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大企業、中・小企業、個人事務所すべてを経験した私が考える“企業で働く”ということ




⚫️大企業を2年で辞めた理由


新卒で就職したのは国内トップの保険会社でした。
  東京と大阪に本社が二つあって、支社は全国に120以上もあり、まるで小さな一つの“国家”に見えました。
経済、娯楽、人間関係が会社内部ですべて完結してしまうんです。基本社宅住まいなので、上下関係も敷地内にそのまま持ち込むことがどうしても避けられない。例えば引越しも社員同士がおたがいにすべて手伝います。なるほど入社時に「我が社は運命共同体である」なんて言われてたのが実感できました。
会社もそうした閉塞感を憂慮してか、リクリェーション的な催しも沢山あります。海に近い支社に配属されたときの地引き網イベントが懐かしいです。

さらに、業務上のすべての書類や用語、運営システムとしては完全に社内むけだけのものとして独自に完結しています。当時企業間での人的交流や、企業統合などあまりない時代でなので余計にそう感じてしまいます。
実績を積んで、将来的にキャリアのステップアップを計画していた私にとって、ここで覚える業務上のノウハウ、知識が他の会社や他の業界ではまったく役に立たないと感じました。

もちろん、はなからここで生涯勤め上げ、一生を暮らすことを決意している人にとっては、天国なのかもしれないですけどね。
しかし、いくつかの事情があり、成りゆき上入社することになったこの会社は、私にとって希望と正反対の分野だったんです。
生涯ここにいるとした場合、井の中の蛙になってしまうと直感してしまいました。ビジネスの舞台として世界を股にかけて活躍したいという、元々は商社思考の私には絶望感すら覚えたものでした。


2年で辞めた理由はほかにもいくつかあります。
しかし決してブラックなどとは縁のない、むしろ組合が充実し、厚生面で世間の評価も高いいわゆる優良企業です。
ただ、社員をほぼコマ扱いで、個人の都合は考えてないという気がしました。会社勤めとは本質的にそういうものなのは今となれば理解できますが。
たとえば人事異動においては、わざと希望の対極にある部署へ配属する経験もしました。それなりの大義名分はあるようだけど、若い時にはそれが納得できませんでした。

大企業の【メリット】

もちろん良い面も色々ありました。
今の若い人には不人気らしいけど、飲みにケーションがやたらに充実していました。これは転職先の建設会社でも同様でした。太っ腹の課長が、豊富な交際費でときには銀座のクラブにまで引き連れて行くんです。若い僕には結構たのしい日々でしたけど。
そして福利厚生面では、中小のそれとは圧倒的な差があります。
一つには、メンタルケアの本気度を感じた例です。
学生時代アマチュアボクシングチャンピオンで、心身ともに屈強な同僚がいました。ある時メンタルが壊れて休職となったのですが、丸々2年間満額の給与補償だったのです。

また、中小では得難いのが世界を股にかけての大きなスケールの仕事に携われることと、社会的な要人と出会うチャンスがあることでしょうか。もちろんこれらは業種により随分違ってきますけど、海外と取引のある企業なら普通にある状況ですよね。

大企業の【デメリット】

しかし優秀な人材が揃っている中で出世するための苦労は並大抵ではないようです。
高校から付き合いの続く7人の友人でトップ企業の取締役になったのが3人いますが、2人心臓病でペースメーカーを入れ、もう1人は透析を受けています。

屈強なはずの同僚が鬱で2年求職した話をしましたが、彼はトイレの窓からやはり仲間が飛び降りるのを目撃してしまったそうです。

トヨタの人事部員のブログで見たのは、部内で3年間で10人のうち5人が辞めているというエピソード。
理由が、理想と現実のギャップだそうです。理想があって、こうしたいけど、できないという大企業ならではのジレンマが原因とのこと。本気で会社をよくしようとする人間ほどその壁で悩み失望する、と訴えていました。


