『葬迎』(凋叶棕)の考察~そうして今日も生贄を探し続ける~(ネタバレ)

数々の失敗劇とその総括をした『墓標』。しかし、イノベーションとやらは誰かが作り続けてくれないとならないらしいです。日本のために。また、投資を考えている人間は自分が儲けるために動いてくれる他人がほしいらしいです。投資家のために。

そう。遂行者ではなく、他人の都合だけがうごめいているのです。なお、他の曲との一致のためにこのページでは遂行者のことを『心強きもの』の少女一輪、遂行者を求める人間は『墓標』の曲より謎のピエロとします。

そりゃなにかこういう物があれば素晴らしいと願うこともあるでしょう。「徒」側では実際に手助けをえて成功して、少女一輪は『<正調>佐渡の二ッ岩』のように祀られることもあるでしょう。

ですが実際のところ謎のピエロは、少女一輪の立場は軽視しています、それどころか自分の望む通りに動いてくれる都合のいい人間だと。その醜さを元に、でも世間や自分のために動いてくれる人間いないかいないかというゾンビのように這い回る。『葬迎』はそんな姿を描いた曲だと思います。

まあ「イノベーション」とやらを担う少女一輪はなにか理想のために邁進したり、努力したり、苦境に耐えようとしたりする人間でもあることでしょう。お人好しでもあるでしょう。現実を手堅く生きようという人間はまず「イノベーション」のような危ないことしたりしません。だけど、謎のピエロにとっては少女一輪のような人間はあまりにも望ましい特性。

だから、また使い潰そうとする。

あくまで、少女一輪とは別の人間の理屈で。

背景概説

曲はオリジナルですが、「蓬莱人形」という原曲が一部使われています。

この蓬莱人形が収録されたCDにはアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」の、登場人物がひとりひとり死んでいく小話が記載されています。

歌詞分析

そして永きに渡る日々の果て 消しきれない記憶の深層の底から
どこか歪なその人形たちが いつか連れ立って迎えに来るのだ
―何処までも。

人形が迎えに来たらしいです。


墓標に刻んだかつての亡骸 そうして一人だけ生きながらえても
記憶となって残り続ける限り 必ず何処かで探し出される
―逃がさない。

「イノベーション」「新しいプロジェクト」として夢を追う世界の担い手として。新しい儲け話を手伝ってくれる人間として。危ない道でも理想を元に歩んでくれる存在として。また犠牲になってくれないのかと謎のピエロは探しに来る。なぜなら少女一輪はまだ見ぬ物事に取り組んでくれるような甘い人間だから。

暗闇の向こうから 屠ったはずの幻想が
その身のもとへと今手を伸ばして
―嗚呼、命取り。

屠のCDは「夢を追った結果、うまく行かなかった世界」だといいました。夢のような幻想世界=夢を追うがそれ故に苦しめられる世界をでていくことで勝ったと思った少女一輪。謎のピエロ含め過去の人間を屠った、という幻想をいだいた。だけど、夢のために苦労する甘さがあるため、、、、、、、ああ、命取り。

さあ こっちへおいで みんなでキミを呼んでいたんだ
さあ 手の鳴る方へ 何も怖くなんかないからね
さあ こっちへおいで みんながキミを待っているんだ
さあ 手の鳴る方へ キミだけ仲間はずれになんてしないからねその手を取って愛の告白を それか或いはこのまま誓いを交わそう
捨てた方はたとえ忘れたとしても 捨てられた方は永久に忘れはしないと―わかったろ?

「イノベーション」を担えるような夢を追ってくれる人間がほしい。自分に都合のいい人間がほしい。あれだけ怖ろしいことがあったのに怖くないと口先だけ言う。承認欲求は人間の根源欲求だと筆者は思いますが、謎のピエロはそれに漬け込む。

正直者の名残が 強い妄執に裏打たれて 仲良しの幻想にずっと縋っては―嗚呼、命取り。

『墓標』で「などと馬鹿めが!世迷い言に沈め!」と少女一輪は啖呵を切って去りました。だけど、正直者として新しいものを作ろうと言う意欲の名残はあった。少女一輪はお人好しなので、謎のピエロがヘラヘラ笑いながら近づいてくれば、仲良くやれるんじゃないかと思わせられる。だけど、命取り以外の何物でもない。

