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inagakijunya
居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜 P47
3.山本 皐月 故郷は遠きにありて⑫
店を出ると雨はほとんど降ってなかった。
傘もささずに歩いている人もいるぐらいだ。
それでも私は気が急いて早足で駅前の駐車場へと向かう。
また強く降り出したら大変だし……。
駐車場の手前で向こうからやってくる夫に気がついた。
「パパ!」
私達夫婦は子供が産まれて以来パパ・ママ呼びだ。
「あれ? ママ? どうしたのこんなところで?」
私は手短に夫に事情を説明する。
「うわぁ…。今日も大変だったねぇ…。お疲れ様」
夫の労う言葉に少しばかり安心感を感じながら
「車で来たから一緒に帰りましょ。雨も心配だし…」
と、誘った。
もちろん夫に否やは当然無い。
店のかなり近くの道端に車を止め、父を迎えに店へと入る。
待合室へ行くと父は店員さんを相手に取り留めのない話をしていた。
「お父さん。戻りましょう」
話の切れ目を待って父に声をかける。
「あぁ、迎えに来てくれたのか…。ありがとう」
父はゆっくり立ち上がった。
「お世話になりました」
私は店員さんに頭を下げて部屋を後にする。
そして、父を連れて車に戻った。
車の中から夫は父に手を振っている。
「あぁ、兄ちゃんも迎えにきてくれたのか? 忙しいのに悪いねぇ……」
どうやら父には夫が自分の兄に見えるようだ。
「それじゃ行きますよ」
父と夫を後部座席に座らせ、私は車を発進させる。
居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜
3.山本 皐月 故郷は遠きにありて⑬
へ続く
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