財閥系建設会社の財務課へ転職


体感した大企業と中小との違い

そこは三大財閥系会社100%出資の子会社だったので、親会社から出向してくる人間と、プロパー社員との比較がよくわかりました。
親会社は世間では「人の○○」と当時言われていたくらいで、とにかく心のゆとりを感じるんです。つまらないことへのこだりがなく、いわゆる人格者がほとんど。
一方、子会社の人たちはといえば、まず頭脳のレベルに大きく差が見られます。さらには発想力にも差がなぜかあるんです。
一言で言うと総合的な人間力なんでしょうね。
接した人数のなかで100%近くにあてはまる。これは驚くほど歴然と違いがあったことが不思議なほどでした。
人事課スタッフの人選能力と、入社後に揉まれ鍛えられていく環境の問題なんでしょうか。
  

その後の転職先はカメラマンの個人事務所


頭脳の優秀さの違いというより、人格・品格がまったくバラバラで、そこはむしろ企業規模の問題ではなくなってくるようです。

この規模だと、会社を辞める原因のほとんどが人間関係だというのがよくわかります。大企業だと、短期間での転勤がつきものなので、嫌な上司や同僚とはしばらく我慢すればいいと考えられます。しかし小さな企業だとそうはいきません、定年まで一緒という地獄図が想像されます。

サラリーマン生活は都合6年だったが、その間を通して思うことは…


「サラリーマンに向く人」とそうでない人がいます。
向く人とは、
・コミュニケーション能力が高い人
・飽きっぽくない人(辛抱強い人)
・競争をいとわない人
・小さなことにくよくよしない人
・愚痴っぽくない人
ちなみに、私は最後の項目以外自信がない。よって早々に自分の道を歩み始めたわけです。

ここまで主に人間関係中心の感想を述べてきましたが、それとは別に視点を変えてみましょう。
なんと言っても大企業とそれ以外の規模の企業での違いの最たるものはやはり給与であることは否めません。生涯給与で見ると一層際立った差となります。

単なる基本給のみならず、諸手当、福利厚生的な部分、そして年金。それらを生涯給与という視点で換算した場合、一言で言うと、“圧倒的な差“であると言わざるを得ません。

会社選びで考え方の一つとして今思うのは、
会社の規模の大小に関わらず、どんな仕事にも苦労はつきものです。大きい会社だから大変で、小さい会社なら楽なんてことは基本的にありません。
だったら、我慢のし甲斐として“お金“という報酬があるなら、それはそれとして立派な理由かもしれない。
したがって、お金のために会社を選ぶのも間違いとはいえないと思う。

転職を考えている人なら、「鶏頭となるも牛後となるなかれ」とか「仕事のやり甲斐」とか、職業選択のさまざまなアドバイスがあると思います。
しかし先程述べた『お金』の問題というのは、若い頃と家族を抱えた中年以降になってみるとまるで違う認識となるものです。
すなわち、これから才能と努力次第で稼げる自信のある若者と、定年後年金しか収入のあてがない世代とでは、切実度とありがたみがまるで違うということです。ここはよく考えるべきでしょう。

  [まとめとしての、アドバイス]

2年で見切りをつけたのは若気の至り…?
正解だったかどうか、答えは「わからない」。
今振り返ると、会社のことや社会の仕組みも全くわかっていないうちに結論を出すこと自体は完全に間違いだと思う。
なぜなら10年20年勤めてみて初めてわかること、その時点で初めて見える景色というものがある。あーここまで頑張って本当によかったと思えれば一つの成功でしょう。
ただしそこで後悔の念が起きてしまったとしたら、取り返しがつかないともいえます。その10年20年は帰ってこないのです。
そういう意味では、2年で見切りをつけたことは、あながち間違ではないと思っています。

言えることは、その時点で止むにやまれぬ強い感情や直感に従ったという事実に関して、自己を評価するべきなのだと思います。
そうした心の叫びに目をつぶって、その後何年も引きずることの方がはるかに怖いことではないでしょうか。

物事を選択するとき、選ばなかった方を必ず美化してしまうものです。きっとこんないいことが待っていたに違いない、という捉え方です。人間は、ついそういう見方をしてしまう習性があるといいます。
こうなると、現在をネガティヴに捉えているとすれば、100%もう一方の選択肢に叶うわけがないということ。
したがって、過去を振り返っての後悔というものは全く意味がないのです。いや、するべきでないでしょう。

その時点では、自分としてあらゆる条件と全ての状況を分析し、熟考を重ねた結果なのだから、その選択はベストだったととらえるべきなのです。

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