さあ もどっておいで
僕らがおまえを忘れるもんか
さあ この手を取って このすばらしい楽園へ
さあ もどっておいで
僕らがおまえを手放すもんか

少女一輪は謎のピエロにとって都合のいい人間。だから、忘れられないし、手放されず、なんとか再び夢を追う世界に引き戻そうとする。

さあ この手を取って どうせ帰る場所はここしかないんだからね

実際少女一輪が飯を食べられるスキルというのは少女一輪がまさに夢を追うためにやってきたことで磨いたスキルでしょう。他の道で食べていくことは簡単にできない。謎のピエロはそれを見透かしてここしか帰る場所がないのだろうねという。

ねえ、僕だけは、キミのこと。 誰よりも大事に思っていたんだよ わかってよ。
今ならきっと、言えるかな。
今度こそ、終わらない、人形戯曲を、始めよう!

少女一輪の承認欲求に訴えかける。だから「大事に思ってる」とかいう。散々な扱いをしてきたのに「今まではいえなかったけど、終わらない戯曲を一緒に始めよう」とうそぶく。

―さぁ、捕まえた。さあ 一緒に行こう
もう一度みんなでやり直そう
さあ 一緒に帰ろう
どこでもずっと一緒だからね
さあ こっちへおいで
何も怖くなんか無いだろう?
さあ 一緒になろう
死んだって終わりになんてならないんだからね

少女一輪は捕まえられて、再び一緒に歩むこととなってしまいました。怖くないとうそぶき、やめることなんて許さないと。

絶対 離れないから
最後に僕らが得をするんだ

ただ、あくまでも「僕ら」である謎のピエロたちが得をするため。少女一輪のことなんざ本心はどうでもいい。

絶対 逃がさないから
こうして最後には大団円へ
絶対 離さないから
この楽園から逃がさないよ
素敵な幻想郷で暮らそうよ
―おかえり、楽園へ

大団円とうそぶくが、あくまでも謎のピエロのため。そうして、少女一輪は再びおだてられ承認欲求を刺激されて戻ることになった。夢を追う幻想郷=『墓標』で蹴散らしたはずの墓場に。だからブックレットでは幻想郷と書いていますが、歌では墓場と歌っている。

考察

弱い人間はたしかに「屠」のように強者に蹂躙されます。そして、なにか夢を追って専念している人間は時間も余裕もないため、なおのこと隙を見てくだらない欲求の餌として利用しようというゴミが現れます。

だから、報われないと思ったら、辞める決断をするのが一つ。それが『墓標』。

そうしたら『葬迎』のようにヘラヘラ笑いながら戻ってこいよといいます。逆に同調圧力を使って脅すこともある。金と時間が見合い、報われると考えられれば戻るのもいいでしょう。無論同調圧力を使って脅すなんてことをするのは切る一択ですが。

そういう腐った人間を切って、新しい人生を歩むのも一つでしょう。

小保方氏は博士号も剥奪されて研究者ではなくなりました。そういえば2014年当時AVに出たら売れる!みたいな話も流れていました。まさに小保方氏の心情そっちのけで、知名度のあるやつのAVなら売れるという連中の都合の話です。時折メディアに取り上げられているようですね。

彼女は再び墓場に戻らなかったようです、彼氏もいるとのこと。幸せに生きてくれることを願います。その様子を表すのが次の曲だと思います。ある意味真のラストの曲。

Next: from the corpse to the journey

一方で、弱者はたしかに強者に蹂躙されます。ですが、逃げることと、選択肢を増やすことはできます。選択肢を増やすためにすべてを捨てなければならないのならそれも一つでしょう。「屠」収録曲ではないですが、一曲続くにふさわしい曲がありますのでそちらについても述べます。

Next: イニシエイション

実際夢を追うとこのようなおぞましい話が多いですが、うまく行けば素晴らしいです。徒のCDのはそのような流れではないかと思います。

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そして、素晴らしさとおぞましさを踏まえた結論がこれです。昨今の情勢を考えると余り前向きな結論ではないですが。

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