詩「幸せな二つの影」(「詩とメルヘン」初入選作品)
「幸せな二つの影」
琥珀色の夕陽が
地平線に溶ける時刻
公園のベンチで本を読む老女は
黄色い銀杏の葉が
しおりのようにページに落ちると
微笑みながら本を閉じた
一日の終わりに
愛する人は、いないけれど
気ままに遊んでいた仔犬が
弾丸のように飛んでくる
彼女は、ゆっくりと
黄昏の中へ歩き出す
仔犬はシッポをふりながら
彼女の周りをグルグル回る
ベンチを見下ろす銀杏の樹が
幸せな二つの影を見送った
※「詩とメルヘン」2001年11月号掲載(イラスト・藤田夏代子)
やなせたかし先生が編集長をされていた「詩とメルヘン」に初めて入選掲載された作品です。ご覧の通り見開き2ページにカラーイラストが付き、さらに賞金までもらえるという夢のような待遇の詩誌でした。だから入選通知が来たときは、初めて詩誌に掲載された時より嬉しかったなあ。
ちなみにこの詩に出てくる老女は奥さん、仔犬は当時2歳になったばかりの長男のことです。2人の幸せを願っていたら降ってきた詩です。例によって最初から最後まで一気に書き上げました。最終行でタイトルを出すというありがちなパターンですねw
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