シノエフヒを発見してから少し人生が変わったという話

 シノエフヒにハマっている。
 ポストロックのバンドで、初めて聴いた時からいいな、と思っていた。
 Apple Musicの今すぐ聞くに唐突に現れて、ジャケットに惹かれて聴いてしまった。

 曲を聴いて最初に思ったのは、maeというバンドを思い出したな、ということだ。
 maeはエモ、と呼ばれるジャンルのバンドで、文字通りエモーショナルな曲を発表していたバンドだった。
 高校生の頃、このmaeというバンドを聴いて、とても心癒されていた。殺伐とした現代にここまで綺麗な曲を聴けると思わなくて、毎日のようにその輝きに触れていた。
 けどそれからの人生、まるで死んでるように純粋な曲の良さにハマることがなかった。それも10年間、のっぺりとした感受性で心は流れていくだけだった。
 そしてシノエフヒを聴いて、僕は少し生き返った。
 音楽が好きだ、ということを思い出せた。
 曲はエモーショナルなpeople in the boxと言えばわかりやすいだろうか。本人たちもpeople in the boxに影響を受けていると言う。
 シノエフヒはまだまだ社会的に認知されていなくて悔しいが、とても実力があるバンドだと思う。願い、祈り、痛み、それが幻想的なギターで表現されていて、ボーカルの歌やポエトリーリーディングで残酷な世界と立ち向かうのだという意志を感じ取った。
 こんなバンド10年に一回しか出会うことはないだろう、そう思ってApple Musicで聴ける分は全部聞いた。

 ずっと孤独だった部屋の中に一粒の種が撒かれた気分。そして曲を聴くたびに水をかけ、そして芽が出て僕は不思議そうにその植物という名の希望を見ていた。
 こんな時代に希望を、本当の希望なんか歌えない、だって希望なんてないから、みんな死んだように働いて、SNSで愚痴を言う、ありふれた光景の中、シノエフヒは希望を歌ってくれた。
 そして音楽が好きな自分を取り戻し、日々の生活は少し音楽漬けになった。

 そして僕は擦り切れるほどシノエフヒを聴いていくのだろう。そしてまた、新しいバンドに出会うまで、延命していくのだろう。
 興味があれば聴いてみてください。

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