名前、売ります。 最終話②
公園の入り口に着くと、すでに救急車とパトカーが何台か止まっていた。
「こら、さっさと乗れ!」
警察官たちに連れて行かれた男が、あの指名手配犯であった。
「おい、もう一人はどうした?!連絡では二人という事だが…」
交番勤務らしい巡査に声を掛ける。
「今…診てもらってます」
格闘の直後だったようで、息が荒い。
「そいつ、何か言ってなかったか?」
「いえ、分かりません。自分が来た時には二人で揉み合いになっていました」
「とにかく、案内してくれ」
「はい…」
「・・・君は巡回で、ここを通るのか?」
「いえ、普段は通りません。ただ、大門刑事に言われてここ数日気にして通るようにしました。お知り合いが近くにいるみたいで…気にされているようでした」
「・・・そうか、わかった」
乱闘の現場に着くと、担架に布が掛けられ運び出された。
指名手配されていた角野は、七氏のウワサを聞き三年前と同じ様に名前を新しく作るよう脅した。しかし、今回は七氏がそれを拒み乱闘となった。
そして巡査が来た時に、七氏を刺殺したそうだ。
「・・・大門さん、俺たちはここで何をしているんですか?」
「大門さん・・・」
「うるさいな、お前は・・・」
「あいつの墓前に手も合わせました。俺たちは何を待っているんですか?」
そういう時任に、大門が溜息を吐いて包みを渡した。
!!
開けると、
”あなたに似合う名前を考えてみましたが、これ以外思いつきませんでした 七氏”
『 時任 一 』と彫られた判子と七氏の手紙が出て来た。
「やれやれ、若さんも人使いが荒い」
と愚痴りながら和尚が二人のいる仏堂に何か運んで来た。
「なんせ、故人は縁の深い者だったからな」
「若さんが、変な広告を出したからでしょう?七氏というもの死去につき、お世話になった方々と故人について語らいたい。と、うちの寺まで出して。お運びが難しいようであればお手紙をいただき、開封せず経を読みそれを燃やして故人の手向けにしたい。と、その通り手紙が届きましたよ」
「今日は休みを取った。説教なら後でゆっくり聞くから、はじめてくれ」
「若さんがいうなら、そういたしましょう・・・」
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