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居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜         P33

2.野崎 颯 居酒屋ランチタイム⑬

 大きな木の幹みたいな太い柱っぽい場所に近づいてみた。
 近くに行くと中まで見えるようになってたけど見る角度によっては木の幹にしか見えない。
「お母さん、ここ何?」
「ん〜…何かなぁ?」
 お母さんはその柱の周りに沿って歩いて行く。
 ボク達も一緒に歩いていたら入口っぽい所を見つけた。 高い所に何か書いてある。なんだろ?
「あ、『喫煙所』って書いてあるわ」
 お母さんが読んでくれた。
「『キツエンジョ』って何?」
優香が聞く。
「タバコを吸う場所よ」
 ふ〜ん……。
 中を覗いてみたけど誰もいなかった。
「電車の中とか駅の中とかタバコ吸っちゃダメだからね。吸いたい人はここで吸うのよ」
「でも誰もいないよ」
「外で寒いからかな?」
 なんて話していたら男の人がスーっとやって来て中に入っていった。
 「吸う人いるんだねぇ…」
 美味しいのかな?
 ボクにはわかんない。

 「さぁ今度こそ外へ出ましょ。ランドセル買うんでしょ」
 お母さんが急かす。
 ちょっと名残り惜しい気がしたけどボク達は出口へ向かった。

「あっ!」
「どうしたの?」
「お土産屋さんだ!」
 出口の側にはお土産屋さんまで有った。
 電車のキーホルダーとかミニタオルとかいろいろ売ってる。
「お母さん、お土産欲しい!」
「はぁ? お土産って…。ここ、観光地じゃないのに…」
「でも海も山もあるじゃん! お土産欲しい!」
 お願い! お母さん!
 おねだりポーズでうるうるお目々で訴える。
 優香と二人で訴える!

 お母さんは深々とため息をついて
「しょうがないわねぇ…。高いのはダメよ」
と、言った。
 やったぜ!

居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜
2.野崎 颯 居酒屋ランチタイム⑭

 へ続く


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