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名前、売ります。 最終話①

それから何日か、公園に七氏の姿はなかった。

連絡先を交換した大門刑事によると、彼自身一度だけ会ったがそれ以降会う事はなく、仕事で行くことも難しくなった。と。

それはこちらも同じであった。

そんな夜、ダメもとで彼が仕事場としていた公園に行くと

!!

そこには紙袋を携えた七氏がいつもと変わらない様子で判子を作っていた。

「こんばんわ、寒いですね」と、こちらに挨拶をする。

「しばらく、姿を見なかったがどうした?」

「ちょっと、アパートにこもっていました。これ、大門さんに会う事があれば返していただけませんか?」

と、紙袋を渡された。中を見ると、白い布が入っている。

「色違いの羽織だそうですが、こんなきれいな物を貰うわけにはいきませんので…ただ、僕から言うとその人は怒りますのであなたから渡してください」

「わかった」

この夜も、その次の夜も七氏は求められるまま判子作りに精を出していた。

時任の胸が妙にうずき始めた。


そして、一週間後・・・。


”至急、至急、男性二名による傷害事件発生!!場所は・・・”

刑事課にそう、アナウンスが流れた。

それを聞いた時任の体に稲妻が走る。七氏と会ったあの公園だ。

同じ場所で傷害事件、しかも男性二名!

「おい、時任!」

遠くで課長の声が聞こえた気がした。

・・・無事でいてくれよ。

そう祈る気持ちで、車を走らせる。


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