ムーンライトの感想と思うこと

てふです。
最近ニュースで「差別」という単語が飛び交っているので、「差別ってこんなこと」ってのとお勧め映画のネタバレをしながら書いていこうかと思います。

「ムーンライト」という映画を紹介したいと思います。
ざっくりとしたあらすじは幼少期、少年期、成人期と三部構成で、シャロンという黒人のゲイの男の子の人生を描いたお話です。

詳しいあらすじはこちら
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予告では「最も純粋な愛の物語」と紹介されていますが、私はこれを「許しの物語」だと思っています。


・麻薬依存で虐待をし、大人になってからは改心した会いに来いと頻りに電話をよこす母に会いに行く
・幼少期にいじめから助けてくれたお兄さんは母親に薬物を渡している売人だったことがわかり揉める。しかし、その後も関係性は続け、成人後自身も売人になる
・唯一の親友兼初恋の人はいじめっ子グループに促されシャロンをぼこぼこにする。が、大人になった後謝られ、呼び出されたらすぐに会いに行き許す。

正直まとめていて思うのは、シャロンおまえ、すげぇな。の一言なのですが。

なぜシャロンが彼らを許せたかというと、恐らく憎しみきれなかったというのが大きいと思うのです。
虐待をする母親は、それでも時折優しい言葉をかけてくれます。
フアン(薬の売人)はシェルターや父親のような役割をしてくれたのでしょう。
親友のケヴィンは、薬の売人になったことを驚きながらも、会いたいと思ったのは謝罪だけではないことを伝え彼を否定しません。

人が自分にしてくれたことを忘れずに、信じられるというのは簡単なことではありません。
シャロンは「憎む」という感情が苦手で、恐らく暴力も暴言も苦手なのだと思います。
そんな彼がいじめっ子を後ろから椅子で殴りつけた時、相当な覚悟を感じます。
大人しかったり、温厚だったり、体が小さかったり、色んな要因で「弱者」に決めつけられると、攻撃をされることがあります。
これは映画関係なく私の考えですが、
エスカレートしていく暴力を止めるには、人を害してでも「強者」に回らなければいけない時があります。
私は「差別」とは、本来なら人を害さないで生きていきたかった人が仕方なく攻撃性を身につけなくてはいけなくなる行為だと思っています。(かと言って、目には目をという行為を全面的には肯定できませんが)
だから、黒人、ゲイに限らず、性別カテゴリ職種すべてにおいて、「その人個人の努力でどうしようもないこと否定する行為」「自身に関係ないことを否定するその根性」を嫌悪します。

また、数多くの差別やマイノリティを題材にした映画の中からこの映画をお勧めしたいのは、優しい言葉が多いような気がしたからです。

リトルが「おかまってなに?」とフアンに聞いたとき「おかまはゲイを最も不愉快にする言葉だ」と教えていたり、黒人が月の下では「ブルーに見える。だからお前のことをブラックではなくブルーと呼ぶよ」と言われた話をしていたりします。
私は、黒人でもなければゲイでもないので当事者ではないですが、ずっと覚えておきたい言葉でした。

おまけ

この文章を気に入って、ムーンライトを観てくれた方は「ゲット・アウト」も観てほしいです。
日頃どんな目にあっているから「差別されている」と感じているかを、暴力を使わず、丁寧にに教えてくれる良い映画です。
例えば、冒頭で黒人の青年が人のいない夜道を一人で歩いていた時、後ろから車がゆっくりと近づいて来るのに気づき、「気にするな」と歩き続けます。しかし、追い越さないのを確認すると「だめだ、戻ろう」と来た道をUターンします。
いきなり襲われることがあるから、いつも警戒しているというのが開始数分でよくわかります。
「差別」を表現する中で、暴言や暴力はとても分かりやすく、いろんな映画の中で使われています。それ自体を悪いことだとは思いません。ただ、行動のもっと手前の考え方や心情、発言が丁寧に描かれていると少しうれしい気持ちになるのです。
私は「差別」という題材に限らず、人間理解の深い(もしくはよく観察している)人の作品をとても愛しています。

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