あなたへ(第4号)

 

 穂長月。筋雲流れる空は少し高くなったような気がします。
 太陽は遠くなり、柔らかな澄んだ日差しが薄紅の秋桜を揺らします。
 赤蜻蛉の透けた羽が、何とも言いようのない寂しさを運んできます。
 見上げる青い空。あなたが幸せでありますように……願わずにはいられません。
 しっかり召し上がっていますか?食欲の秋ですね。
 中でも秋の味覚、秋刀魚はあなたの大好物。毎年お魚屋さんを覗いては、近年の秋刀魚の高騰を嘆いていました。温暖化による海水温の上昇、潮流の変化による漁場の沖合化……秋刀魚の漁獲量は減少の一途を辿っているそうです。
 異常な暑さを経験し、喉元過ぎれば熱さを忘れる……とよもや笑っていられぬ今年の秋。
 私たちに何ができるのでしょう。地球のために。母なる海のために。一尾の秋刀魚のために。
 そういえば、あなたと秋刀魚をいただいた事はまだありませんでしたね。
 同窓の思い出を肴に、しみじみと盃を酌み交わしたいものです。はらわたの苦さ思いながら。
 松虫が鳴いてますね。月明かりの下、ひとり『夢みたものは』第4号を開きます。

第4号表紙

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?