青い車
※こないだのロングバージョンです。
前夜、KちゃんからLINEが来た。
それからしばらくお互いの近況報告。
こないだは海に連れて行ってくれた。
青い車で。
お茶も、冷えたわらび餅も用意してくれて。
そう言えば「次は滝行こ!」って言ってたな。
ちょっと迷いつつも
そう返事して、翌日滝に行くことになった。
が、どうやら滝を見るだけではなさそうだ。
お、おう。
楽しみでありつつ、ちょっと戸惑いもあった。自分や家族の体調もろもろ。
そのあとだ。
私の気持ち、状況をとてもわかってくれていた。
前回もそうだったけど、Kちゃんには救われた。すっごく久しぶりに会ったのに(あ、ほんまに遠慮せんでええんや)と思わせてくれた。
実際、送迎から何から全部お世話になった。海見て、わらび餅食べて、笑って帰って来た。
Kちゃん、高校時代はちょっとだけ気を遣っていた。仲はよかったが、Kちゃんはしっかり“自分”がある子で、好き嫌い、白黒がはっきりしていた。
だから、全てを曝け出せなかった。
今思うと、それは私の自信の無さの裏返しだったように思う。
とにかく自信がなかった高校時代。
勉強にも部活にもとことん挫折した。
が、ほんとは一番追い込まれるはずの三年生の時が一番楽しかったという……。
ええ、受験勉強という渦の外にいたような2人だった(笑えない)。
果たして我々は、翌日無事に滝へと出発した。
キンキンに冷えた青い車で迎えに来てくれた。
小一時間ほどかかったが、喋ってたら案外あっという間だった。
緑深い山の中に車を停めて降りると、葉っぱの陰があるものの、もわんと猛烈に暑かった。
めっちゃ暑いやん。大丈夫かなぁ。
『マムシ注意🐍』っていう看板もある。マジか……。
Kちゃんは手際よく車の後ろからいろいろ荷物を下ろし、じゃぶじゃぶと水の中を履いていけるという靴を差し出した。
いざ滝へ。
うわーーーー!
自分でもびっくりするような声が出た。
なにこれ、滝を通る風もめっちゃ涼しい。先ほどまでの暑さが嘘のようだ。
荷物を小分けにしながら岩場を降りていくKちゃん。
「怖っ!無理やって。無理やってKちゃん!」
「いけるいける!ふぐ子の運動神経やったらいけるやろ!」
いつの話だ。
Kちゃんはバドミントン。私はバスケ。強豪校でもないのに、恐らく一番練習がハードだった両者の部活。
校内マラソン大会の上位は、われわれバスケ部とバドミントン部が争った。
その時の印象で言ってるのだろう。
私はあれ以来、運動なんかしていない。
一方Kちゃんは、未だにご主人とマラソン大会に出たりしている。
「怖いって!」
「両手使って!」
ほんとだ。両手も使って這うようにすると降りやすくなった。
気持ちが落ち着いて来て、こんくらいいけるかも、なんて思った。
ズボンを捲って流れる水に浸かる。
想像以上に冷たい。
靴のまま浸かる謎の背徳感。
結局は、岩の上でおにぎりを食べ、
もう少し滝壺から離れた浅瀬に椅子を並べた。水の音ってなんて心地いいんだろう。
小さな男の子が服のまま浅瀬でバシャバシャしてる。
ああ、私も体ごと浸かりたい。
なんとはない話をし、また何も話さず、
椅子に座ったまま、足や手を水に浸けたり上げたりした。
「ソフトクリーム食べたい」
私がそう言って、帰ることになった。
2人とも足の指がふやけていて笑った。
1時間居たか居ないか。
充分なリフレッシュ&サバイバルな時間だった。
車のところに戻って足を拭き、靴を履き替えた。
私が持って来たのはほんとに足拭きタオルだけ。
今回もお世話になりました。
なんだろうな。こんな感じになると思わなかった。
Kちゃんが変わったのか、私も変わったのか。
あの頃とはまた違った接しやすさ。
ありがたいな。
青い車は、Kちゃんの下の息子くんの再就職が決まるまで。
そう、今は車を取り上げられている息子くん。居候の身だからだそうだ。
無事、次の就職決まるといいね。
そしたら今度は、何色の車で出かけるのだろう。
運転はKちゃんなんだけどね。
お世話になります!
今度、Kちゃんになにがしてあげられるかなぁ。
今度は私が。
それから、誘われてるマラソン大会。絶対無理って聞き流してたけど、ちょっとだけ心が動いてる。
3年はかかる。
待ってて。
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