュールを示しているのです。
そしてこの2枚のイラスト図は夢洲築造の手順を説明する埋立て工事の流れと事業目的と主体をビジュアルに解説した文書です。そしてボーリング柱状図は現在のIR 予定地の地価構造です。
これらは夢洲とはどの様な洲なのかを示す最も基本的な客観資料であります。
然るに今大阪市がやっていることは何か?
150年にわたる大阪港発展の歴史と、将来を見越したマスタープランを無視し、埋立て途中の未完成の若齢地盤、しかも汚染を前提としている廃棄物によって埋め立てられている地層を掘り返し巨大な集客施設建設を強引に設置しようとしているのであります。
今回の巨額な支出は以上述べたように巨大集客施設の立地としてふさわしくない夢洲の立地条件を無視して敢えて技術的にも、財政的にも、時間的にも不利な道を選んだ大阪市長の政策決定の誤りによるものでありことは明らかであり地方自治法第2条14項及び地方財政法4条1項「最小経費最大効果」の原則に反する違法行為であることは明白であります。


おわりに
負担額が青天井に膨らむ要素。
松井市長は市は主に土壌汚染、液状化、地中障害物の3要素を挙げ総額約790億円と表明。「予定している負担額の範囲内で、用地の改良を進めたい」と市長が表明しているが夢洲の現在の地盤状態を見れば到底その範囲内に収まらない。
※土壌汚染対策、残土・汚泥処理約360億円
監査請求書に詳細にわたって記述されているように汚染状態の全貌を把握する調査は行われておらず汚染土約300万㎥は根拠のない数値で大きく上振れする可能性が大きい。
※地中障害物除去約20億円
市概算負担額は事業者試算をもとに算定とあるように根拠のない無責任な数字である。
※液状化対策約410億円
これが大きく上振れ、青天井の額になる可能性がある最も重要なポイント。
市概算負担額は事業者の試算を基に算定、事業者追加調査を踏まえて引き続き精査。とあり今回約束している液状化対策は埋め立て層25mと建物周囲幅12.5mに限っての地盤改良費用410億円であるが液状化や地盤沈下はボーリングの柱状図で明らかなように埋め立て層に限らずその下層の沖積層の圧蜜沈下、あるいはそれ以下の洪積層の沈下まで及ぶことが判明しており埋め立て層の地盤改良だけでは地盤を安定させることは不可能であります。巨大建築物が可能なように地盤改良を大阪市の負担によって行わなければならないことになるというとんでもない青天井のエンドレスな負担増が今回のIR事業の基本協定書に謳われていることからも監査委員の皆様におかれましては夢洲立地を厳密に把握され慎重審査のうえ的確な判断を下して頂くようお願いし、私の陳述を終らせて頂きます。有難うございました。
以上

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